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令和8年版 厚生労働白書 (106 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/26/dl/zentai.pdf
出典情報 令和8年版 厚生労働白書(9/29)《厚生労働省》
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テクノロジーは目的ではなく「時間を創り出す手段」
:手段のセレクトが重要

大翔会では様々なテクノロジーを導入しているが、その哲学は一貫して明快だ。テクノロ

ジーは手段であり、目指すのは ES(職員満足)と CS(利用者・家族満足)の向上、そしてそ
第
章

2

2040年に向けた、医療・介護・障害福祉の現場における取組み―テクノロジー(ICT、AI、ロボット等)の活用による生産性向上―

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れを支えるマネジメントが大切であるということ。

「DX 導入の本来の目的は、職員の身体的負担を減らし、精神的なゆとりを生み、利用者と

向き合う時間を創出すること。そうして初めて、職員が多角的にケアを考えられる環境が整う
のです」と大翔会理事長の渡邉氏は語る。

それは、機器導入の優先順位を決める際も同じである。大翔会は「補助金が出るから」「流

行っているからとりあえず」導入という発想を排し、「一年後にも使われ続けるか」「課題に対
し効果的であるか」を最重要視する。装着負担や使い勝手が悪ければ定着しにくい。運用コス
トと継続性を厳しく確認し、厳選を重ねて、①~⑤のテクノロジーを導入してきた。

①ノーリフティングケア:最初はトップダウンで制度化、抱え上げゼロへ

大翔会が最初に取り組んだ大改革は福祉器具を用いたノーリフティングケア(抱え上げない

介護)である。

しかし導入初期は、
「抱え上げた方が早い」
「慣れている方が安全」という心理的抵抗が強く、

現場の反発は強かった。

そこで渡邉氏は、「リフト使用を強制」という敢えて強いメッセージを出した。一見強権的

に見えるが、これには理由がある。それは職員の体を守り、利用者の安全を担保するためであ
る。

「抱え上げは危険だと分かっていても、現場は忙しくなると元のやり方に戻ってしまう。だ

から最初は私が前に立って、『もう抱えない、これからはリフトでやる』と決めました。嫌が
られても、誤解されても、最初に組織の方向を示すのが経営の役目。職員に、やらない理由は
いくらでもある。でも、私は経営者が先頭に立って、できる条件を作る側に立つべきだと思っ
ています」

実際、導入当初は多くの人が離職し、経営も大変な時期だった。しかし、取り組み続けた結

果、3 年後にはようやくノーリフティングケアが現場に定着し、今は誰一人、抱え上げ介護を
する職員はいない。

他施設から転職して 3 年目の職員さん(30 代)は「前の職場では抱え上げ介護が主流で、

中高年の職員さんは腰を痛めて辞めていかれた。ここでは、そのような心配はない。利用者さ
んにとっても福祉機器を使った方が負担は少ないことも知った。もう、抱え上げ介護には戻れ
ない」

今では大翔会を離職する職員は、ほぼいない。賃金は標準的水準であるが、むしろ、入職希

望の問い合わせが多く、お断りするに至っている。

短期的成果を焦らず、経営者が腹を括ることで初めて動く改革である。

②見守りセンサー等:夜間巡視ゼロへ

次に大翔会が取り組んだのが、夜間の業務改善だ。

多くの施設では、見守りセンサー等を導入しても巡視回数が減らないという課題があるが、

大翔会は徹底して運用設計から見直した。

夜間はアラートが鳴った時のみ対応(常時巡視をしない)、映像閲覧はアラート時に限定、

家族同意書の整備でプライバシー配慮を徹底。これらの仕組みでご家族や職員の信頼を確保
し、結果として、夜勤職員が一番大変だった夜間巡視をゼロにすることに成功し、精神的・肉
体的負担を大幅に削減した。

さらに、利用者にとっても睡眠を妨げない静かな夜が実現し、職員は新たに確保できた夜勤

時間を記録整理や分析、新たな価値を考える時間に充てることができるようになった。

令和 8 年版

厚生労働白書