【参考資料2】令和6年度事業報告書(健康保険事業) (97 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63465.html |
出典情報 | 全国健康保険協会業績評価に関する検討会(第45回 9/25)《厚生労働省》 |
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第4期 ①
『協会けんぽ加入者の高額医療費集団に特徴的な疾患群に対する効率的医療費適正
研究代表者
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
化を目指した多元統括的研究』
伊藤 裕
成果の概要
協会けんぽ加入者の医療費適正化を効率的に進めるためには、各年代・性別におい
(1年目の
て特徴的な疾患群に加えて、業態や地域などの多元的な視点から高額医療費となる
中間報告)
要因を統括的に捉えていく必要がある。
本研究では、効率的な医療費適正化に資するエビデンスを得るために、協会けんぽ
加入者に特徴的な疾患群の検証や、高額医療費集団に特徴的な疾患群(メタボリック
シンドローム、腎臓病、女性特有の疾患、メンタル疾患、フレイル)に着目した解析
を進めている。各テーマにおける成果の概要は下記の通りである。
1.協会けんぽ加入者に特徴的な疾患群の検証
疾病構造を視覚的に把握可能な共起ネットワーク分析という手法を用いて、各年
代・性別・BMI別に特徴的な疾患群を横断的に検証した。
男性18-29歳の集団では歯科疾患、アレルギー疾患、メンタル疾患、皮膚疾患が特
徴的であり、40代で高血圧症、脂質異常症、糖尿病などのメタボリックシンドローム
に関わる3疾病が出現した。また50代ではメタボリックシンドロームと逆流性食道炎
のような消化管疾患のつながりが認められ、60代以降では代謝・循環器疾患、消化管
疾患、運動器疾患の密接な関係性が認められた。女性の若年層では男性でも認められ
た疾患群に加え、女性特有の疾患(月経障害、子宮内膜症、卵巣機能障害等)が特徴
的であった。女性でメタボリックシンドロームに関わる3疾病が出現するのは50代以
降であり、60代以降になると男性同様に代謝・循環器疾患、消化管疾患、運動器疾患
の密接な関係性が認められた。 BMI別に確認すると、肥満度が高いほど代謝・循環器
疾患が多くなり、それらの疾患と逆流性食道炎がつながる傾向にあった。一方で、女
性ではBMIが25kg/m2未満の集団では歯周疾患を中心とした疾病構造が確認された。ま
た、特定保健指導の目標達成につながる要因に関する検討も並行して行っている。
2.各種疾患群の地域差分析に関する進捗状況
地理情報システム(GIS)を用いて、各種疾患群の地理的分布(被保険者の住所地)を
二次医療圏ごとに検証している。高血圧症、脂質異常症、糖尿病該当者数はいずれも
北海道や東北地域で多く、糖尿病該当者については九州地域でも多い傾向を示した。
2型糖尿病性腎症に着目し、腎アウトカム(2年間でeGFRが30%以上低下)の新規発生率
と専門医の地理的分布の関係性を検討中であり、糖尿病専門医や腎臓病専門医の多
い地域では、腎アウトカムの新規発生率が少ない傾向が示されている。女性の健康課
題として注目されている更年期障害とPMS (月経前症候群)については、人口10万人
あたりの患者数は最も多い地域と少ない地域で4,000人ほど(約4倍)の差があり、診
療の地域差が認められた。
初年度は共起ネットワーク分析を用いることで、協会けんぽ加入者における疾患
群の特徴を各年代・性別に詳細に把握することが出来た。またGISを用い、生活習慣
病該当者の地理的分布や、女性特有の疾患における診療の地域差を評価することが
出来た。今後は縦断解析を行い、業態や地域などの要因が各種疾患の重症化にもたら
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