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【参考資料2】令和6年度事業報告書(健康保険事業) (95 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63465.html
出典情報 全国健康保険協会業績評価に関する検討会(第45回 9/25)《厚生労働省》
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Observational Study on Pharmacy-Hospital-Patient Relationships and Generic
Drug Utilization in Japan"として、2025年5月21日に査読付き国際学術誌であるBMJ
Openに掲載された。
2.3 僻地度と糖尿病患者の心血管症に関する研究
本研究では僻地度と糖尿病患者の心血管症(CardioVascular Disease: CVD)の関連
性を検討した。CVD は世界的な主要死亡原因であり、糖尿病はその発症リスクを高め
る重要因子とされる。糖尿病患者では、高血糖状態が血管内皮機能障害や慢性炎症を
促進し、動脈硬化や心筋梗塞のリスクを増大させる。そのため、適切な血糖コントロ
ールや定期的な医療機関受診が不可欠である。しかし、医療機関へのアクセスが制限
された地域では、糖尿病管理が困難になり、CVD発症リスクが高まる可能性がある。
既存研究では、糖尿病患者のCVDリスクや社会経済的要因との関連、都市部と地方に
おける糖尿病管理の差異が報告されているが僻地度が糖尿病患者のCVD発症リスク
に与える影響を定量的に評価した研究は限られている。特に僻地度とCVD発症リスク
の関連について長期的データを用いて検証した研究は乏しい。本研究では、この知識
のギャ ップ を埋 めるこ と を目的 とす る。 本研究 で は、日 本の 僻地 度指標 で ある
Rurality lndex for Japan (RIJ)を用い、糖尿病患者のCVD発症リスクとの関連を分
析する。RIJは、人口密度、医療機関までの距雛、離島の有無、豪雪地域の影響を考
慮し、医療アクセスの制限を包括的に評価できる指標である。また、日本は国民皆保
険制度を採用しており、医療保険の有無によるバイアスを抑えつつ、地理的要因の影
響を評価できる。本研究は僻地におけるCVD予防と糖尿病管理の課題の明確化、医療
資源の効率的な配分、健康格差の是正に貢献し、公衆衛生政策の改善に寄与すること
を目指す。本研究の解析結果において、僻地度が高いほど糖尿病患者のCVDリスクが
低いことが示された。この結果は研究仮説と相反しているが、その原因として以下の
ものが挙げられる。第一に、僻地度の低い地域には高度な医療施設が集中しているた
め、重症化した患者が治療を求めて転居している可能性がある。これにより、僻地度
の低い地域における糖尿病患者のCVD発症率が高くなると考えられる。第二に、僻地
において専門的な治療への障壁はあるものの、プライマリケアへのアクセスが都市
部より容易であることから、CVDの発見・早期治療が都市部より優れていることが挙
げられる。上記を踏まえて、比例ハザード性の仮定の妥当性検証以降の統計解析手順
を検討中である。
2.4 居住地域の近隣剥奪、僻地度と腎機能低下の関連
慢性腎臓病(CKD)の罹患や進展に社会経済格差(所得や教育歴に関連する)が存在
することがいくつかの国で示されてきたが、国民皆保険制度を持たない米国での研
究が多くを占め、国民皆保険の敷かれた国、特に日本におけるエビデンスはほとんど
存在しない。さらに地域の社会経済状況と腎機能低下の関連性は十分に分かってお
らず、今回検討した。全国健康保険協会に加入する被保険者のうち、2015年度に生活
習慣病予防健診を受診し、同年と追跡期間中に腎機能測定を計2回以上行った者を対
象 と し た 。 居 住 地 の 郵 便 番 号 5 桁 に 基 づ く ① 地 域 剥 奪 指 標 :Area Deprivation
lndex(ADI)(Nakaya T,Ito Y. The Atlas of Health lnequalities in Japan.
Springer2019, 地 域 の 貧 困 世 帯 割 合 を 推 定 す る ) と ② 医 療 に お け る 僻 地 度 指
標:Rurality lndex for Japan (RIJ)(Kaneko M, et al. BMJ Open.2023;13(6):

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