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【参考資料2】令和6年度事業報告書(健康保険事業) (96 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63465.html
出典情報 全国健康保険協会業績評価に関する検討会(第45回 9/25)《厚生労働省》
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e068800.,医療機関への近さ/遠さを表す)と、(i)急速なCKD進行、(ii)腎代替療法開
始との関連を検討した。統計解析は(i)ロジスティック回帰分析、(ii)COX比例ハザー
ドモデルを用い、共変量には年齢、性別、喫煙習慣、併存疾患、健康診断データ、個
人所得を使用した。その結果、性・年齢調整のもと貧困な地域でわずかに腎代替療法
開始のリスク上昇を認めたが、その他は地域の貧困度や僻地度による腎機能低下リ
スクの違いははっきりしないか、どちらかというと田舎よりも都市部でリスクの高
い傾向がみられた。委託研究第1期に行った個人所得と腎機能低下の関連では、最も
所得の低い群は最も所得の高い群に対して急速なCKD進行のリスクが1.71倍、腎代替
療法開始のリスクが1.65倍と所得水準によるリスクの大きな違いがみられたが、今
回の分析では居住地域の社会経済状況と腎機能低下の関連ははっきりしなかった。
スウェーデンにおいて居住地域の近隣剥奪は腎代替療法の発生と関連し、カナダに
おいて僻地度はCKD進行と関連することが報告されていたが、本研究では明らかな差
を認めなかった。国民皆保険や生活習慣予防健診などの医療制度のもと、一定の公平
性が保たれている可能性は示唆されたが、一方で健康診断の未受診者や僻地の肉体
労働者など今回対象に含まれていない労働者における状況は不明であり、今後可能
な範囲で分析を追加する予定である。CKDの発症・進行予防には居住地域よりも個人
の社会経済状況の方が重要と考えられ、今後は生活習慣や生活習慣病の発生、受療行
動など個人の社会経済状況と腎機能低下をつなぐメカニズムについても分析を進め
る方針である。

研究課題名
第3期 ④

『保健事業による健康アウトカムを改善するための行動インサイト:因果探索の応

研究代表者

京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 特定教授

用』
福間 真悟

成果の概要

本研究は、全国健康保険協会データベースを活用し、医療者や被保険者の行動に関

(2年目の

わる課題を科学的に明らかにし、保健事業の質と実効性を高めるエビデンス「行動イ

中間報告)

ンサイト」の創出を目的としたものである。2023-2024年度は、行動課題と改善アプ
ローチに関する知見を得てきた。最初に、特定健診・特定保健指導における行動変容
介入の対象者選択を考察するため、保険者データベースによる心血管リスク推定の
改善に取り組んだ。レセプトや健診データといった大規模かつ非構造化データを活
用し、最新の自然言語処理技術(Transformer、Cross Attention)を応用することで、
心血管イベント予測の精度を向上させる新たな分析モデルを構築した。この成果は、
保険者が保有するデータを最大限に活用するための技術的基盤となりうる。また、因
果探索手法を用いて、行動変容介入後の因果メカニズムについて検討した。統計的因
果探索は、因果メカニズムが未知の部分に対して因果推論を探索的に展開する。デー
タ・ドリブンに因果グラフを構築し、事前情報をうまく組み合わせて因果メカニズム
を解釈する。時系列の健診データをべースにして、因果探索による因果グラフを作成
し、生活指導介入がその後の各心血管りスク因子に与える影響を可視化した。さら
に、就労世代における健康課題・行動課題が、医療利用、就業継続、将来の疾患リス
クに与える影響を定量的に評価した。これにより、対象者抽出や介入の重点化に役立
つ具体的な示唆が得られた。本研究の成果は、保健事業の企画・実施に直結する実践
的知見であり、科学的根拠に基づく行動変容介入の設計に資するものである。

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