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【参考資料2】令和6年度事業報告書(健康保険事業) (93 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63465.html
出典情報 全国健康保険協会業績評価に関する検討会(第45回 9/25)《厚生労働省》
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研究課題名
第3期 ③

『患者・供給者の行動変容と保険者機能強化による医療サービスの効率化』

研究代表者

上智大学 経済学部 経済学科 教授

成果の概要

1.研究の全体像

中村 さやか

(2年目の

本研究は、医療における非効率性の解消に向けて、問題を需要側、すなわち患者の

中間報告)

行動と、供給側、すなわち医療供給者の行動の両面から分析し、保険者機能強化に向
けた提案や政策提言を行うものである。このテーマについて、患者の行動によって生
じる非効率性の解消に向けた分析(研究項目1)と医療利用の要因分解(研究項目2)の
2つの項目の分析を行った。今年度は研究項目2を中心に、転居者を利用した一人あた
り年間総医療費の地域差の分析について研究を進めた。多くの国で医療利用におけ
る顕著な地域差が観察されており、その要因を理解することは政策上重要な意味を
持つため、海外では先行研究が蓄積されてきた。本研究では、2015年度から2023年度
にかけての協会けんぽのレセプトデータを用いて日本の医療費の地域差の要因を分
析した。日本のデータを使うことで、国ごとに制度的枠組が異なるなか、国により地
域固有要因の割合にどのような差異があるかについて貴重な洞察が得られる。分析
結果はまだ確定していないが、暫定的な結果では、性・年齢調整済み総医療費の地域
差は主に需要側要因の地域差によって説明される。医療費を費目別に分析したとこ
ろ、入院医療費および外来医療費についても同様の結果が得られた。しかし歯科医療
費については、都道府県間の地域差や二次医療圏間の地域差の約半分が地域固有の
要因によって説明され、二次医療圏レベル、もしくはさらに小さい地理的範囲での大
きな地域固定効果が存在することが示唆される。また調剤費については、都道府県間
の地域差の半分近くが地域固有の要因によって説明される一方で、二次医療圏単位
の分析では地域固有の要因によって説明される割合は小さく、都道府県単位で決定
される供給側の要因の重要性がうかがわれる。また、研究項目2の一環として、調剤
薬局による後発品選択についての研究成果が、2025年5月21日に査読付き国際学術誌
BMJ Openに掲載された。研究項目1については、所得による健康格差が生じるメカニ
ズムの解明を進めるため、生活習慣病の中でも特に悪化すると高額な治療を要する
糖尿病および慢性腎臓病の進行と居住地特性の関連を分析した。医療機関へのアク
セスが制限された地域では糖尿病管理が困難になり、心血管症発症リスクが高まる
という仮説を検証するため、医療機関への近さ/遠さを表す僻地度と糖尿病患者の心
血管症の関連を分析したところ、仮説とは逆に、僻地度が高く医療アクセスが悪い地
域ほど糖尿病患者の心血管症発症リスクが低いという結果を得た。また、僻地度およ
び地域の貧困度を表す地域剥奪指標と、急速な慢性腎臓病進行や腎代替療法開始と
の関連を検討したところ、僻地や剥奪度の高い地域ほど腎機能低下のリスクが高い
と結論付けた海外の先行研究とは異なり、これらの地域指標と腎機能低下の関連は
はっきりしなかった。
2.テーマ別の実施状況
2.1 転居者を利用した一人あたり年間総医療費の地域差の分析
今年度は直近の先行研究を調査し、試行錯誤を重ねながら分析手法を選択し、また
費目別の分析も行い、研究の根幹をなす分析を完成形に近づけた。分析結果を国際学
会報告に応募し、来年度に開催される 14th Annual Conference of the American
Society of Health Economists および 2025 lnternational Health Economics

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