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【参考資料2】令和6年度事業報告書(健康保険事業) (89 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63465.html
出典情報 全国健康保険協会業績評価に関する検討会(第45回 9/25)《厚生労働省》
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来の研究課題としては、より多くの属性の中から最も異質性の高い要因をシステマ
チックにサーチする機械学習等のアプローチを用いた分析が必要と考えられる。

研究課題名
第2期 ⑤

『メンタル疾患・生活習慣病の発症リスク削減、医療費適正化に向けた機械学習予測

研究代表者

京都大学

モデルの構築と因果推論』
白眉センター

特定准教授

井上

浩輔

成果の概要

本委託研究では、生活習慣病とメンタル疾患の関わりを紐解くため、社会・環境因

(最終報告)

子、既往歴、薬剤、政策の観点から、以下の14の研究を実施した。計5本の論文を、
JAMA International Medicine,JAMA Neurology,JAMA Network Open,Cardiovascular
Diabetology,Journal of Epidemiology and Community Health といった国際誌に掲
載し、国内外で広く取り上げていただくことができた。その他8本が現在国際誌で査
読中である。
まず社会・環境因子として私たちが着目したテーマは、配偶者の生活習慣病が本人
のメンタルヘルスに与える影響である。心血管疾患(CVD)とうつ病の関連は広く知ら
れていたが、その関連が家族に派生するかについては分かっていなかった。私たちが
行った研究により、配偶者のCVD発症がパートナーのうつ病のリスク上昇をもたらす
ことが世界で初めて明らかとなった(プロジェクト①-1)。さらに因果フォレストと
いう最先端の機械学習アルゴリズムを適用することで、配偶者がCVD発症したのちに
メンタルヘルスの影響を受けやすい(脆弱性の高い)集団は、女性で基礎疾患が少な
いものの不健康な習慣を有しているという特徴が明らかとなった(プロジェクト①2)。さらに集団全体では配偶者のCVD発症による医療費の上昇は認めなかったもの
の、最も脆弱性の高い集団では医療費の上昇を認めた。本テーマを拡張させる形で、
配偶者のCVD発症後のパートナーの認知症リスク(プロジェクト①-3)、配偶者の糖尿
病発症後のパートナーの認知症リスク(プロジェクト①-4)、子供の先天性心疾患罹
患後の親のうつ病発症リスク(プロジェクト①-5)についても検討を行った。
次に既往歴の観点から、糖尿病診断によって生じるスティグマの影響を考慮すべ
く、糖尿病診断後の自殺リスク上昇の程度を定量化した(プロジェクト②-1)。本テー
マについても、地域の社会経済状況による異質性評価(プロジェクト②-2)、個人・社
会レベルでの社会経済状況と自殺の関連(プロジェクト②-3)についての検討へと拡
張した。透析とメンタルヘルスの関連も検討しており、透析導入患者において、うつ
病診断や睡眠・抗不安薬の処方は透析導入直後に顕著なリスク上昇を認めた(プロジ
ェクト②-4)。
薬剤の観点としては、糖尿病治療薬として代表的な薬剤の一つであるSGLT2阻害薬
が有する心血管疾患予防効果についてTarget Trial Emulationという因果推論のフ
レームワークを用いて検討し、肥満の程度によって効果が異なることを世界で初め
て明らかにした(プロジェクト③-1)。さらに、機械学習アルゴリズムを応用すること
で効果の異質性を深堀し、CVDリスクスコアが低い集団においても一定数の患者が
SGLT2阻害薬の恩恵を受けることが明らかとなった(プロジェクト③-2)。また、CVDリ
スクスコアについては近年世界的に見直しが行われており、2024年に米国心臓協会
から発表されたPREVENTという最新のリスクスコアの日本人集団における妥当性に
ついて検討したところ、心不全入院では過大評価されることが明らかとなり、今後の
日本人におけるリスクスコアの適応への重要な示唆を得ることができた(プロジェ
クト③-3)。

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