資料1‐1 令和6年度 業務実績評価書(案) (28 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59553.html |
出典情報 | 厚生労働省国立研究開発法人等審議会 高度専門医療研究評価部会(第40回 8/7)《厚生労働省》 |
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中 長 期 目 標
国立成育医療研究センター
中 長 期 計 画
年度評価
令和6年度計画
項目別評価調書
主な評価軸(評価の視点)、指
標等
一体となって活動していくことを目指
す。
平成 26 年度のタンデムマス法の導入によ
って対象疾患が拡大した新生児マススク
リーニング検査の我が国唯一の精度管理
機関として、また、発見された症例の情
報を集約して社会へ還元する中核拠点と
して、関連学会と協力し、我が国の新生
児マススクリーニング検査精度の改善に
引き続き努める。最近の治療法の劇的な
改善に伴い、スクリーニング対象とすべ
き候補疾患が増加しており、新規対象疾
患選定のための基準を策定した。令和5
年度からは、こども家庭科学研究班の代
表として、これを各候補疾患に適用して
評価するためのエビデンスの収集及び、
新規スクリーニングを社会実装するため
の体制構築を進めている。中でも重症複
合免疫不全症および脊髄性筋萎縮症につ
いては、令和 6 年度に「新生児マススク
リーニング検査に関する実証事業」が行
われることとなった。これによって得ら
れた知見も加えることで、両疾患の公的
マススクリーニングの早期実現に尽力す
る。
厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委
員会及び社会保障審議会小児慢性特定疾
病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会
にて検討中の「小児慢性特定疾病その他
の疾病にかかっていることにより長期に
わたり療養を必要とする児童等の健全な
育成に係る施策の推進を図るための基本
的な方針」改正案等に基づく、小児慢性
特定疾病児童等登録データに係るデータ
ベース事業を担当し、登録データの集計
解析を行い、全国の小児慢性特定疾病児
童等とその家族の生活実態調査等を実施
することにより、エビデンスに基づく小
児難病や重症慢性疾患の長期予後や QOL
の改善のための政策提言を行う。
また、小児期発症の慢性疾患患者の自立
を支援する自立支援事業、移行支援事業
等の推進に寄与し、情報発信・研修会等
の開催等を積極的に行う。
さらに、わが国における合併症罹患率や
トランジションなどの実態がなお不明で
適切な対応が不十分と考えられる小児が
ん経験者を対象として、晩期合併症等に
関する情報を収集及び発信する新たな長
期フォローアップ体制の構築を検討す
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1-1
法人の業務実績等・自己評価
主な業務実績等
自己評価
体的な新規対象候補疾患は、先天代謝異常症(ライ
ソゾーム病各疾患)・代謝性神経疾患(副腎白質ジス
トロフィー)・神経筋疾患(脊髄性筋萎縮症:SMA)・
原発性免疫不全症(重症複合免疫不全症:SCID・B 細
胞欠損症)・先天性感染症(先天性サイトメガロウイ
ルス感染症:cCMV)・胆汁鬱滞性疾患(胆道閉鎖症・
胆汁酸代謝異常症)という多様な領域に広がってお
り、解決すべき課題は疾患ごとに大きく異なってい
る。
これらのうち SMA・SCID については、社会的要請
の高まりから、国と自治体の費用負担でスクリーニ
ングを行う「実証事業」の予算が当研究班発足後の
令和 5 年 12 月に計上された。公的事業化への道筋が
明示されたことを受けて、そのために必要となる調
査研究・体制構築などの課題については、それぞれ
日本小児神経学会・厚生労働科学研究費補助金神経
変性疾患研究班と日本免疫不全・自己炎症学会が主
導的に取り組む意向を示したことから、こども家庭
科学研究班との共同研究として成果を共有する方針
となった。両疾患とも現在までに、全ての都道府県
でスクリーニング検査・精査・診療の提供体制が確
保され、初の外部精度管理試験用濾紙血検体を実施
して良好な成績が確認されるなど、実証事業後の公
的事業化を見据えた準備が着実に進んでいる。
上記 2 疾患がモデルケースとなって、その他の新
規候補疾患についても、「実証事業から公的事業化
へ」という流れに乗るべく、各領域の専門学会ない
し公的研究班が、スクリーニング検査のエビデンス
収集と課題の克服、精査・診療体制構築などの取り
組みを主導する意向を示し、これらもこども家庭科
学研究班と共同して進めることとなった。課題は疾
患ごとに様々だが、それぞれの状況に応じた進捗が
得られている。
新生児マススクリーニングの社会実装に向けての
疾患領域横断的な課題である、精度管理・遺伝カウ
ンセリング・医療経済評価については、当研究班が
主導的に取り組みを進めている。具体的には、
SMA・SCID の外部精度管理試験用血液濾紙検体作製
の検討を経て第 1 回試験を実施し、各自治体検査機
関から良好な成績を確認した。遺伝カウンセリング
体制については、予備調査として各自治体ウェブサ
イトの掲載情報を収集検討し、その結果を踏まえて
各自治体の主な精査医療機関を対象とするアンケー
ト調査計画の倫理審査を申請中である。医療経済評
価については、先天性サイトメガロウイルス感染症
スクリーニングに関する体系的レビュー結果を論文
報告したのをはじめ、脊髄性筋萎縮症・重症複合免
疫不全症・ポンペ病スクリーニングの費用対効果の
分析モデル構築を進めている。
は全都道府県での精査・診療体
制の確保に寄与した。
・ 日本先天代謝異常学会で担当
理事を務めるマススクリーニン
グ・特殊検査適性委員会では昨
年度、ライソゾーム病・副腎白
質ジストロフィーの新生児マス
スクリーニングに関するワーキ
ンググループを設置し、先行地
域での現状調査を実施した。今
年度はその結果を基に、こども
家庭科学研究班と厚生労働科学
研究「ライソゾーム病、ペルオ
キシソーム病(副腎白質ジスト
ロフィーを含む)における早期
診断・早期治療を可能とする診
療提供体制の確立に関する研
究」班(代表:奥山虎之)の共
同研究として、これらの新規マ
ススクリーニングを公的事業化
する上での課題の整理と、一部
の疾患については解決策を提言
した。
・但馬マススクリーニング研究
室長が副理事長を務める日本マ
ススクリーニング学会では、重
症複合免疫不全症と脊髄性筋萎
縮症のスクリーニングに用いら
れる定量 PCR 検査の外部精度管理
試験用血液濾紙検体の仕様を決
定し、第 1 回試験を実施して、良
好な結果を得た。
・ 重症複合免疫不全症・脊髄性
筋萎縮症マススクリーニングの
実証事業については、こども家
庭科学研究班代表として、こど
も家庭庁母子保健課による事業
の遂行に協力した。
・ 全国各自治体のマススクリー
ニング中核医師・検査技術者・
母子保健所管部門・患者会代表
者等を集めた「第 8 回新生児スク
リーニング全国ネットワーク会
議」を主催し、特に新規疾患ス
クリーニングに関する情報共有
促進を図った。
これらの取組を通じて、わが
国の小児保健・予防医学の向上
に貢献できたと考える。