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令和5年版厚生労働白書 全体版 (62 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/22/index.html
出典情報 令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会(8/1)《厚生労働省》
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(障害保健福祉分野は、地域と不即不離の関係にある)
障害者福祉についていえば、高齢者などに比べて障害者の絶対数が少なく、障害が極めて多
岐にわたるため、必ずしも入所施設の整備が十分とはいえなかったものの、比較的早い段階か



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ら、障害のある人もない人も地域において普通の生活を送ることができるようにすべきである
という「ノーマライゼーション」の考え方が広まりをみせていた。2005(平成17)年に成立し
た障害者自立支援法では、サービス体系を「日中活動」と「居住支援」に分離し、24時間を

福祉制度の概要と複雑化する課題

通じた施設での生活から、地域と交わる暮らしへの移行推進を強く意識した制度体系となった。
このような障害者福祉分野の経験は、地域で包括的・包摂的に人を支援し、支援される
地域共生社会の構築に当たって参照され続けると思われる。
(発達障害の早期発見・対応などが求められる)
発達障害は、自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多
動性障害など、脳機能の発達に関係する障害である*8。これらの障害は、既存の障害者福祉
制度の谷間に置かれ、その気付きや対応が遅れがちになっていたことなどから、2004(平成
16)年に発達障害者支援法(平成16 年法律第167 号)が制定され、翌 2005(平成17)年
4 月から施行された。同法は、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及
び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発
達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定などについて定めている。
厚生労働省「平成 28 年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態
調査)」によると、医師から発達障害と診断された方は 48 万 1 千人と推計されている*9。
発達障害の方は、他人との関係づくりやコミュニケーションが苦手なケースがある。そ
のようなケースでは、幼稚園や保育園、小学校などの集団生活に入ると、様々な困難に直
面することがある。早期に発達障害に気付き、適切な療育*10 につながりサポートを受ける
ことで、集団生活のストレスが軽減され社会に適応する力を身につけながら、自分らしく
成長することが出来る。このため、国では、発達障害の知見を有する「巡回支援専門員」
が保育所や放課後児童クラブなどを巡回したり、個別訪問などを行ったりする費用の財政
支援を行い、発達障害の早期発見・早期対応などの支援を行っている。また、発達障害者
*11
に対する地域支援体制としては、全 67 都道府県・指定都市に「発達障害者支援センター」

を設置しているほか、発達障害児者とその家族同士の支援を推進するため、同じ悩みを持
つ本人同士や家族に対するピアサポートなどの取組みに対して支援を行っている。

*8

トゥレット症候群(多種類の運動チックと 1 つ以上の音声チックが 1 年以上にわたり続く重症なチック障害)や吃音症なども発達障害に
含まれる。
* 9 男性の割合が 68.8%、女性の割合が 29.9%。発達障害と診断された方の 76.5%が障害者手帳を保持しており、種類別でみると、療育
手帳所持者の割合が 55.3%と最も高い。
* 10 医療、教育、福祉などの支援を通じて、障害があっても社会に適応し自立できるように育成すること。
* 11 発達障害者支援センターは、保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関と連携し、地域における総合的な支援ネットワークを
構築しながら、発達障害児者とその家族からのさまざまな相談に応じ、指導と助言を行っている。「厚生労働省令和 3 年度障害者総合福
祉推進事業」における「発達障害者支援センターの地域支援機能、運営状況等に関する実態調査」によると、90%以上の発達障害者支
援センターで、不登校・ひきこもりの事例、他の障害・疾病を抱えている事例、家庭内暴力のある事例、複合的な問題(貧困、家族によ
る DV 等)が関わる事例について対処経験があるとされており、多様な事例を扱っているとされている。

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令和 5 年版

厚生労働白書