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予算執行調査資料(総括調査票) (63 ページ)

公開元URL https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/budget_execution_audit/fy2025/sy0706/0706b.html
出典情報 令和7年度 予算執行調査資料(総括調査票)(6/27)《財務省》
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(18)漁業構造改⾰総合対策事業

総括調査票

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③調査結果及びその分析
○⼀⽅で、各取組内容別に⾒ると⼀定の成功を収めていると⾒られる⼿法もあり、遠洋漁業の国際競争⼒強化、海洋環境の変化や⼈⼿不⾜等の厳しい環境下での⽔
産業の実証事業の在り⽅に⽰唆を含むものであり、以下、収益性改善に成功したと⾒られる事業を中⼼に分析を⾏う。
(1)遠洋漁業における船の「⼤型化」等
○漁船の「⼤型化」は、⼀度の航海での稼働⽇数の増加、設備増強等による漁獲量増加によって収益性を向上させており、特に⻑期間の航海を⾏う遠洋漁業におい
ては、ヘリコプターや⿂艙スペースの活⽤等による操業効率の改善、安全性や労働居住環境の改善によって、沖合漁業と⽐較しても収益性に与えるプラスの影響は
⼤きい【図2】。他⽅で、遠洋漁業における「⼤型化」以外の省エネ化等の⼿法については、コスト増により収益性が減少しているものが多いほか、増加している
場合でも増加率は低く、AI漁場予測設備の導⼊のように最新鋭の設備⾃体を上⼿く活⽤できなかった事例も確認されている【図3】。
【図2】船の⼤型化の⼿法(n=38)
償却前利益の平均増減額

【図3】船の⼤型化以外の⼿法(省エネ・省⼒化等)(n=29)
償却前利益の平均増減額
【遠洋かつお⼀本釣り漁業において、既存船への措置が成果を上げられなかった事例】
(平均償却前利益︓▲0.01億円(実証前より▲0.4億円)
〇既存船(船齢23年)において、船底への最新超低燃費防汚塗料採⽤、燃油消費モニターの導⼊による減速
航⾏、⾼速ブロードバンド衛星通信の導⼊による漁場探索の効率化等を実施。
○漁獲量は減少したが、価格上昇で⽔揚げ⾼は横ばい。他⽅で、⼈件費・燃油費・修繕費が上昇し、コスト増。

【海外まき網漁業において、船の「⼤型化」の成果が顕著に出た事例】
(平均償却前利益︓6.4億円(実証前より+4.5億円)
〇ヘリコプターも搭載可能な最新鋭の760トン型の漁船を導⼊。
〇⼤型化を⾏うことで、操業効率、安全性や労働・居住環境も改善している。
・ヘリコプター導⼊により⿂群探索能⼒が向上し、漁獲量の上昇(⼩型まぐろ類の混獲削減)
・⿂⾒スペースが閉鎖式になる等、労働環境が改善されたことによる探索作業の効率化。
・船の揺れが少なくなり乾舷(⽔⾯から上甲板までの距離)が確保され船体の安全性が向上。

【遠洋マグロはえ縄漁業において、省エネ化が成果を上げられなかった事例】
(平均償却前利益▲0.2億円(実証前より▲0.3億円)
○燃油削減のため、低燃費型防汚塗料の塗布、⿂艙防熱構造の増厚化等を⾏った省エネ型の新船を導⼊。
○漁獲量、⽔揚げ⾼は実証前と変化はなく、漁場探査のため計画よりも燃油使⽤量が増加するなど、コスト増。

(2)不漁⿂種にかかる船の「⼩型化」
○上記のとおり、遠洋漁業では「⼤型化」の恩恵が⼤きく成功している事例もあるが、平成22年頃より⼀貫して漁獲量及び資源量が減少していた不漁⿂種(スル
メイカ、サンマ、サケ)を取扱う沿岸・沖合漁業については、特に漁獲量の減少が顕著となっていた平成26年以降に採択した10件(イカ釣り5件、サンマ棒受
け網3件、サケを対象とする定置網2件)のうち、8件は償却前利益を減少させ、厳しい状況となっていた。 取組んだ「⼤型化」や「省エネ化」等は、漁獲⾼の
減少を補うほどの効果を出せていない。
サケ類の漁獲量

サンマの漁獲量

スルメイカの漁獲量
年平均増減率
▲20.8%

年平均増減率
▲21.5%

○他⽅で、同時期(実証期間︓平成25年〜平成30年)の底びき網漁業において、「スケトウダラ」及び「スルメイカ」
を漁獲対象に含み漁獲量が計画策定時の▲61%と⼤きく落ち込んでいるにもかかわらず、船の「⼩型化」による
償却前利益増減額
コスト軽減等によって、償却前利益が増加(代船建造の⾒通し有)となった事案が確認されており、
(千円)
⼿法によっては厳しい資源環境下での収益性改善の可能性が認められる。
○また、船の「⼩型化」全体をみても、漁獲状況が良い場合には航海数(操業⽇数)で⽔揚⾼を確保することが
できるほか、漁獲状況が悪い場合であっても⼈員削減や検査費⽤等の固定費削減等のコスト削減効果が⽣じている。
その結果、「⼩型化」は、漁獲状況に応じた柔軟な操業によって、償却前利益増加に貢献しているものと⾒られる【図4】。

年平均増減率
▲9.4%

【図4】「⼩型化」(n=12)
⽀援額と償却前利益増減額との関係

⽀援額
(千円)

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