令和7年3月 保護者の思想信条等に起因する医療ネグレクトに関する調査研究 報告書 (94 ページ)
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出典情報 | 保護者の思想信条等に起因する医療ネグレクトへの対応について(8/7)《こども家庭庁》 |
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もらいたいとの意⾒もあり、児童相談所側の継続的な体制確保が求められている。
また、医療機関からは「通告後の経過についての共有がない」といった課題も指摘されており、児童相談所には
ケースを通じたコミュニケーションももっと密に⾏うことが求められている。
■児童相談所への「通告」後の対応への相互理解の促進
医療機関からは、「児童相談所に通告することにより、保護者と医療機関との関係が切れてしまうことが懸念さ
れる」との意⾒が多くあげられた。特に、虐待対応に慣れていない医療機関においては、児童相談所に通告した
後の対応や展開を懸念するものと推察される。
児童相談所側は、気になるケースは通告してほしいという思いがあるが、そのためには、医療機関が懸念すると
ころについての理解が必要である。
医療ネグレクトのような難しいケースほど、多機関での連携が必要である。個⼈病院の把握したケースについて、
地域の基幹病院にもつなげられるような仕組みも考えられる。
そのためには、児童相談所への通告後の対応について想定しやすいよう、各機関の⼿続きの流れ等を事前に
共有すること等を通じ、医療機関が躊躇なく児童相談所に通告できるような⼯夫が求められている。
■医療ネグレクトの事例を共有する仕組みの構築
今回の調査では、「保護者の思想信条等により、医療機関が提⽰したこどもへの医療⾏為に対して保護者の
同意が得られなかったケースのうち、その医療⾏為を⾏わないことがこどもの⽣命・⾝体に重⼤な影響があると考え
られた事例」について、令和4年 4 ⽉〜令和6年 9 ⽉末の2か年半で「該当事例がなかった」と回答した児童
相談所が 88.3%、医療機関が 72.7%であり、「このようなケースが少なく、対応についてのノウハウがない」との回
答も多数みられた。
事例の共有や具体的なケースや対応についての情報の提供が必要といった意⾒があった。いざというときに助⾔
を得られる先はどこか(該当事例があったのはどこか)など、ケースがあったときにどのように対応したらよいかを共有
したり、相談できる児童相談所間の横のつながりをつくるための仕組みが必要である。
医療ネグレクトについての相談窓⼝の設置を求める意⾒もあったが、まずは事例を集約し、児童相談所や医療
機関が類似事例を把握したり、類似事例における対応を確認・相談できるような事例等を共有する⽅法、その
機会を設けることが第⼀段階であると考えられる。
■既存のガイドラインや研修会等の活⽤
医療ネグレクトへの対応については、⽇本⼩児科学会が「⼦ども虐待診療の⼿引き」を作成しており、判断基
準や対応⽅針等の考え⽅が整理されている。また、同学会では、「こどもの意向を尊重した意思決定のための研
修会」も開催しているなど、本調査研究で課題として意⾒があげられた事項についての取組みが進められているが、
それらの認知度はまだ⾼くないと推察される結果であった。
その他にも様々なガイドライン等が出されているため、児童相談所や医療機関に改めて周知し、所内・院内研
修での活⽤等が期待される。
■医療機関における児童虐待対応に関する研修の実施
令和6年度の診療報酬改定で、「⼩児かかりつけ診療料」の施設基準が⾒直され、当該診療料を算定する
医療機関に配置されている、専ら⼩児科⼜は⼩児外科を担当する常勤の医師について、「虐待に関する適切な
研修」を修了していることが望ましいものとされた。この研修には、⽇本こども虐待医学会作成の医療機関向け虐
待対応プログラム BEAMS Stage 1 が該当することが⽰されている。BEAMS は Stage 3までで構成されてお
り、今後は Stage 2や3の受講まで広がっていくことが期待される。
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