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【参考資料2-3】抗微生物薬適正使用の手引き 第四版(案)薬剤耐性菌感染症の抗菌薬適正使用編 (7 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64503.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会(第99回 10/21)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

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第四版

薬剤耐性菌感染症の抗菌薬適正使用編

(2) 腸球菌(VRE[バンコマイシン耐性腸球菌]を含む)

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ヒトの感染症に関連する腸球菌として臨床的に分離頻度が高く重要なのは

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Enterococcus faecalis、 次いで Enterococcus faecium、Enterococcus gallinarum、

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Enterococcus casseliflavus 等である。腸球菌は、消化管の常在菌であり、特に重症

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患者や免疫抑制患者において、医療関連感染症を引き起こす。

6

入院患者は院内環境・医療従事者・デバイス等を介してバンコマイシン耐性腸球

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菌(vancomycin-resistant Enterococci:VRE)を獲得後消化管内等に保菌し、その

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一部が発症する。VRE 獲得のリスク因子としては、抗菌薬曝露歴・在院日数・重症

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患者・侵襲的デバイスの使用・ICU 入室・長期介護施設入所・VRE の保菌者や汚染

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された環境への曝露等が知られている 14。海外で医療曝露歴のある患者でも検出例

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が散見される 15。

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VRE 感染症は、感染症法に基づく 5 類感染症で全数把握対象疾患である 16。VRE

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の国内での届け出数は 2011~2019 年までは年間 100 例未満であったが、2020 年以

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降は年間 120 件以上が検出されている 17。VRE の大半は E. faecium である。VRE を

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含む腸球菌は医療施設関連 UTI(特に CAUTI)の重要な原因菌であり、また、

16

CRBSI・感染性心内膜炎・腹腔内感染症・皮膚軟部組織感染症・SSI 等の原因となる

17

14。VRE 菌血症の致命率はバンコマイシン感性腸球菌に比べ 1.8 倍であったとする報

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告もある 18。

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微生物学的特徴と診断

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VRE では細胞壁のペプチドグリカン前駆体末端のグリコペプチド系抗菌薬の結合

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親和性が低下することで耐性化する。E. gallinarum や E. casseliflavus はバンコマイ

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シンに自然耐性を示す 19。感染症法の届出基準では、分離腸球菌株に対するバンコ

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マイシンの MIC が 16 μg/mL 以上のものが VRE と定義されている 16。耐性型に関し

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ては、VanA 型や VanB 型等の一部は遺伝子検査機器で判定が可能である(又は感染

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症法に基づく届出に際して、地方衛生研究所等に依頼を検討)。耐性型により耐性度

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や各グリコペプチド系抗菌薬への感性が異なる 19。VanA 型、VanB 型、VanD 型、

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VanF 型、VanM 型ではバンコマイシン高度耐性となる 20。薬剤感受性検査を実施す

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る。

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治療方針

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VRE 感染症の治療に際しては感染症専門医への相談が推奨される。治療に先立っ

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て重要な点は、感染巣の特定と主要な抗菌薬(アンピシリン・テイコプラニン)へ

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の感性並びにアレルギー歴の確認である。感染性心内膜炎や髄膜炎の場合、抗菌薬

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併用療法も含めた対応が必要となる。膿瘍を伴う感染症や CRBSI 等抗菌薬のみでの
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