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【参考資料2-3】抗微生物薬適正使用の手引き 第四版(案)薬剤耐性菌感染症の抗菌薬適正使用編 (28 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64503.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会(第99回 10/21)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

第四版

薬剤耐性菌感染症の抗菌薬適正使用編

1

(5) その他のグラム陰性桿菌(緑膿菌以外のブドウ糖非発酵菌)

2

(i) アシネトバクター属菌

3

疫学の概要と臨床的特徴

4

国内では薬剤耐性アシネトバクター感染症は 5 類感染症全数把握疾患であるが 130、

5

感染症法での耐性と判定される MIC のカットオフ基準と、世界的によく参照される

6

CLSI の定める基準が異なる点には注意を要する(詳細は付録)。

7

アシネトバクター属菌はブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌であり、土壌や河川水

8

等の環境に広く存在する 131。病院環境でも長期に生存可能で、院内伝播の原因とな

9

る。アシネトバクター属菌の中でもヒトの感染症の原因となるのは主に

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Acinetobacter baumannii complex(以降、A. baumannii)である 131。A. baumannii

11

は院内肺炎、血流感染症や創傷感染症等の原因となり、臨床的に特に問題となるの

12

は院内肺炎、中でも VAP である 131,132。アシネトバクター属菌による感染症のリス

13

ク因子として、高齢、重篤な基礎疾患の存在、免疫不全、外傷や熱傷、外科治療が

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あり、さらに、体内カテーテル挿入や人工呼吸器管理、長期入院、抗菌薬曝露等も

15

リスクとなる 133。オーストラリアやオセアニア、中国や台湾、タイ等の温暖・湿潤

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な国では市中感染症(主に肺炎)の原因となることも知られているが 134、日本での

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報告は限られる 135。

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A. baumannii は内因性の薬剤耐性機構を豊富に有し、同時に外因性の薬剤耐性機

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構を獲得する能力も備え(詳細は付録 p.25 参照)、世界的に薬剤耐性化が問題となっ

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ている 131。世界保健機関は、新規抗菌薬の研究開発が急がれる薬剤耐性菌の中で、

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カルバペネム耐性 A. baumannii(Carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii:

22

CRAB)を最も緊急性の高い「critical」に分類している 136。ただし、日本では CRAB

23

ならびに多剤耐性アシネトバクター(MDRA)の頻度は諸外国と比べて低い状態が

24

維持されている 137。JANIS(Japan Nosocomial Infections Surveillance:院内感染対

25

策サーベイランス事業)による 2023 年データでは、検出されたアシネトバクター属

26

菌のメロペネム非感性率は 1.6%、MDRA の分離された医療機関の割合は 0.5%であ

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った 26。近年では海外で医療曝露があった症例を介して多剤耐性アシネトバクター

28

属菌(Multidrug-resistant Acinetobacter spp.:MDRA)が日本の医療機関に持ち込ま

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れる事例が報告され、一部の医療機関でのアウトブレイクにつながっている 15,138,139。

30

そのため、海外から持ち込まれる可能性の高い薬剤耐性菌としても認識が必要であ

31

る 140。

32

28