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参考資料3_医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版) (108 ページ)

公開元URL https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/125/mext_00004.html
出典情報 看護学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する連絡調整委員会(第1回 7/19)《文部科学省》
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られる。例えば心音の聴診を扱う場合、教える対象が OSCE 前の学生であれば、聴診における作法や聴診器を
当てる部位を理解していることが目標となり得る。一方、臨床実習終了後の学生が対象であれば、心音を聴
診したうえでその音の種類を判断し、臨床推論に利用することができるといった目標も設定可能であろう。
効率の向上には、教育にかかる人的・物的・時間的・金銭的等のコスト面が関係する。聴診の例でいえ
ば、学生 1 人 1 人が模擬患者やシミュレーターで実習できる環境を整えるのか、タブレット等のアプリで擬
似的に体験できるようにするのか、あるいは講義や動画で情報を伝えることに留めるのか、等が挙げられ
る。これらは教育の方略を選択する際にも重要となる点である。
魅力を高めることは、学生の意欲を継続させ、生涯学習へとつなぐことを意味する。入学直後に行われる
早期体験実習等を通じて医学・医療に対する興味関心が高まるように工夫すること、臨床実習中の経験等を
将来の専門分野選択に活かせるようにすること、などが例として挙げられる 7。
6F

2) インストラクショナルデザインの第一原理
インストラクショナルデザインは種々の理論が提唱されている。Merrill はインストラクショナルデザイン
の第一原理として、その共通項を Problem、Activation、Demonstration、Application、Integration という
5 つの要素に整理した 8。
Problem は現実世界で起こりうる問題・課題を扱うことを意味する。例えば PBL の課題として、臨床実習で
すぐに直面するであろう症例を扱うことは、目標を明確化し、学修意欲を向上させることにつながる。
Activation は既習内容や経験を想起させ、新しい知識と関連づけることを意味する。臨床の場で目にした症
例に関して、講義や教科書で学んでいた知識、あるいは類似の症例等に対比させて学修することなどが挙げ
られる。
Demonstration は具体的な例を学生に示すことを、Application は学生に実施・実演させることを意味す
る。シミュレーションで手技を扱う際、教員による実演や動画を用いた例示を行った後、学生に練習・実施
させるという方略が例として挙げられる。
Integration は知識や技能を日常生活や業務に統合することを意味する。参加型臨床実習、さらには卒後に
おいて、臨床の場面で医行為を実践すること、実践した結果を省察して新たな学びへと結びつけることが例
として挙げられる。
7F

3. 学修方略を考える際に鍵となる問い
学修方略を考える際に鍵となる問いを以下に列挙する。最初に挙げる 6 つの項目は、Harden が提唱した
「SPICES モデル」から引用し 9、さらに今日の医学教育の状況を考慮して、問いを追加した。自身が関わってい
るカリキュラムにおける教育方略を分析・計画する際に、以下の問いについて考えると、整理ができてわかりや
すい。
8F

1) 学修者中心か、教育者中心か?
学修者中心の教育では、教員はあくまでガイド役であり、学修者が自己の学修に責任を持ち、学修ニーズや
目標を把握し、自ら選んだ方法で学び、自己評価する(自己主導型学修)。学修者は能動的な学び方をする傾向
があり、また教材(動画も含む)が重要な役割を果たす。能動的学修(アクティブ・ラーニング)は学修者中心の
教育と言え、例えば、グループ討議等で学修者が積極的に発言できるような機会を作ることなどは、学修者中
心の教育と言える。教育者中心の教育では、学修した後の景色は学修者には見えない(だから学修者は学ぶの

7

鈴木克明. E-Learning 実践のためのインストラクショナル・デザイン(特集号:実践段階の e-Learning). 日本教育工学会論文. 2006;29(3):
197–205. https://doi.org/10.15077/jjet.KJ00004286879
8
Merrill, MD. First principles of instruction. Educational Technology Research and Development. 2002; 50(3): 43–59.
https://doi.org/10.1007/bf02505024
9
Harden RM, et al. Educational strategies in curriculum development: The SPICES model. Medical Education. 1984;18(4):284–97.
https://doi.org/10.1111/j.1365-2923.1984.tb01024.x

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