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参考資料3_医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版) (106 ページ)

公開元URL https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/125/mext_00004.html
出典情報 看護学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する連絡調整委員会(第1回 7/19)《文部科学省》
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Ⅰ.学修方略
第 2 章に記した学修目標は主に「何を教えるのか?」について言及している。一方で、教育を計画・実施する
際には、何を教えるのか(What to teach)だけでなく、どう教えるのか(How to teach)、どう評価するのか(How
to assess)も検討する必要がある。第 3 章では、方略(どう教えるのか?)と評価(どう評価するのか?)について
取り上げる。学修目標を達成するために必要な具体的な教育方法(Teaching Method)と学修する順序、人的資源
や物的資源、対象者、人数、選択・必修等のより大きな教育戦略(Educational Strategy)を合わせて、「学修方
略」という。
1. 学修方略を考えること
「どう教えるのか?」を考える際には、例えば、講義にするのか、グループ討議にするのか、PBL を採用するの
か、といった具体的な教育方法を検討することになる。
「どう教えるのか?」は、学修目標、教育環境、学修者の特性等、さまざまな要素に依存するため、これが絶
対に良い、という教育方略は存在しない。よって、現場で実践し、振り返りながら、改良を重ねていくことにな
る。その際に役立つ教育学理論と鍵となる問い、そして学修を効果的にするいくつかの方法を以下に記載する。
本章の最後には、Good Practice 事例を紹介している(Ⅲ. 方略・評価の事例参照)。ぜひ参考にして、各大学で
さらに工夫を重ねて教育をより良いものにしていただきたい。
2. 学修方略を組む際に役立つ教育学理論
1) 成人学習理論
高等教育として位置付けられる医学教育において、成人学習理論の理解は重要である。Knowles は、成人の
学習プロセスは自己概念、過去の経験、学習へのレディネス、学習への方向性、動機付けという 5 つの要素に
ついて成人特有の特徴があり、子どもを対象とする教育学(Pedagogy)と対比して、成人を対象とする教育学
(Andragogy)を提唱した。成人学習理論は 20 世紀終盤に開発された学修者中心性の高い医学教育カリキュラム
(例:Problem-based Learning 等)の基盤となる理論として活用されてきた。例えば「学修者がこれまでに学
んできた内容と関連づけて授業を計画する」といったような活用が可能である 3。成人教育理論では、能動的
学修(アクティブ・ラーニング)が推奨されている 4。講義の前に自主学修を課すこと(反転学修)、ICT を活用
して双方向性にコミュニケーションができるよう工夫すること、などが例として挙げられる。
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2) 行動主義と認知主義と構成主義
行動主義は、人の学習や思考プロセスは、その人の行動から予測可能と捉える心理学的立場である。この考
え方は、20 世紀の教育心理学において、学修者にどのような学修内容を与えれば、どのような行動をするか
という観点から活用された。一方で、行動さえ変われば何を考えていてもよいのか、あるいは何も考えなくて
もよいのかという批判や客観的な知識のみを評価する試験至上主義を招いた等の批判が生じた。これに対し、
認知主義では、行動主義が行動のみに着目していたのに対し、人は情報が入ってからどのように処理されて、
どのように蓄積されて、そしてどのように記憶が引き出されているのかという点に注目し、注意と意識、言
語、情動、視覚、聴覚、運動を学習に包含した。構成主義では、学修者の既存知識に、学修者にとって意味の
ある新たな情報を積み重ねることで、鍵となる概念(Key Concepts)や重要概念(Big Ideas)が形成される能動
的なプロセスそのものが学びであると考えた。これらの概念は、細かい知識を単独で記憶することでは獲得さ

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西城卓也, 他. 医学教育における効果的な教授法と意味のある学習方法(1). 医学教育. 2013; 44(3):133–41.
https://doi.org/10.11307/mededjapan.44.133
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駒澤伸泰, 他. 医学教育イントロダクション 医療系学生を支えるすべての指導者へ: 日本医事新報社; 2022.

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