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資 料4-1 令和3年度第6回安全技術調査会の審議結果について (307 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26025.html
出典情報 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会血液事業部会(令和4年度第1回 6/8)《厚生労働省》
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2.TTS の概要
1)TTS とは

全世界で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン接種が進む中、副反応として
血小板減少を伴う血栓症が問題となっている。2021 年 3 月以降、アストラゼネカ社アデノウイルスベ
クターワクチン(バキスゼブリアⓇ)接種後に、異常な血栓性イベントおよび血小板減少症をきたすこ
とが報道され、4 月 7 日に欧州医薬品庁(EMA)は「非常にまれな副反応」として記載すべき病態と結
論づけている。4 月 9 日にはドイツとノルウェー、4 月 16 日には英国からバキスゼブリアⓇ接種後に生
じた血栓症のケースシリーズが相次いで報告された[1-3]。ヘパリン起因性血小板減少症(HeparinInduced Thrombocytopenia: HIT)と類似した病態と捉えられ、vaccine-induced immune thrombotic
thrombocytopenia(VITT)や vaccine-induced prothrombotic immune thrombo-cytopenia(VIPIT)と
いう名称が用いられた。ここでは血小板減少症を伴う血栓症(Thrombosis with Thrombocytopenia
Syndrome: TTS)を用いるが、本症の医学的に適切な名称については未だ議論があるところである。な
お、バキスゼブリアⓇと同じアデノウイルスベクターワクチンである Ad26.COV2.S(Janssen/Johnson
& Johnson,申請中)でも同様の TTS を生じることが報告されている[4-5]。また、ワクチン接種後の静
脈血栓塞栓症や血小板減少は mRNA ワクチンでも生じうる[6]。
海外では、国際血栓止血学会[7]、米国血液学会[8]、ドイツ血栓止血学会[9]、イタリア血栓
止血学会[10]等から TTS に関する診断や治療の手引きが公開されており、WHO からも暫定ガイドライン
が発表された[11]。
TTS の特徴は 1) ワクチン接種後 4-28 日に発症する、2) 血栓症(脳静脈血栓症、内臓静脈
血栓症など通常とは異なる部位に生じる)、3) 血小板減少(中等度〜重度)、4) 凝固線溶系マーカ
ー異常(D-ダイマー著増など)、5) 抗血小板第 4 因子抗体(ELISA 法)が陽性となる、が挙げられ
る。TTS の頻度は 1 万人から 10 万人に 1 人以下と極めて低い[12]。EMA はバキスゼブリアⓇ接種を受け
た 2,500 万人のうち、86 人に血栓が見つかり、18 人が死亡したと報告している[13]。しかし、これま
でに報告された TTS の症例は、出血や著明な脳浮腫を伴う重症脳静脈血栓症が多く、致死率も高い。
また、脳静脈血栓症以外の血栓症も報告されている[2,3]。極めて稀な副反応であるが、臨床医は TTS
による血栓症(付 1 を参照)を熟知しておく必要がある。
2)ワクチン接種後 TTS の発症時期と血栓症の発症部位

本手引きの作成時点では、海外の報告や提言を参考に、ワクチン接種後の TTS の発症時期を 428 日(ワクチン接種日を 0 日とする)とした[7-10]。なお、ワクチン接種 3 日後に血小板減少を伴う脳
静脈血栓症を来した症例が報告されている[14]。今後、報告例が増加すれば基準が変更になる可能性が
ある。一方、TTS ではないワクチンに関連する典型的な副反応(接種部位の疼痛や圧痛、頭痛、倦怠
感、筋肉痛、悪寒、発熱、関節痛、嘔吐など)はワクチン接種後 2-3 日以内に生じると言われている
[15]。

ワクチン接種後の TTS による血栓症の発症部位として静脈系、動脈系ともに報告がある。これ
まで特徴的とされてきたことは重症の脳静脈血栓症が多く、通常の脳静脈血栓症に比較して出血(出

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