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資 料4-1 令和3年度第6回安全技術調査会の審議結果について (207 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26025.html
出典情報 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会血液事業部会(令和4年度第1回 6/8)《厚生労働省》
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血性梗塞や脳出血など)を伴う頻度が高いことである。また、脳静脈血栓症と診断した場合でも、脳
以外の複数部位に血栓症を合併している可能性を考慮する必要がある。これまでに、内臓静脈血栓症
(門脈系血栓(症))、肺血栓塞栓症、下肢静脈血栓症、脳梗塞(動脈系)、急性冠症候群、右室内
血栓、下大静脈内血栓、脊髄周囲の静脈、大動脈内血栓などが報告されている[1-3]。

3.TTS とヘパリン起因性血小板減少症(HIT)との関連
ワクチン接種後に発症する TTS は HIT と病態が類似する疾患として報告された[8]。HIT はヘ
パリン投与が誘因となり、血小板第 4 因子/ヘパリン複合体に対する抗体が誘導され、血小板や単球の
FcγRIIA への結合を介して、血小板の活性化やトロンビン過剰産生、血栓塞栓症、消費性血小板減少
をきたす疾患である[15]。TTS においても、血小板第 4 因子とワクチンに含まれる free-DNA などが複
合体を形成し、複合体に対して形成された抗体が血小板の活性化を惹起する可能性が想定されてお
り、メカニズムの解明にむけた研究が続けられている[1,8]。TTS と HIT は、ワクチンもしくはヘパリ
ン曝露から血小板減少・血栓症を発症するまでの期間が類似しており(通常発症型 HIT ではヘパリン
投与後 5-14 日で発症)、いずれの疾患も大部分の患者で ELISA 法での抗血小板第 4 因子抗体が陽性と
なり、抗体機能検査で血小板活性化能が確認される[1-3,15]。両疾患で動静脈血栓症が観察されるが、
血栓好発部位は異なり、TTS で脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症(門脈系血栓(症))が多いと報告され
ているが、HIT では下肢深部静脈血栓症や肺塞栓症が多い。また TTS では出血合併例がみられることも
両者の相違点である。検査所見では、TTS で HIT よりも血小板減少や D-ダイマー上昇、フィブリノゲ
ン低下などの凝固異常が顕著にみられる傾向がある[1-3,16]。抗血小板第 4 因子抗体検出については、
本邦で HIT の診断に用いられているラテックス凝集法(LIA)または化学発光免疫測定法(CLIA)は、
TTS では偽陰性になることが報告されているので、ELISA 法での確認が必要である[3-4]。また抗体機能
検査で、典型的な HIT 患者由来の検体では生理的濃度のヘパリンを追加することで血小板活性化を認
めるが、TTS 患者由来の検体ではヘパリン非依存性に血小板活性化を認めることが多い[1-3]。HIT の一
型として、ヘパリン非依存性に血小板活性化を惹起する抗体の存在が知られており、自己免疫性ヘパ
リン起因性血小板減少症(autoimmune HIT: aHIT)と呼ばれている。aHIT は顕著な血小板減少や DIC
を合併することが報告されており[17]、TTS と類似した臨床像を示すことは興味深く、病態解明にむけ
た研究が望まれる。

4.TTS の診断
1)TTS を疑う臨床所見*

ワクチン接種後 4-28 日(ワクチン接種日を 0 日)に、新たに発症した血栓症に関連した以
下の症状がある。ヘパリン使用の既往は問わない。
a. 脳卒中を疑う症状(片側顔面麻痺、片側運動麻痺、言語障害、共同偏倚、半側空間無視など)
b. 脳静脈血栓症を疑う症状(重度で持続する頭痛、視覚異常、痙攣発作またはそれに近い状態、悪
心嘔吐など)
c. 内臓静脈血栓症を疑う症状(重度で持続する腹痛、悪心嘔吐など)

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