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提案書21(4001頁~4203頁) (58 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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②現在の診療報酬上の取扱い
・対象とする患者
・医療技術の内容
・点数や算定の留意事項

・対象とする患者:標準治療がない固形がん患者又は局所進行若しくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる
者を含む。)
・技術内容:固形がん患者を対象とした腫瘍組織検体、血液検体の包括的なゲノムプロファイルの取得および承認された遺伝子変異等を検出する
・点数:44,000点
・留意事項:
固形腫瘍の腫瘍細胞又は血液を検体とし、100 以上のがん関連遺伝子の変異等を検出するがんゲノムプロファイリング検査に用いる医療機器等と
して薬事承認又は認証を得ている 次世代シーケンシングを用いて、包括的なゲノムプロファイルの取得を行う場合に、検体 提出時に患者1人に
つき1回(以下のイの場合については、血液を検体とする検査を含めて2回)に限り算定できる。ただし、血液を検体とする場合については、以
下に掲げる場合にのみ算定できる。
ア 医学的な理由により、固形腫瘍の腫瘍細胞を検体としてがんゲノムプロファイリング検査を行うことが困難な場合。この際、固形腫瘍の腫瘍
細胞を検体とした検査が実施困難である医学的な理由を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
イ 固形腫瘍の腫瘍細胞を検体として実施したがんゲノムプロファイリング検査において、包括的なゲノムプロファイルの結果を得られなかった
場合。この際、その旨を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。


診療報酬区分(再掲)
診療報酬番号(再掲)

D006-19, B011-5

医療技術名

がんゲノムプロファイリング検査、がんゲノムプロファイリング評価提供料
標準治療不応症例において、がん遺伝子パネル検査または全ゲノム解析を受けた場合と受けなかった場合で、予後の改善が認められないことが報
告されている(Target Oncol. 2022; 17(5): 539-548, Mol Genet Genomic Med. 2021; 9(1): e1554)。すなわち、標準治療不応のがん患者に対し
てがん遺伝子パネル検査または全ゲノム解析を実施するだけでは、集団としての予後の面でもメリットがないことが示されている。一方、がん遺
伝子パネル検査または全ゲノム解析で得られた遺伝子変異に基づく治療を行った場合、従来の治療をした場合と比べて予後が改善することが報告
されている(Nat Med,2019,25:744-50, Lancet Oncol, 2020,21:508-18)。また、がんの診断時にがん遺伝子パネル検査を実施し、CDxで陽性であ
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 ればそれに基づく分子標的薬、がんゲノムプロファイリングで治療候補が見つかれば治験やコンパッショネートユースなどでの薬剤提供等、遺伝
子変異に基づく治療の優先順位付けを治療方針決定に生かすことで、患者の予後改善に貢献しうる(Clin Cancer Res. 2020 July 01; 26(13):
後等のアウトカム
3239–3247)。さらには、膵癌(JCO Precis Oncol. 2019; 3: 1-10, NPJ Genom Med. 2023; 8(1): 1)、胆道癌(Clinical Cancer Research.
2022, 28:1662-71)、非小細胞肺癌(BMC Med. 2021; 19(1): 223, Lung Cancer. 2020; 148: 69-78)において、がん遺伝子パネル検査を早期に
実施し、遺伝子変異に合った治療を行うことで、予後改善につながることが報告されている。一般に、抗がん薬治療は治療ラインが増えるほど抵
抗性になり、全身状態や臓器機能が悪化することから、より早いタイミングでがん遺伝子パネル検査を実施することがよりよい治療を提供し予後
を改善する意味でも極めて重要であると言える。

③再評価の根
拠・有効性

ガイドライン等での位置づけ

④普及性の変化
※下記のように推定した根拠

年間対象者数の
変化

年間実施回数の
変化等

2022年の1年間で約2万人ががん遺伝子パネル検査を受けている(C-CAT登録数より)。生涯1回の回数制限があるため、がん遺伝子パネル検査は約2
万回実施されていると推計できる。一方、本要望により、適切なタイミングで検査を行うことを可能とすることで、対象患者は増えることが予想
される。わが国におけるがん罹患数は、2019年の統計では年間約100万人であり(がん情報サービス)、その半分は早期がんで、残り半数のうち
6-7割は手術可能な病期と想定される。全国がん登録のデータからも、がん種によって差はあるものの約5〜30%が病期IV期と報告され、約20%す
なわち約20万人が手術不能の病期と推定できる。しかし、切除不能進行・再発進行がん患者すべてががん遺伝子パネル検査を受けることはなく、
年齢や臓器機能などの面で薬物治療の対象にならない場合を考慮すれば、その7割程度が対象になると想定される。また、がん免疫チェックポイ
ント阻害薬が初回治療から投与可能ながん種(肺癌、胃癌、食道癌、肝臓癌、一部の乳癌など)や個別のCDxが優先される場合があることなどを
考慮すると、実際に初回治療選択時にがん遺伝子パネル検査を実施する割合は約50%程度と想定される。さらに、CGP検査を受けられるがんゲノム
医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院の市場構成比40%を考慮すると、28,000人が初回治療開始前にがん遺伝子パネル検査を受けるようになる
可能性がある。

見直し前の症例数(人)

20,000人

見直し後の症例数(人)

28,000人

見直し前の回数(回)

20,000回

見直し後の回数(回)

28,000回

⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

以下に示すガイドライン等では、標準治療後に限らず可能な限り早期の段階でがん遺伝子
パネル検査を実施することが推奨されている。
・日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会「次世代シークエンサー等を用いた遺
伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス」(2020 年 5 月 15 日 第 2.1 版)
・NCCNガイドライン 前立腺癌 Version: 1.2023
・NCCNガイドライン 非小細胞肺癌 Version: 1.2023
・NCCNガイドライン 卵巣癌 Version: 1.2023
・ESMOガイドライン 胆道がん Ann Oncol 34:127-140, 2023


ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す ESMOガイドライン MSI変異、NTRK融合遺伝子 Ann Oncol 31:861-872, 2020
肺癌患者における次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査の手引き第2.0版、肺癌
る。)
患者におけるMETex14 skipping検査の手引き第1.0版、肺がんのMET/NTRK遺伝子診断におけ
るエキスパートパネルの活用に関する要望書(以上、日本肺癌学会)
・膵癌診療ガイドライン 2022年版 第6版 (日本膵臓学会)
・卵巣癌患者に対してコンパニオン診断としてBRCA1あるいはBRCA2の遺伝学的検査を実施
する際の考え方(日本婦人科腫瘍学会)
・大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス第5版(日本臨床腫瘍学会)
・前立腺癌におけるPARP阻害薬のコンパニオン診断を実施する際の考え方(見解書)改訂
第3版 2022年4月 (日本泌尿器科学会)

・学会等における位置づけ
日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会、日本癌学会による「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス改定
2.1版」では、検査の時期を限定せず最適なタイミングで治療計画を考慮した検査の実施が推奨されている。国内外のガイドラインでは、初回治
療開始前もしくは初回治療開始後早い段階で実施することが推奨されている。これらより、本医療技術はPrecision Medicine(精密医療)を実践
する上で必要不可欠なものである。なお、米国においては、公的医療保障制度であるメディケアおよびメディケイドを運営するCenters for
Medicare & Medicaid Servicesが次世代シークエンサーにかかるNational Coverage Determinationの中で、進行再発ステージⅢもしくはⅣ、転
移性、再発、再燃、難治のいずれかの癌患者が給付対象になっており、検査のタイミングの制限していない。欧州や韓国でも、検査のタイミング
に関する制限は設けられていない。
・難易度(専門性等)
実施医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関であるがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノ
ム医療連携病院で実施される。わが国でがん遺伝子パネル検査が保険適用になってから、令和5年2月で末で3年9か月が経過し、すでに5万例以上
ががん遺伝子パネル検査を受けていることから、医療技術は既に確立しているといえる。

施設の要件
(標榜科、手術件数、検査や手術の体 がんゲノム医療中核拠点病院等の整備に関する指針に従い、がんゲノムプロファイリング検査に基づく診療体制が整った医療機関
制等)
人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門 薬物療法、病理、遺伝学、バイオインフォマティクス、遺伝カウンセリング、の専門家がいること
性や経験年数等)
その他
・次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス
(遵守すべきガイドライン等その他の ・卵巣癌患者に対してコンパニオン診断としてBRCA1あるいはBRCA2の遺伝学的検査を実施する際の考え方
要件)

⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

特になし

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