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提案書21(4001頁~4203頁) (52 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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④有効性・効率性
・新規性、効果等について③との比較
・長期予後等のアウトカム

1コース目のAUCが至適AUC値20~29 mg·h/Lより高い患者では2コース目から減量するため、副作用を未然に回避すること
ができ安全性が向上する。また副作用に基づく治療延期によるdose intensity低下が回避されることで有効性が向上する。
一方、1コース目のAUCが至適AUC値より低い患者では2コース目から増量するため、用量不足による過少治療の継続が回避
されることによって有効性が向上する。
参考文献1と2より、有効性の向上として「奏効(完全奏効+部分奏効)が得られる患者数の増加」と「各患者における生存
期間の延長」が期待される。

転移性大腸癌患者を対象としたランダム化第Ⅲ相試験(N=208)にて体表面積に基づく標準用量で5-FU注治療を開始し、従来
通りに副作用発現状況に基づき休薬・減量が行われた群(Arm A)と血中5-FU濃度測定を行ってAUC値に基づき用量調節が行わ
れた群(Arm B)で有効性と安全性が比較検討された。その結果、奏効割合(response rate:RR)はArm Bで有意に高く(Arm A
18.3% vs. Arm B 33.7%, P=0.004)、全生存期間(overall survival:OS)中央値は有意差を認めないもののArm Bの方で長い
傾向が認められた(Arm A 16ヶ月 vs. Arm B 22ヶ月, P=0.08)。また安全性においては、Arm Aでは副作用の発現頻度が有意
に高く(P=0.003)、その重症度も高い傾向にあった(参考文献2)。
上記ランダム化比較試験を含む5つの比較試験(大腸癌もしくは頭頚部癌、N=654)のメタアナリシスにより、AUC値に基づく
5-FUの用量調節を行った群の奏効割合(overall response rate:ORR)は従来の投与法(副作用に基づく次コース投与延期・
減量)がなされた群に比べて有意に高く(P=0.0002)、オッズ比は2.04(95%信頼区間=1.41~2.95)であった。またグレード
3/4の粘膜炎ではAUC値に基づく5-FUの用量調節を行った群での有意なリスク低下(P=0.009)が認められ、オッズ比は
0.16(95%信頼区間=0.04~0.63)であった(参考文献1)。
研究結果

日本人でのAUC分布状況を把握するために、本提案の技術担当者の今村知世が朴成和医師と共同で実施した臨床試験
(UMIN000035580)において、体表面積に基づく標準用量投与にて至適AUC値20~29 mg·h/Lであった患者数は47人中14人
(29.8%)であり、約70%の患者で用量調節が必要であることが明らかとなった(本年3月の日本臨床腫瘍学会学術集会にて発
表、現在論文作成中、概要図に分布結果を掲載)。
今回の提案においては、上記のメタアナリシス論文(参考文献1)および朴と今村により実施された臨床試験で得られた「日
本人では約70%の患者で用量調節が必要である」という結果が追加のエビデンスとなる。
現在の特定薬剤治療管理料の対象薬の中には、5-FU注のように血中濃度測定に基づく用量調節の有用性が比較試験のメタア
ナリシスやランダム化比較試験により示されている薬物はなく、したがって確固たるエビデンスを有する5-FU注での血中濃
度測定に基づく用量調節の臨床導入が強く望まれている。

⑤ ④の根拠と
なる研究結果等

1a

国際TDMCT学会(International Association of Therapeutic
Drug Monitoring and Clinical Toxicology)が、大腸癌と頭頚部
癌の5-FU注持続点滴投与レジメンにおける治療薬物モニタリング
(Therapeutic Drug Monitoring: TDM)に基づく個別化投与を推奨
するガイドラインを発表している(参考文献4)が、これは診療ガ
イドラインではない。
ガイドライン等での位置づけ

ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
る。)

年間対象患者数(人)

70,000人

国内年間実施回数(回)

119,000回

大腸癌研究会による「大腸癌治療ガイドライン」および日本頭頚
部癌学会による「頭頚部癌診療ガイドライン」には提案医療技術
に関する記載はない。なお大腸癌研究会に見込み等について確認
したところ、日本の保険医療制度に配慮したコンセンサスに基づ
きガイドラインを作成しているため、保険診療下で実施できない
「5-FU血中濃度測定とAUCに基づく用量調節」については推奨検
討の対象外といった位置づけであり、保険収載されない限り記載
の可能性はないとの回答であった。

⑥普及性

※患者数及び実施回数の推定根拠等

厚生労働省による全国がん登録報告によると、2019年の大腸癌罹患数は155,625人であった。術後補助療法および切除不能
進行転移大腸癌患者に対する標準治療は5-FU含有レジメンであり、注射レジメンのFOLFOXとFOLFIRI(ベバシズマブ、セツキ
シマブ、パニツムマブの併用も含む)と経口レジメンのCapeOX(カペシタビン+オキサリプラチン)とSOX(S-1+オキサリプラ
チン)より選択されている。これら5-FU含有レジメンの中で、提案医療技術の対象となる注射レジメン(FOLFOXとFOLFIRI)の
処方率は全体の約40%であるとの調査結果に基づき、大腸癌での年間対象患者数は155,625x0.4=62,250人と算出される。一
方、2019年の頭頚部癌罹患数は23,671人であり、外科的治療が50.5%、化学療法が30.7%に実施された。シスプラチン併用の
5-FU注持続点滴レジメンは標準治療であることから、頭頚部癌での年間対象患者数は、23,671x0.3=7,101人と算出される。
したがって大腸癌と頭頚部癌を合わせると約70,000人となる。
我々が検討した日本人での5-FU注のAUC分布結果において、体表面積に基づく標準用量の投与にて至適AUC値20~29 mg·h/L
とならない患者が約70%であったことから、49,000人(70,000人x0.7)では2コース目投与時に用量調節が行われて再度5FU血中濃度を測定してAUCを評価することになるため、年間実施回数は70,000+49,000=119,000回と算出した。

⑦医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

・国際TDMCT学会より「TDMに基づく5-FU注の個別化投与」が推奨されている(参考文献4)。
・大腸癌研究会による「大腸癌治療ガイドライン」では保険診療下で実施できない事項は推奨対象外とされている。
・血中濃度測定のための採血に、特別な技術は要さない。
・血中濃度測定については、HPLC装置を保有している医療機関の検査室や薬剤部にて特定薬剤治療管理料算定のための血中
薬物濃度測定がボリコナゾール、イマチニブ、スニチニブ、第3世代抗てんかん薬などで実施されており、5-FU濃度測定へ
の対応は可能である。なお受託臨床検査会社であるエスアールエルは、国際TDMCT学会のガイドライン発行を機にHPLC法に
よる血中5-FU濃度測定系を確立し事業化の準備を進めている。また他の受託臨床検査会社においても保険収載に伴って血中
濃度測定対象薬物に5-FUが追加される可能性は高い。
・AUC結果に応じた次回用量調節指針が確立されているため(参考文献3)、測定結果の解釈や対応において専門性は不要で
ある。

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