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資料9 評価シート様式2(案)(令和4月2月28日暫定版) (56 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24115.html
出典情報 健康日本21(第二次)推進専門委員会(第17回 2/25)《厚生労働省》
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関するエビデンスの構築」(平成 23(2011)~25(2013)年度:研究代表者 岡村 智教)

4 今後の課題
<領域全体として>
脳血管疾患(脳卒中)と心臓病を合わせた脳・心血管疾患(広義の「循環器疾患」)の死亡
者数は、第2位の死亡原因であり悪性新生物に迫る疾患群である。また脳卒中は重度の要介護
状態に至る原因として認知症と並んで最大の原因となっている。健康日本 21(第二次)における
本領域は、生活習慣→危険因子(高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病)→脳血管疾患、虚血
性心疾患の年齢調整死亡率、という 3 層構造の目標設定になっており、最終的かつ最も重要な指
標が脳血管疾患、虚血性心疾患の年齢調整死亡率であることは言うまでもない。この指標が順調に
低下していたことは大きな成果である。
しかしながら死亡率の低下は実際の危険因子の推移から予測されるよりも大きく低下している。 も
ともと健康日本 21(第二次)の計画策定に用いた推計モデルは、EPOCH-JAPAN 研究の危険因
子と死亡率の関連から単純な推計をしており、治療等による同一個人の長期的な危険因子の推移
等は考慮していない。これは推計できるエビデンスがないということと、無理にモデルを作ると仮定しなけ
ればならない事象が多くなり過ぎて、かえって予測が怪しい結果になる可能性が高かったためである。そ
のため単純に危険因子のレベルが異なる別の母集団での推計を示すというシンプルなモデルとしたため、
現実とのズレが何で生じていたかという検証には困難が伴う。
また根本的な理由として、予防対策の評価は発症率で見るべきであり死亡率で見るのは限界が
あるということもある。死亡率は、発症率と発症後の致命率の積で決まるが、通常、前者は社会環境
や生活習慣の改善や予防対策の効果として、後者は医療技術の進歩によってなされる。したがって
健康日本 21(第二次)の評価は本来発症率で行うべきであるが、残念ながらわが国には脳血管
疾患や虚血性心疾患の発症率を知る手段がない。日本における 35~85 歳の年代における 30 年
間の虚血性心疾患死亡の推移を特殊な統計モデルで推計した研究では、高齢化による死亡率の増
加がかなり抑制されており、増加を抑制できたと考えられる虚血性心疾患死亡者のうち 56%は治療
の進歩、35%は生活習慣等の改善による危険因子の変化が寄与していると推計されている。しかし
健康日本 21(第二次)で用いたモデルでは治療の進歩の影響は評価できていない。
また平成 22(2010)年から 10 年が経過すると人口自体が高齢化していき、年齢調整の影響
を過度に受けている可能性も考えられる。循環器系の死亡は高齢者になるほど等比級数的に高くな
る。健康日本 21 の評価に用いた基準人口は、昭和 60(1985)年モデル人口を用いており、高
齢者の割合が現在とまったく異なっている。当時は 75 歳以上の人口も少なく、85 歳以上は僅少であ
った。そのため高齢層の分母が激減するため直接法で年齢調整を行うと死亡者数が非常に低く算出
される。令和2(2020)年に漸く次の年齢調整死亡率の基準人口(平成 27(2015)年モデ
ル人口)が厚生労働省から示され、令和2(2020)年「人口動態統計(確定数)」から新基準
人口を用いて公表される予定である(公表は令和3(2021)年度予定)。各年の年齢調整死
亡率は遡及して計算される予定であり、それを用いた評価もしておく必要がある。
このように社会的な影響力、医療費への負担が大きい疾患群であるにも関わらず、循環器病には、
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