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医療事故情報収集等事業 第84回報告書(2025年10月-12月) (57 ページ)

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出典情報 医療事故情報収集等事業 第84回報告書(2025年10月-12月)(3/27)《日本医療機能評価機構》
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【2】消化器手術時に胃管等を巻き込んで吻合・縫合した事例


分析テーマ

(7)まとめ
本テーマでは、消化器手術時に胃管等を巻き込んで吻合・縫合した事例24件について分析した。
事例の概要では、実施した手術や誤って吻合・縫合したチューブの種類、患者への影響などを示し
た。事例の分析では、執刀医から麻酔科医への依頼の状況を示し、執刀医から麻酔科医へ胃管等の引
き抜きを依頼した事例では執刀医からの依頼内容と麻酔科医の対応を整理した。また、胃管等を巻き
込んで吻合・縫合したことに気付いた時期と契機や、気付いた後の対応を示した。さらに、主な事例
を紹介し、医療機関から報告された背景・要因と再発防止策を整理して示した。
報告された事例は、鏡視下手術の事例が多かった。鏡視下手術では、執刀医が用手的に胃管等を巻
き込んでいないか確認することができず、確認が不十分となる可能性がある。さらに、ロボット支援
手術の事例では、触覚のフィードバックがないため確認が難しかったと記載されていた。鏡視下手術
においては、吻合・縫合前の胃管等の位置の確認はより慎重に行う必要がある。一方、開腹手術で
は、用手的に胃管等がないことを確認できるため、触って確認することは必須であるが、触って確認
していなかった事例や、確認していても不十分であった事例が報告されていた。また、自動吻合器ま
たは自動縫合器を使用した事例が多く、これらの製品は組織損傷を軽減するための鋭利なカッターが
内蔵されており、胃管等も抵抗なく切断して吻合・縫合できた可能性がある。
胃管等を巻き込んで吻合・縫合したことに気付いた時期は、自動縫合器の作動直後が多かったが、
術後数日を経て気付いた事例も報告されていた。手術中に気付いた場合でも、胃管等を取り出して再
度縫合するなどの追加処置が必要となり、手術時間の延長につながる。また、術後に気付いた場合
は、再度全身麻酔下に胃管等を取り出す手術が必要となり、本来不要な処置を追加することになるた
め患者への侵襲が増大する。消化管の吻合・縫合直後に麻酔科医とともに胃管に可動性があるかを確
認して、胃管の巻き込みに早期に気付くことは重要である。
執刀医から麻酔科医へ胃管等の引き抜きを依頼したと記載された事例12件については、依頼後に
麻酔科医が胃管を抜く長さを誤認した事例や依頼そのものに気付いていなかった事例などがあった。
多くの事例で執刀医と麻酔科医の間の情報伝達にエラーが生じていたことから、胃管の引き抜きの依
頼は、患者の安全に直結する重要なコミュニケーションの場面であることを認識する必要がある。そ
のため、執刀医から麻酔科医へ依頼する際は、胃管等を抜く長さを具体的な数値で伝えるとともに、
麻酔科医は理解した内容を復唱し、執刀医は復唱内容が合っているか確認(チェックバック)するな
ど、互いの認識に齟齬が生じないようにする必要がある。また、実施後には、麻酔科医が行った処置
内容を改めて執刀医と共有するなど、医師間のコミュニケーションを強化することが重要である。手
術中は迅速な対応が求められ、十分な説明や表現が困難な場面もあり得る。同様の事例の発生を防止
するためには、執刀医と麻酔科医との密接な連携が不可欠であり、本場面でのコミュニケーションの
取り方を検討しておくとよい。
執刀医となる医師は、一定の経験年数を有していると推測されるが、手術助手や麻酔科医が当該手
術の経験が浅いことが背景・要因に記載された事例があった。執刀医にとっては、手術の進行上当然
の対応であっても、チーム全員が同じ認識とは限らないことを念頭に置き、各ステップでの確認を怠
らないことが重要である。そして、術後にX線撮影を行った場合は、ドレーンの位置だけでなく、患
者に挿入されているチューブ・カテーテル類の走行を見て、胃管等の屈曲や切断などがないか確認す
る必要がある。

医療事故情報収集等事業

第 84 回 報 告 書

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