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医療事故情報収集等事業 第84回報告書(2025年10月-12月) (36 ページ)
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| 出典情報 | 医療事故情報収集等事業 第84回報告書(2025年10月-12月)(3/27)《日本医療機能評価機構》 |
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2
【1】クリニカルパス/クリティカルパスに関連した事例
■
分析テーマ
No. 区分
事例の詳細
事例の背景・要因
再発防止策
患者は右乳癌再発で当院を紹介受診 ・患者は、転移性肝腫瘍の影響 ・通 常、 肝 生 検 は1泊2日 の 入 院
で、入院当日の血液検査は結果
により、凝固能が軽度延長し
し、肝生検目的で入院した。肝生検実
が肝生検に間に合わないため行
ていた。
施から2時間後、看護師が圧迫を解除
した。夕方の安静解除後、トイレ歩行 ・検査の適応と生検時の状況の
確認が必要であり、院内事例
時に失禁、冷汗、血圧低下を認めた。
医療事故情報
2
わないことが多かったが、不安
な場合は2泊3日の入院とし、血
主科の医師(レジデント)へ報告し、
検討会を開催した。
液検査の結果を確認してから肝
補液と下肢挙上で改善したため経過観
【処置実施の可否について】
生検を行うようにする。
察となった。この際、採血や腹部超音
波検査などは行われず、迷走神経反射
[主科]入院前の採血で凝固 ・各診療科で作成したパスを使用
していたが、共通した治療など
能が軽度延長していたが、患
と診断された。その6時間後、患者は
者にとって検査をするメリッ
は院内で統一したパスを活用で
背部痛、気分不良を訴え、血圧低下が
トの方が上回っていた。
きるようにする。肝胆膵内科の
あった。内科医師が腹部超音波検査を
[放射線診断科]PT-INRの値
パスに合わせて肝生検のパスを
実施したところ腹水を認め、緊急造影
からは、主科同様、検査を止
見直し、患者の状態変化時には
CT撮影を行った。肝臓内の血腫および
める理由は特段認めなかった。
採血・腹部超音波検査などを実
肝表面の腹水貯留を認めた。CT撮影後
これらの背景から、処置実施
施するよう指示内容に入力する。
に意識障害が出現し、ショックとな
り、ICUに入室した。貧血の進行、凝
については問題なかったと判 ・今 回 の 事 例 を 院 内 で 周 知 し、
IVRを実施した場合においても
断した。
固異常があり、出血性ショックと考
【処置中の状況】
患者の急変時や出血などの際に
え、RBC・FFP輸 血、 補 液、 ノ ル ア ド
[放射線診断科]処置前の表
外科医への相談を行うことを内
レナリン投与を行った。出血性ショッ
面麻酔時に皮膚の膨隆を認
科医に共有する。
クに対して緊急IVRを施行したが、そ
め、少し圧迫したところすぐ
の時点では出血点は認められなかっ
に止血されたため本穿刺へ移
た。これらの状況について管理当直、
行した。出血持続などのエピ
外科医師と相談し、ICU帰室後に全身
ソードはなく問題なく終了し
状態を管理しながら引き続き慎重に経
た。
過を観察することとなった。
これらの背景から、処置は問
題なく終了したと判断された。
【処置後急変時の対応】
[主科]肝生検後の病態としてアセスメントする必要があった。処置中問題なく終了していたこと、補液
と下肢挙上のみで血圧が戻ったことなどから迷走神経反射と判断しており、出血を疑ったアプローチがさ
れなかった。結果的に6時間後に出血で急変となっているため、初回に倒れた段階で、採血や腹部超音波
検査を行うべきであった。また初回の迷走神経反射と判断したエピソードに関し、スタッフ医師へは報告
がされなかったため、報告体制にも課題があった。
[放射線診断科]処置後の回診時には問題なかった。急変後のIVRは動脈性の出血があるかないかの確認で
あり、その後、外科的処置が必要かどうかについて、議論がされなかった。
これらのことから、夕方倒れた時点でじわじわと出血していたことが推測される。ここで採血や腹部超音
波検査などを行っていれば何らかの出血の診断に繋げることができた可能性はある。
・これらの状況から、今回の事例は肝生検として行った処置や急変してからの処置に問題はなく、最初の歩
行時に倒れたエピソード時点でのスタッフ医師やIVR医師への報告ができていなかったことに課題がある
と考えられる。肝生検による出血は想定できることであり、共有して振り返るべき事例である。
専門分析班の議論
○再発防止策に、パスの内容を見直し、患者状態変化時には採血・腹部超音波検査などを実施するように組
み込むことが挙げられているが、パスにないから行わない、パスにあるから行う、という問題ではなく、
患者の状態によって必要時に検査を行うのは診療の基本である。
○本事例では凝固系の検査結果が軽度延長していたとあり、パスの適用から除外してもよかったかもしれな
い。そのためには、バリアンスになる基準を決めておくことも重要である。
○医療事故の再発防止に向けた提言第11号「肝生検に係る死亡事例の分析」2)において、提言4【肝生検後
の観察】に「肝生検後の腹痛、嘔気・嘔吐、発熱、不穏などの症状は、出血が原因である可能性を考え
る。
」と記載されていることから、これらの症状をパスの観察項目に入れておくことも有用である。
– 31 –
医療事故情報収集等事業
第 84 回 報 告 書
【1】クリニカルパス/クリティカルパスに関連した事例
■
分析テーマ
No. 区分
事例の詳細
事例の背景・要因
再発防止策
患者は右乳癌再発で当院を紹介受診 ・患者は、転移性肝腫瘍の影響 ・通 常、 肝 生 検 は1泊2日 の 入 院
で、入院当日の血液検査は結果
により、凝固能が軽度延長し
し、肝生検目的で入院した。肝生検実
が肝生検に間に合わないため行
ていた。
施から2時間後、看護師が圧迫を解除
した。夕方の安静解除後、トイレ歩行 ・検査の適応と生検時の状況の
確認が必要であり、院内事例
時に失禁、冷汗、血圧低下を認めた。
医療事故情報
2
わないことが多かったが、不安
な場合は2泊3日の入院とし、血
主科の医師(レジデント)へ報告し、
検討会を開催した。
液検査の結果を確認してから肝
補液と下肢挙上で改善したため経過観
【処置実施の可否について】
生検を行うようにする。
察となった。この際、採血や腹部超音
波検査などは行われず、迷走神経反射
[主科]入院前の採血で凝固 ・各診療科で作成したパスを使用
していたが、共通した治療など
能が軽度延長していたが、患
と診断された。その6時間後、患者は
者にとって検査をするメリッ
は院内で統一したパスを活用で
背部痛、気分不良を訴え、血圧低下が
トの方が上回っていた。
きるようにする。肝胆膵内科の
あった。内科医師が腹部超音波検査を
[放射線診断科]PT-INRの値
パスに合わせて肝生検のパスを
実施したところ腹水を認め、緊急造影
からは、主科同様、検査を止
見直し、患者の状態変化時には
CT撮影を行った。肝臓内の血腫および
める理由は特段認めなかった。
採血・腹部超音波検査などを実
肝表面の腹水貯留を認めた。CT撮影後
これらの背景から、処置実施
施するよう指示内容に入力する。
に意識障害が出現し、ショックとな
り、ICUに入室した。貧血の進行、凝
については問題なかったと判 ・今 回 の 事 例 を 院 内 で 周 知 し、
IVRを実施した場合においても
断した。
固異常があり、出血性ショックと考
【処置中の状況】
患者の急変時や出血などの際に
え、RBC・FFP輸 血、 補 液、 ノ ル ア ド
[放射線診断科]処置前の表
外科医への相談を行うことを内
レナリン投与を行った。出血性ショッ
面麻酔時に皮膚の膨隆を認
科医に共有する。
クに対して緊急IVRを施行したが、そ
め、少し圧迫したところすぐ
の時点では出血点は認められなかっ
に止血されたため本穿刺へ移
た。これらの状況について管理当直、
行した。出血持続などのエピ
外科医師と相談し、ICU帰室後に全身
ソードはなく問題なく終了し
状態を管理しながら引き続き慎重に経
た。
過を観察することとなった。
これらの背景から、処置は問
題なく終了したと判断された。
【処置後急変時の対応】
[主科]肝生検後の病態としてアセスメントする必要があった。処置中問題なく終了していたこと、補液
と下肢挙上のみで血圧が戻ったことなどから迷走神経反射と判断しており、出血を疑ったアプローチがさ
れなかった。結果的に6時間後に出血で急変となっているため、初回に倒れた段階で、採血や腹部超音波
検査を行うべきであった。また初回の迷走神経反射と判断したエピソードに関し、スタッフ医師へは報告
がされなかったため、報告体制にも課題があった。
[放射線診断科]処置後の回診時には問題なかった。急変後のIVRは動脈性の出血があるかないかの確認で
あり、その後、外科的処置が必要かどうかについて、議論がされなかった。
これらのことから、夕方倒れた時点でじわじわと出血していたことが推測される。ここで採血や腹部超音
波検査などを行っていれば何らかの出血の診断に繋げることができた可能性はある。
・これらの状況から、今回の事例は肝生検として行った処置や急変してからの処置に問題はなく、最初の歩
行時に倒れたエピソード時点でのスタッフ医師やIVR医師への報告ができていなかったことに課題がある
と考えられる。肝生検による出血は想定できることであり、共有して振り返るべき事例である。
専門分析班の議論
○再発防止策に、パスの内容を見直し、患者状態変化時には採血・腹部超音波検査などを実施するように組
み込むことが挙げられているが、パスにないから行わない、パスにあるから行う、という問題ではなく、
患者の状態によって必要時に検査を行うのは診療の基本である。
○本事例では凝固系の検査結果が軽度延長していたとあり、パスの適用から除外してもよかったかもしれな
い。そのためには、バリアンスになる基準を決めておくことも重要である。
○医療事故の再発防止に向けた提言第11号「肝生検に係る死亡事例の分析」2)において、提言4【肝生検後
の観察】に「肝生検後の腹痛、嘔気・嘔吐、発熱、不穏などの症状は、出血が原因である可能性を考え
る。
」と記載されていることから、これらの症状をパスの観察項目に入れておくことも有用である。
– 31 –
医療事故情報収集等事業
第 84 回 報 告 書