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提案書18(3402頁~3601頁) (106 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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④有効性・効率性
・新規性、効果等について③との比較
・長期予後等のアウトカム

研究結果

本技術により、従来、剖検による脳組織の病理検査でしか成し得なかった脳内におけるアミロイドβ蛋白の沈着部位や密
度を反映した蓄積状況の非侵襲的な可視化が可能となる。現在のアルツハイマー型認知症の診断は、病歴聴取と身体的及び
神経学的診察にて認知機能障害の有無・重症度を診断し、さらに形態画像検査(CT又はMRI)、脳機能画像検査(脳血流
SPECT検査等)にて行う。形態画像検査や脳機能画像検査でアルツハイマー型認知症と診断された場合でも、病理診断が非
ADであることがある。また、アミロイドβ蛋白がアルツハイマー型認知症の発症前から蓄積するため、ADは、前臨床期を経
て、MCIからアルツハイマー型認知症に連続して続く病態と理解されて、National institute of Aging-Alzheimer’s
Association workgroupによるResearch Criteria(NIA-AA基準)やIWG-2AD先端研究の診断基準では、病因がADであるか否
かの評価に、アミロイドイメージング剤を用いたPET検査(以下、アミロイドPET検査)は必須項目の一つとされた。アミロ
イドPET検査により、アルツハイマー型認知症では約98%、MCIで約68%、健常高齢者では33%が陽性であったと示されてい
る。特にMCIから軽度アルツハイマー型認知症にかけての病初期には、症状や年齢が非定型的であることや脳萎縮や脳血流
に変化が現れにくく、従来の診断では、早期にADが病因と判断することは困難な場合が多い。本技術の診断能は、剖検症例
での病理診断に対して感度=81〜96%、特異度=85〜100%であり、非侵襲的なアミロイド病理の確認方法として高い精度を有
している。
アルツハイマー型認知症のうち、症状や年齢が非定型的な症例は6〜17%を占めるとされ、剖検例検討で病理診断がADで
も、海馬が比較的保たれていたために形態画像検査では診断が難しい例が11%であったと報告されている。このような場
合、本技術によりAD以外の原因による認知症及びMCIとの鑑別が容易となり、個々の患者の容態に応じた適時・適切な医
療・介護の提供が可能となる。実際に、従来の診断プロセスに本技術を追加することで、診断の確信度を高め、検査・治療
計画の適切な変更に寄与する価値があると報告されている(参考文献1、2、3)。国内の認知症疾患診療ガイドラインで
も、本技術で陰性の場合は非ADの鑑別に有用と記載されている。さらに、本技術の追加は、診断後の数年間における入院率
や死亡率、医療費等を低下させ、長期的な疾患の経過に対して有益であると報告されている(参考文献4)
また、アデュカヌマブが2020年12月10日に国内申請された。また、レカネマブが2023年1月16日に国内申請、同年1月30日
に優先審査に指定された。レカネマブについては、米国においては2023年1月6日に迅速承認され、第Ⅲ相試験に基づく申請
が米国と欧州で2023年1月に行われた。両治験では、アミロイドPET検査又は脳脊髄液検査でアミロイド病理が確認された患
者にのみDMTが投与された。レカネマブの第Ⅲ相試験では、複数の認知機能・全般症状の指標で一貫した認知機能低下抑制
効果が示され、また処方期間と共にプラセボに比べて認知機能低下抑制効果が大きくなることが報告され、認知機能の低下
を一定期間遅らせることが示された。このことから、早期AD患者の健康関連QOLの維持等、患者だけでなく介護者である家
族や医療従事者等にとってもベネフィットをもたらすことが期待されている(参考文献5)。このように本技術は、DMTの標
的である脳内アミロイド病理を有する早期AD患者を選択する手段として、直接に画像で脳内アミロイドβ蛋白の蓄積を評価
する重要な役割を担っている。
国内で薬事承認されている又は薬事承認されている合成装置で合成される18F標識アミロイドイメージング剤(フロルベ
タピル、フルテメタモル、フロルベタベン)の臨床試験において得られた剖検症例での病理診断に対して感度はそれぞれ
92%、86%、96%、特異度は100%、92%、85%であった。この結果は、文献で示されている臨床所見や既存の画像診断の感度
(70.9%~87.3%)、特異度(44.3%~70.8%)を大きく上回るものである。
加えて、本技術の有効性に関して以下が報告されている。
1)1,142例を対象としたシステマティックレビューにおいて、本技術による検査後に全症例中の31.3%(357名)の認知症患
者でAD/非ADの診断が変更された(参考文献1)。
2)228名の認知症患者(既存診断でADと診断できる確信度が15~85%のundetermined群)を対象に、フロルベタピルのPET検
査を実施した結果、54.6%で診断の変更があり診断確信度が21.6%上昇した(参考文献2)。
3)米国の医療機関595施設で登録された病因不明の認知症又はMCIの患者(合計で16,008名)を対象にした多施設共同研究
(IDEAS study)の中間解析において、解析を終えた11,409人(登録者総数の71.3%)の患者のうち2,860人(25.1%[95%
信頼区間:24.3%~25.9%])でADから非ADへと診断が変化し、11,409人中1,201人(10.5%[95%信頼区間、10.0%〜
11.1%])で非ADからADへと診断が変化した(参考文献3)。
4)認知症の診断フローにおいて、アミロイドPET検査を追加した患者群と追加しなかった患者群を比較したところ、アミロ
イドPET検査群において、診断後数年間の入院率(10% vs. 21%; ハザード比(以下、HR)= 0.48 [0.33–0.70])、死亡率
(11% vs. 18%; HR = 0.51 [0.36–0.73])が低くなった。また、医療費についても低くなった(参考文献4)。
また、DMTであるレカネマブの第Ⅲ相試験において、アミロイド病理が確認された早期AD患者1,795人(レカネマブ投与
群:898人、プラセボ投与群:897人)を対象に全般臨床症状の評価指標であるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of
Boxes)が評価された。投与18カ月時点のCDR-SBスコアのベースラインからの平均変化量について、レカネマブ投与群、プ
ラセボ投与群はそれぞれ1.21、1.66であり、その変化量の差は-0.45([95%信頼区間: -0.67, -0.23];P = 0.00005)と
なり統計学的に高度に有意な結果が認められ、レカネマブ投与群はプラセボ投与群と比較して27%の全般臨床症状の悪化抑
制が示されている(参考文献5)。この結果を踏まえて、2023年1月16日にレカネマブの製造販売承認申請が行われ、同年1
月30日に優先審査に指定されており、近い将来発売されることが想定される。
1a

⑤ ④の根拠と
なる研究結果等

ガイドライン等での位置づけ

ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
る。)

3507

認知症疾患診療ガイドライン2017(2017年、日本神経学会)
(Minds診療ガイドライン作成の手引き2007年/2014年版準拠)
CQ6-3 Alzheimer型認知症の画像所見の特徴は何か
Alzheimer型認知症の画像所見の特徴は、①CT-MRI検査での内側
側頭葉、特に海馬の萎縮、②SPECT、FDG-PETにおける両側側頭・
頭頂葉および帯状回後部の血流や糖代謝の低下、③アミロイド
PETにおける前頭葉、後部帯状回、楔前部のアミロイド蓄積が認
められる。(エビデンスレベルA)
CQ6-6 Alzheimer型認知症の診断にアミロイドPET検査は有用か
アミロイドPET検査は、Alzheimer型認知症で約98%、軽度認知障
害 mild cognitive Impairment(MCI)は約68%、健常高齢者の
33%で陽性である。アミロイドPET陰性は非Alzheimer型認知症の
鑑別に有用である。NIA-AA基準やIWG-2 Alzheimer病先端研究診
断基準では、脳アミロイド蓄積のバイオマーカーとして必須項目
となっている。(エビデンスレベルA)
アミロイドPETイメージング剤の適正使用ガイドライン訂第2版
(2017年、日本核医学会/日本認知症学会/日本神経学会)
「臨床症状が非定型的であり、適切な治療のために確定診断を
要する認知症症例」「発症年齢が非定型的(65歳未満の発症)で
あるため、適切な治療のために確定診断を要する認知症症例のう
ち、単純CTまたはMRIで血管性認知症の可能性を否定できる症
例」に対する使用は適切とされている。「軽度認知障害
(MCI)」の患者については、有効性の確立した治療法がないこ
とを理由に推奨されないこととされているが、現在承認申請中の
DMTが承認された場合、適切な使用対象として改訂される予定で
ある。