よむ、つかう、まなぶ。
【参考資料2】精神疾患を有する患者に対する腎代替療法等に関する調査研究報告書 (75 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58633.html |
出典情報 | 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会(第7回 6/9)《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
令和6年度 障害者総合支援事業費補助金(障害者総合福祉推進事業)
精神疾患を有する患者に対する腎代替療法等に関する調査研究 報告書
精神疾患患者に透析を提供している医療機関においても、精神症状のため大声を出したり、
自傷行為や他害行為が認められたりする場合、透析実施中に安静を保てない場合などでは、
透析の実施が極めて困難となる。精神症状の悪化が認められた場合に、短期の精神病床への
入院が可能であれば、精神症状が安定した後再度通院での透析が可能となるものと考えら
れるが、現状では短期の入院であっても受け入れ先を確保することは非常に困難であるこ
とが、調査やヒアリングから示唆されている。精神科医療機関と透析医療機関との連携体制
(外来診療、往診、オンラインでの相談など)を構築することで、透析医療機関の精神疾患
患者への対応能力を向上させる取り組みや、身体合併症をもつ精神疾患患者の地域生活を
支えるための、精神科の外来・在宅診療体制の充実が求められる。
8.2.3. 腹膜透析
我が国では、腹膜透析の実施自体が他の先進諸国と比較してかなり少ないことが知られ
ている。腹膜透析は、患者自身や家族が在宅で行うことが可能な腎代替療法であり、通院が
困難な患者や精神症状が不安定な患者にとっては、血液透析に代わる有力な選択肢となり
うる。特に、精神科病床に入院している患者においては、施設内で腹膜透析を継続できる可
能性がある点で、地域移行や QOL 向上に寄与することが期待される。
一方で、本調査からは、精神科病院での腹膜透析導入にはさまざまな困難があることも示
唆された。感染管理に関する懸念、自己管理の困難さ、腹膜透析の継続的なサポート体制を
構築するためのスタッフの人員確保や教育体制の未整備などが挙げられる。さらに、腹膜透
析に必要な手技に対するスタッフ側の心理的ハードルの高さが、導入を妨げる一因となっ
ている可能性もある。手技自体は、医療系資格を持たない患者や家族でも習得可能なもので
あるが、精神科病院においては感染リスクやトラブル時の対応への懸念などから、腹膜透析
の導入に踏み切れない状況も想定される。現在受け入れが十分できていない要因を検証し
たうえで体制整備のあり方を検討し、将来的には、精神科病院においても腹膜透析が現実的
な選択肢のひとつとなることが望まれる。
8.2.4. 腎保護療法
腎機能低下を認めた場合には、腎保護療法の実施が重要である。しかし、精神疾患患者に
おいては、腎機能低下の兆候が見落とされることが多く、治療導入が遅れる傾向にあること
が懸念される。また、腎臓医との連携が困難な単科精神科病院において腎保護療法を実施す
ること自体、かなりの困難を伴うと考えられる。精神科医療機関での定期的な腎機能スクリ
ーニングを推進し、腎機能低下が疑われた場合に早期に腎臓医に紹介できる体制を構築す
ることが求められる。
74/83
精神疾患を有する患者に対する腎代替療法等に関する調査研究 報告書
精神疾患患者に透析を提供している医療機関においても、精神症状のため大声を出したり、
自傷行為や他害行為が認められたりする場合、透析実施中に安静を保てない場合などでは、
透析の実施が極めて困難となる。精神症状の悪化が認められた場合に、短期の精神病床への
入院が可能であれば、精神症状が安定した後再度通院での透析が可能となるものと考えら
れるが、現状では短期の入院であっても受け入れ先を確保することは非常に困難であるこ
とが、調査やヒアリングから示唆されている。精神科医療機関と透析医療機関との連携体制
(外来診療、往診、オンラインでの相談など)を構築することで、透析医療機関の精神疾患
患者への対応能力を向上させる取り組みや、身体合併症をもつ精神疾患患者の地域生活を
支えるための、精神科の外来・在宅診療体制の充実が求められる。
8.2.3. 腹膜透析
我が国では、腹膜透析の実施自体が他の先進諸国と比較してかなり少ないことが知られ
ている。腹膜透析は、患者自身や家族が在宅で行うことが可能な腎代替療法であり、通院が
困難な患者や精神症状が不安定な患者にとっては、血液透析に代わる有力な選択肢となり
うる。特に、精神科病床に入院している患者においては、施設内で腹膜透析を継続できる可
能性がある点で、地域移行や QOL 向上に寄与することが期待される。
一方で、本調査からは、精神科病院での腹膜透析導入にはさまざまな困難があることも示
唆された。感染管理に関する懸念、自己管理の困難さ、腹膜透析の継続的なサポート体制を
構築するためのスタッフの人員確保や教育体制の未整備などが挙げられる。さらに、腹膜透
析に必要な手技に対するスタッフ側の心理的ハードルの高さが、導入を妨げる一因となっ
ている可能性もある。手技自体は、医療系資格を持たない患者や家族でも習得可能なもので
あるが、精神科病院においては感染リスクやトラブル時の対応への懸念などから、腹膜透析
の導入に踏み切れない状況も想定される。現在受け入れが十分できていない要因を検証し
たうえで体制整備のあり方を検討し、将来的には、精神科病院においても腹膜透析が現実的
な選択肢のひとつとなることが望まれる。
8.2.4. 腎保護療法
腎機能低下を認めた場合には、腎保護療法の実施が重要である。しかし、精神疾患患者に
おいては、腎機能低下の兆候が見落とされることが多く、治療導入が遅れる傾向にあること
が懸念される。また、腎臓医との連携が困難な単科精神科病院において腎保護療法を実施す
ること自体、かなりの困難を伴うと考えられる。精神科医療機関での定期的な腎機能スクリ
ーニングを推進し、腎機能低下が疑われた場合に早期に腎臓医に紹介できる体制を構築す
ることが求められる。
74/83