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提案書19(3602頁~3801頁) (197 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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③再評価の根
拠・有効性

①肺・縦隔腫瘍:国内多施設観察研究結果では、I期例における3年生存割合は79%,、IA期83%, IB期71%であり、X線定位照射と同等の良好な成績
であった(Ohnishi K: Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2020).局所進行肺癌の化学療法併用陽子線治療では、III期で生存期間中央値30ヵ月と良
好な成績であった(Nguyen QN: Radiother Oncol,2015). III期非小細胞肺癌の化学療法併用陽子線治療を前向き試験(文献1)では、2年および5
年の全生存率、無再発生存率は、それぞれ77%(95%信頼区間64%-89%)と59%(43%-76%)、43%(28%-57%)と37%(22%-51%)であっ
た。レジストリデータ解析では陽子線治療および重粒子線治療を受けたI期肺癌425例で3年生存率78%、局所制御率96%であった。III期肺癌69例で
は3年生存率62%であった。
②消化器腫瘍: 日本の先進医療からの報告で,食道癌では心肺機能の晩期有害事象が従来のX線治療と比し陽子線治療で明らかに低減可能である
(Ishikawa H. Anticancer Res 2015,他2文献)。レジストリデータの解析で小型の原発性肝癌(腫瘍径3.5cm以下)では陽子線治療および重粒
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 子線治療を受けた425例で2年生存率82%であった。肝細胞癌に対する陽子線治療と経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)のランダム化比較試験として3cm
後等のアウトカム
以下、2個以下の再発肝細胞癌を対象として、Child-Pughスコアと病期を揃えて比較を行った。陽子線治療72例、RFA72例の2年局所無再発生存率
はそれぞれ94.8%と83.9%(90%CI 1.8-20.0; p<0.001)で3年、4年の局所無再発生存率に有意差を認めなかった。2年、3年、4年生存率でも両
群に有意差は認められなかった(文献2)。胆道癌の粒子線治療成績について2009年5月から2019年12月までの150名の多施設データ(陽子線148
例、重粒子線2例)を解析し、生存期間中央値は21ヶ月(2年生存率44.8%)であり、肝外胆道癌82名と肝内胆管癌68名ではそれぞれ20ヶ月と23ヶ
月であった(文献3)。
③少数転移性腫瘍:レジストリーデータの解析で転移性肺腫瘍では陽子線治療および重粒子線治療132例で、2年生存率77%、局所制御率83%と良
好であった。転移性肝腫瘍では陽子線治療および重粒子線治療200例で、2年生存率54%、局所制御率82%と良好であった。限局性リンパ節転移で
は陽子線治療および重粒子線治療282例で、2年生存率61%、局所制御率79%と良好であった。(文献5)。

ガイドライン等での位置づけ

④普及性の変化
※下記のように推定した根拠

年間対象者数の
変化

年間実施回数の
変化等

肺癌診療ガイドライン 2022年 日本肺癌学会 I期非小細胞肺癌の根治的放射線治療とし
て陽子線・炭素線照射を用いることが示されている。
子宮頸癌治療ガイドライン 2022年 日本婦人科腫瘍学会 リンパ節転移などの再発に対
する治療法としても陽子線治療・重粒子線治療が紹介されている。
ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す 肝癌治療ガイドライン 2021年 日本肝臓学会 粒子線治療は他の局所療法が困難な場合
の選択肢として推奨されている。
る。)
食道癌診療ガイドライン 2022年 日本食道学会 心肺機能が不良な患者に対して陽子線
による化学放射線療法が推奨されている。
小児・AYA世代の腫瘍に対する陽子線治療診療ガイドライン 2019年 小児・AYA世代の各疾患に
対して陽子線治療が推奨されている。

保険収載要望疾患の2020年7月〜2021年6月の全実施数733例であった。
2018年度改訂による保険収載分の患者数の増加は1.8倍程度で2024年度改訂後の新規保険収載による対象患者数は約1,300例と予測される。照射回
数の平均値は20回である。

見直し前の症例数(人)

733

見直し後の症例数(人)

1,300

見直し前の回数(回)

14,660

見直し後の回数(回)

26,000

⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

米国放射線腫瘍学会(ASTRO)は、“陽子線治療のモデルポリシー”を2017年に改訂し、脳および頭頸部,頭蓋底および脊椎腫瘍、肝癌、肉腫、根
治あるいは緩和目的で治療する小児腫瘍、再照射症例などに対しては、陽子線治療が医学的に必須であると結論した。英国、カナダ、デンマー
ク、オランダでもほぼ同様な基準となっている。ドイツおよび韓国では保険適応はさらに広がっている。
国内の多くの癌診療ガイドラインに粒子線治療の記載が認められるようになっており、日本放射線腫瘍学会は、先進医療実績を含めた国内外の実
施状況をシステマティックレビューとして報告し、治療方針を統一して解析した成績を報告しており、学会が認めた適応疾患について保険収載を
要望している。
国内では1983年より臨床応用が開始され、2023年2月末19施設で、保険診療および先進医療として実施されている。小児腫瘍、骨軟部腫瘍、頭頸
部腫瘍(非扁平上皮癌)、前立腺癌、大型の肝細胞癌、肝内胆管癌、膵癌、大腸癌術後再発に対して保険診療として行われているほか、先進医療
として2021年7月1日から2022年6月30日までの1年間で、1,085例(2022年に保険診療に移行した疾患も含む)。高度治療であり難易度が高いが、
陽子線治療の施設基準に合致し習熟訓練を終えた施設において十分施行可能である。

施設の要件
(標榜科、手術件数、検査や手術の体 放射線科を標榜している保険医療機関である.薬事法の承認を受けた陽子線治療装置を有する施設である.
制等)
・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

放射線治療を専ら担当する常勤の医師が2名以上配置されている.そのうち1名は、放射線治療の経験を10年以上有するとともに、陽子線治療の経
験を2年以上有する。放射線治療を専ら担当する常勤の診療放射線技師が配置されている.放射線治療における機器の精度管理、照射計画の検
証、照射計画補助作業等を専ら担当する者(診療放射線技師その他の技術者等)が1名以上配置されている。
人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門 当該治療を行うために必要な次に挙げる機器・施設を備えている.粒子線治療装置、治療計画用CT装置、粒子線治療計画システム、照射中心に対
する患者の動きや体内移動を制限する装置、微少容量電離箱線量計又は半導体線量計(ダイヤモンド線量計を含む)及び併用する水ファントム又
性や経験年数等)
は水等価固定ファントム。
当該治療に用いる医療機器について、適切に保守管理がなされている.陽子線治療の実績を10例以上有している。
その他
放射線治療計画ガイドライン(日本放射線腫瘍学会編)、肝癌診療ガイドライン、膵癌診療ガイドライン、食道癌診療ガンドライン、肺癌診療ガ
(遵守すべきガイドライン等その他の イドライン、脳腫瘍診療ガイドライン、小児・AYA世代の腫瘍に対する陽子線治療診療ガイドラインなど
要件)

⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

①肺・縦隔腫瘍:早期肺癌682例中Grade3以上の放射線肺臓炎は12例(1.8%)と高い安全性が示された(Ohnishi: Int J Radiat Oncol Biol Phys,
2020).放射線治療の禁忌とされる間質性肺炎合併限局性肺癌16例に対し、放射線肺臓炎による死亡例1例を含め放射線肺臓炎は3例に発生したが2
年全生存割合は44%であり、リスクはあるものの治療選択肢になることが示された(Ono T, Radiat Oncol,2016).III期非小細胞肺癌の化学療法併
用陽子線治療を前向き試験(文献1)ではグレード3以上の放射線肺臓炎は観察されなかった。
②消化器腫瘍:肝癌の粒子線治療のSystematic Reviewの結果(Igaki H: Int J Clin Oncol 2017)では、Grade 3以上の晩期有害事象の発生率は
2.3% (18/ 787)と低く、Qiらのmeta-analysis(Radioth Oncol 2015)でも0.4%と報告されている.また肝動脈化学塞栓療法(TACE)と陽子線治療の
第Ⅲ相試験で在院日数が陽子線群で有意に短かかった.直径6.3cm以上の肝腫瘍ではIMRTの放射線誘発肝障害発生リスクが94.5%,陽子線治療では
6.2%に留まるとの結果が報告されている(Toramatsu C: Radiat Oncol.2013).食道癌では強度変調放射線治療(IMRT)と陽子線治療のランダム化
試験で、全生存割合は同等であったが、有害事象発生割合がIMRTの方が陽子線に比して2.3倍と有意に高かったため早期終了となった(文献4).
レジストリデータの解析で小型の原発性肝癌(腫瘍径3.5cm以下)では陽子線治療および重粒子線治療を受けた425例で2年生存率82%であった。胆
道癌の粒子線治療成績について2009年5月から2019年12月までの150名の多施設データ(陽子線148例、重粒子線2例)を解析し急性毒性および晩期
毒性グレード3以上はそれぞれ2.2%および2.7%であった(文献3)。
③少数転移性腫瘍:レジストリーデータの解析で転移性肺腫瘍では陽子線治療および重粒子線治療132例で、2年生存率77%、局所制御率83%と良
好であった。転移性肝腫瘍では陽子線治療および重粒子線治療200例で、2年生存率54%、局所制御率82%と良好であった。限局性リンパ節転移で
は陽子線治療および重粒子線治療282例で、2年生存率61%、局所制御率79%と良好であった。(文献5)。
④AYA世代の腫瘍性疾患:通常のX線と比較して病巣に集中しつつ正常組織への線量の低減を図ることが可能であることから、晩期有害事象の発症
リスクや二次がん発症リスクを低減できると報告されている(小児・AYA世代の腫瘍に対する陽子線治療診療ガイドライン 2019年版)。

⑦倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)

問題なし

⑧点数等見直し
の場合

見直し前

該当なし

見直し後

該当なし

その根拠

点数の見直しはなし

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