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令和4年版 消防白書 (153 ページ)

公開元URL https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/items/r4_all.pdf
出典情報 令和4年版 消防白書(1/23)《総務省 消防庁》
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2章



消防防災の組織と活動

このほか、全国救急隊員シンポジウムや日本臨床

れの実施に関する基準の策定を通じて地域の救急搬

救急医学会等の研修の機会を通じて、救急隊員の全

送・救急医療リソースの適切な運用を図る役割」へ

国的な交流の促進や、救急活動に必要な知識・技能

と拡大し、さらに「地域包括ケアにおける医療・介

の向上が図られている。

護の連携において、消防救急・救急医療として協働
する役割」も視野に入れるなど、各地域の実情に即

(2)救急救命士の処置範囲の拡大
救急救命士が医師の具体的な指示を受けて行う

した多様なものへと発展している。
「令和2年度救急業務のあり方に関する検討会」

救急救命処置(特定行為)は、平成3年(1991 年)

においては、こうしたメディカルコントロール体制

の制度創設当時は、
半自動式除細動器による除細動、

の現状の課題と解決策を検討し、
検討結果をもとに、

乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液、

関係機関が緊密に連携してメディカルコントロール

食道閉鎖式エアウェイ又はラリンゲアルマスクによ

体制の一層の充実強化に努めることや、客観的な評

る気道確保のみとされていたが、厚生労働省におい

価指標を用いて、PDCA サイクルを通じた継続的な

て順次拡大されてきた。

体制の構築・改善を図ること等について、消防庁よ

令和4年4月1日現在、救急救命士の資格を有す

り「救急業務におけるメディカルコントロール体制

る救急隊員のうち、拡大された処置範囲で気管挿管

の更なる充実強化について」
(令和3年3月 26 日付

を実施できる者は 1 万 5,977 人(そのうちビデオ硬

け通知)を発出した。また、
「令和3年度救急業務

性挿管用喉頭鏡を使用できる者は 7,575 人)
、薬剤

のあり方に関する検討会」においては、通知後にお

投与(アドレナリン)を実施できる者は 2 万 8,827

ける各地域の評価指標の活用状況や先進的な取組事

人、心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確

例を把握することを通じて、PDCA サイクルの取組

保及び輸液を実施できる者は 2 万 7,535 人、血糖測

の更なる推進や、評価指標の充実等に向けて、引き

定及び低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与を実

続きの検討を行ったところである。

施できる者は 2 万 7,554 人となっている。

昨今のメディカルコントロール協議会に求められ
る役割の多様化に関しては、
「傷病者の意思に沿っ

(3)メディカルコントロール体制の充実

た救急現場における心肺蘇生」といった観点からも

救急業務におけるメディカルコントロール体制と

伺うことができる。高齢者の救急要請が増加する

は、医学的観点から救急救命士を含む救急隊員が行

中、救急隊が傷病者の家族等から傷病者本人は心肺

う応急処置等の質を保障する仕組みをいう。具体的

蘇生を望んでいないと伝えられ、心肺蘇生の中止を

には、消防機関と医療機関との連携によって、①医

求められる事案が生じている。こういった背景を踏

学的根拠に基づく、地域の特性に応じた各種プロト

まえ、
「平成 30 年度救急業務のあり方に関する検討

コルを作成し、②救急隊が救急現場等から常時、迅

会」の検討部会において、有識者から救急現場等で

速に医師に指示、指導・助言を要請することがで

傷病者の家族等から、傷病者本人は心肺蘇生を望ん

き、③実施した救急活動について、医師により医学

でいないと伝えられる事案について、
「本人の生き

的・客観的な事後検証が行われるとともに、④その

方・逝き方は尊重されていくもの」という基本認識

結果がフィードバックされること等を通じて、救急

が示された。そして、救急現場等は、千差万別な状

救命士を含む救急隊員の再教育等が行われる体制を

況であることに加え、緊急の場面であり、多くの場

いう。消防機関と医療機関等との協議の場であるメ

合医師の臨場はなく、通常救急隊には事前に傷病者

ディカルコントロール協議会は、都道府県単位及び

の意思は共有されていないなど時間や情報に制約が

地域単位で設置されており、
令和4年8月1日現在、

あるため、今後、事案の実態を明らかにしていくと

全国に 47 の都道府県メディカルコントロール協議

ともに、各地での検証を通じた事案の集積による救

会及び 250 の地域メディカルコントロール協議会

急隊の対応についての知見の蓄積が必要であると結

が設置されている。救急業務におけるメディカルコ

論付けた。

ントロール体制の役割は、当該体制の基本であり土

これらの検討結果について、

「平成 30 年度救急

台である「救急救命士等の観察・処置を医学的観点

業務のあり方に関する検討会傷病者の意思に沿った

から保障する役割」から、
「傷病者の搬送及び受入

救急現場における心肺蘇生の実施に関する検討部

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