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提案書17(3200頁~3401頁) (189 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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【評価項目】

①再評価すべき具体的な内容
(根拠や有効性等について記載)

乳腺炎の重症化もしくは急な膿瘍形成により、乳腺膿瘍切開術が行われた場合、現行の乳腺炎重症化予防ケア・指導料の適応範囲である分娩1
回につき4回に限り算定可能という条件では、切開術実施患者の診療実日数13.2日をカバーできない。また、既に本診療報酬が算定済みの場合に
おいて、再発または急激に膿瘍が形成された時には、診療報酬算定による十分な指導管理が受けられないのが現状である。他方、乳腺膿瘍切開術
に伴う入院加療した場合の治療期間は7.09〜7.20日(Long T, Ning Z,et al, 2022)との報告もあり、より適切で十分なケアが行われれば、治療
期間は半分程度に短縮され、早期の治癒が見込まれるとともに母乳育児中断リスクが低減されると考える。
乳腺炎ケアガイドライン2020に基づくと、乳腺膿瘍切開術施行症例には、一連の乳腺炎重症化予防ケア・指導に加えて以下のケア・指導が必要
となる。
①切開創の感染予防管理(母親に対するセルフケアの指導も含む)
②排膿・漏出乳汁状況の観察および排膿を促進するケア
③切開創の治癒促進のケア
④服薬管理(アドヒーランス、耐性菌等を考慮した薬剤効果の確認)
⑤患側の乳汁分泌低下を回復させるためのケア
⑥切開創を避けた直接授乳指導
⑦哺乳を拒否する児へのケア
⑧母親のメンタルヘルスの不調や家族調整等
⑨切開排膿に対する心身の苦痛や困難
⑩再発に対する予期的恐怖や不安や育児困難への支援や、動揺し葛藤する母親の授乳継続/断乳への共有意思決定支援とそれに伴うケア
当該患者へのこれらの管理指導を確実かつ効果的に実施するためには、乳腺膿瘍切開術が実施された場合は、新たに当該切開術施行日から起算す
る。乳腺炎重症化予防ケア・指導料の算出が必要である。本医療技術は乳腺炎の重症化予防に効果を発揮していることから、現在の乳腺膿瘍切開
術後患者の約13日の実診療日数の減少にも有効と考える。
医療技術の質の担保のために、乳腺炎重症化予防ケア・指導内容および記録の記載は、乳腺炎ケアガイドライン2020に準拠したものとする。

②現在の診療報酬上の取扱い
・対象とする患者
・医療技術の内容
・点数や算定の留意事項

対象とする患者:乳腺炎患者であり、1分娩につき初回500点、2回目以降4回目まで150点の算出
点数:初回500点、2回目以降150点
医療技術の内容:医師がケア及び指導の必要性があると認めた場合で、乳腺炎の重症化及び再発予防に係る指導並びに乳房に係る疾患を有する患
者の診療について経験を有する医師又は乳腺炎及び母乳育児に関するケア・指導に係る経験を有する助産師が、当該患者に対して乳房のマッサー
ジや搾乳等の乳腺炎に係るケア、授乳や生活に関する指導、心理的支援等の乳腺炎の早期回復、重症化及び再発予防に向けた包括的なケア及び指
導を行った場合に、分娩 1 回につき 4 回に限り算定する。
乳腺膿瘍切開術を行った場合には、創傷ケアおよびドレナージ促進ケア、より困難な授乳の支援及び母子への高度な健康管理が加わるため、分娩
1回につき、膿瘍切開術を施行した時点から、初回500点、2〜8回目まで200点の算出が妥当と考える。
当該ケア及び指導を実施する医師又は助産師は、包括的なケア及び指導に関する計画を作成し計画に基づき実施するとともに、実施した内容を診
療録等に記載する。


診療報酬区分(再掲)
診療報酬番号(再掲)

001 29

医療技術名

乳腺炎重症化予防ケア・指導料
母乳育児は、母子の心身の健康や家族、社会に対して経済効果を含む多くの利益を提供している。乳腺炎は母乳育児中断の主な理由の一つに挙げ
られ、母乳育児中断はそれらの利益の損失につながる。乳腺炎重症化予防初回指導料の算定の有無でそれぞれ2.8日、3.6日であり、診療報酬の算
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 定により、適切なケアを受け、早期に乳腺炎が治癒し母乳育児中断のリスクが避けられている。
後等のアウトカム
また、乳腺炎の病名が記載されたレセプトの診療日日数は、全患者で3.4日、乳腺膿瘍切開術を算定した患者は13.2日であり、診療報酬の算定が

③再評価の根
拠・有効性

促進されることにより、K472乳腺膿瘍切開術[980点]の算定後の相対的な受診日数の減少が見込まれる。

ガイドライン等での位置づけ

④普及性の変化
※下記のように推定した根拠

年間対象者数の
変化

年間実施回数の
変化等

令和4(2022)年の出生数約800,000人のうち、生後1か月で、96.5%の乳児は混合または母乳栄養で育てられているため、出産したほぼ全ての女性
が母乳育児を行なっていると考える。海外における乳腺炎の発症率約30%(Scott,JA.,et al.,2008)から、乳腺炎症例数は約240,000人となる。
2019年10〜2020年9月のJMDCレセプトデータでは、14〜59歳女性で乳腺炎と診断された者は13,500人であり、JMDCレセプトデータは当時の人口の
約5%をカバーしていることから、乳腺炎症例数は270,000人と推計され、当時の出生数に対する乳腺炎の発症率は30%程度であり、海外の文献と
乳腺炎の発症率の差がない。そこから約10%が膿瘍形成もしくは膿瘍形成患者となるため、24,000人が新たな算定の対象となる。

見直し前の症例数(人)

24,000

見直し後の症例数(人)

24,000

見直し前の回数(回)

4回

見直し後の回数(回)

8回(膿瘍切開術後)

⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

「乳腺炎ケアガイドライン2020」のフローチャートでは、各状態別にケア・指導の内容が
ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
明記されていて、状態ごとに重症化を最小限にする方策が明らかにされている。乳腺膿瘍
る。)
形成事例についても、具体的なケア内容が明らかにされている。

・日本助産師会、全国助産師教育協議会、日本助産学会、日本助産評価機構、日本看護協会が導入した助産実践能力習熟度段階レベルⅢ以上の能
力を有した、日本助産評価機構が認証するアドバンス助産師が行う。
・加えて、施設において助産師外来、母乳相談室等を自立して実施できる能力を有する助産師

施設の要件
(標榜科、手術件数、検査や手術の体
制等)

【産科医療機関】病院、診療所:分娩取扱施設 母乳外来(相談室)を併設している。
【訪問看護ステーション】助産所併設ステーション等も含む。いずれも、乳腺外科医との連携が取れる体制がある。

人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門
性や経験年数等)

助産実践能力習熟度段階レベルⅢ(アドバンス助産師)の助産師数9,032人(2023.1現在)1都道府県あたり192.1名、全国の産科施設(病院・診
療所)5,074施設(2020年現在)から算定し、1産科施設につき1.8人、の適格助産師を配置することができている。

その他
(遵守すべきガイドライン等その他の
要件)

乳腺炎ケアガイドライン2020(日本助産師会・日本助産学会)

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