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資料2 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (97 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19809.html
出典情報 「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を公表します(7/16)《厚生労働省》
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していく。さらに経過中に突然死をきたすこともある。このように心不全は
ステージCからステージD(治療抵抗性心不全ステージ)へと直線的に増悪
する経過をとるのではなく、かつそのような経過の予測がきわめて困難であ
ることが重要な点である。
急性心不全を呈すると、左室拡張末期圧や左房圧の上昇に伴う肺静脈のう
っ血(急性心原性肺水腫)、右房圧の上昇に伴う体静脈のうっ血(全身的な体
液貯留)、心拍出量減少に伴う意識障害等(低灌流)の症状が認められる。多
くの患者はうっ血を主訴に入院する。治療としては、まず、循環動態と呼吸
状態の安定化を図り、急性心原性肺水腫等の病態に応じた処置を行う。状態
が安定した患者には原因疾患に対する治療を行い、慢性期に向けて心不全治
療薬の開始、増量、心臓リハビリテーションの実施を行う。退院後も、慢性
心不全患者として、外来管理を継続する。
予後については、JROAD2015 における心不全患者の院内死亡率は約8%と報
告されている。また、心不全患者の 1 年死亡率(全死亡)は JCARE-CARD、
CHART-1 ともに 7.3%、JCARE-CARD における心不全増悪による再入院率は、退
院後6か月以内で 27%、1年後では 35%であり、心不全は再入院率が高いこ
とがわかる。ただし、心不全患者の3年以内の心不全増悪による再入院率は、
CHART-1研究の 30%から CHART-2研究の 17%へと改善、総死亡率は CHART1研究の 24%から CHART-2研究の 15%へ改善を認めたというデータがあり、
わが国の心不全の予後は改善してきている可能性がある83。

(6) 大動脈解離84
ア 概要
大動脈解離(aortic dissection)とは「内膜の裂孔(エントリー)からの
血液流入で大動脈壁が中膜のレベルで2層に剥離し、大動脈の走行に沿って
ある長さをもち2腔になった状態」で、大動脈壁内に血流又は血腫(血流の
ある型がほとんどであるが、血流のない=血栓化した型もある。)が存在し、
急性期にはその状態は変化する動的な病態である。大動脈解離は本来の大動
脈内腔(真腔)と新たに生じた壁内腔(偽腔)からなり、両者は剥離した解
離フラップ(内膜と中膜の一部からなる隔壁)により隔てられる。
本症は瘤化を認めないことも多く、通常は「大動脈解離」と称する。「解離

83

日本循環器学会ら. 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017 年改訂版). 2018; 14

84

日本循環器学会ら. 2020 年改訂版

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン. 2020; 16

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