資料2 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (112 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19809.html |
出典情報 | 「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を公表します(7/16)《厚生労働省》 |
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糖尿病は、動脈硬化性疾患の重要な危険因子である。
NIPPON DATA80 では、糖尿病患者の冠動脈疾患死亡リスクは 2.8 と有意
に高く、久山町研究では、年齢、性など多因子調整後の冠動脈疾患発症
率は健常者 1.6/1,000 人年に対して 5.0/1,000 人年、脳梗塞発症率は健常
者 1.9/1,000 人年に対して 6.5/1,000 人年といずれも高率である。
糖尿病患者に合併した冠動脈疾患は無痛性心筋虚血が多く、診断の遅
れにつながるため注意が必要である。糖尿病患者の冠動脈病変の特徴と
しては、①多枝病変、②病変が高度でびまん性、③石灰化病変が多い、
などが挙げられる。
心血管疾患のリスクは、糖尿病発症前の耐糖能異常(IGT)の時期から
高まる。久山町研究では、IGT 患者の冠動脈性疾患発症リスクは正常者の
1.9 倍と糖尿病の 2.6 倍には及ばないが高い傾向にある。
JPHC 研究では虚血性心疾患の発症リスクは、境界型群で 1.65 倍、糖尿
病群で 3.05 倍と糖尿病発症前からの上昇が認められた。IGT では空腹時
血糖値より糖負荷後2時間血糖値が心血管疾患リスクと強く関連し、食
後高血糖の動脈硬化促進因子としての意義が注目されている。
一般に女性の動脈硬化性疾患発症リスクは男性より低いが、糖尿病患
者では男性に比べ女性の発症率増加が高く、性差が減少すると報告され
ている。また、男性では耐糖能正常群に比べ糖尿病群の冠動脈疾患発症
リスクが 41~61 歳では2~3倍高率であるのに対し、31~40 歳では約 17
倍とはるかに高いことが報告され、若年男性では中年男性に比べ冠動脈
性疾患に及ぼす糖尿病の影響がより大きいことが示唆された。
(ウ) 脂質異常症(高脂血症)112
フラミンガム研究をはじめ、欧米で行われた多くの疫学調査の結果と
同様に日本人を対象とするコホート研究においても LDL コレステロール
(LDL-C)の上昇に伴い冠動脈疾患の発症や死亡に対するハザード比は上
昇することが確認されている。
CIRCS では、LDL-C80mg/dL 未満の群に対し 80~99mg/dL の群では 1.4
倍、100~119mg/dL では 1.7 倍、120~139mg/dL では 2.2 倍、140mg/dL 以
上の群では 2.8 倍とリスクが増加することが示された。
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日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017 年版. 2017; 31
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日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017 年版. 2017; 23-25
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