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08参考資料1 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンファクトシート追補版 (7 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63875.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第31回 9/25)《厚生労働省》 |
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口蓋下面、口蓋垂)
、後壁(咽頭後壁)に分類され、頭頸部における HPV 関連がんの発症部位の多くは
中咽頭部で、特に扁桃と舌根に多い。中咽頭部周辺における HPV 関連がんの分子動態は不明であり、口
腔の HPV 関連がんが中咽頭部に多く発症する理由は未解明であるが、以下のような説明が考えられてい
る。
1)子宮頸部と同様に、扁桃は移行粘膜(transitional mucosa)を持ち、HPV が基底細胞に到達しやすい。
2)基底膜が不連続である。
3)扁桃や舌根には陰窩(crypt)と呼ばれるくぼみがあり、このくぼみにより HPV への感受性が高くなる
可能性がある。
4)リンパ組織である扁桃では、HPV に対する T 細胞応答を抑制する PD-L1 が発現し、免疫システム
から逃れることができるため、HPV の持続感染が成立する(11)。
また、中咽頭部がんでは前がん病変が同定されていないが、これは中咽頭部の側壁のサンプリングが困
難であることに起因すると考えられている。
HPV 関連の頭頸部がんと、HPV 非関連の頭頸部がんでは、遺伝子発現や LOH の様相に違いがみられ
る。HPV 関連がんでは、
HPV 非関連の頭頸部がんで高発現する EGFR タンパク質が低発現 (12)であり、
LOH が生じる箇所も少ないとされている。HPV 非関連がんでは 3p(3 番染色体の短腕), 9p, 12p, 18q
(18 番染色体の長腕)に LOH が見られるが、HPV 関連中咽頭がんでは 16q の LOH が高頻度に確認さ
れている (13)。このような報告から、子宮頸がんとは異なる自然史の存在が示唆される。
がんの進行の程度を示すステージ(病期)は、National Comprehensive Cancer Network (NCCN). Head
and Neck Cancers ガイドライン(14)において TNM 分類で分類されるが、中咽頭がんでは、HPV 感染に
伴い高発現する p16 タンパク質の状態で TNM 分類が定められており、p16 発現の有無で治療方針が層
別されている。そのため、中咽頭がん患者においても HPV 感染の診断は必須である。
③生殖器がん
HPV 関連の生殖器がんで代表されるのは女性特有の子宮頸がんであるが、そのほかにも腟がん、外陰
がん、陰茎がんなどの生殖器がんが HPV を原因に発症することがわかっている。腟がんや外陰がんは子
宮頸がんと同様に女性特有のがんで、どちらのがんもほとんどが扁平上皮に発生する。腟がんの原因につ
いてははっきりわかっていないが、腟がんの大半が HPV16 型陽性である (15) ことがわかっている。ま
た、外陰がんでも HPV16 型が最も多く報告されている。
陰茎がんは男性特有のがんで、年齢、喫煙、包茎、HPV 感染など、さまざまなリスク因子が知られて
いる。陰茎がんでもほとんどが扁平上皮がんである。陰茎がんのうち約 31%は HPV16 型、18 型に関連
している(16) ことがわかっている。また、外陰がんでも HPV16 型が最も多く報告(17) (18)されている。
しかし、これらの生殖器がんの感染や発がんの自然史は解明されていない部分が多い。
④異性間感染と集団免疫効果
女性における HPV 感染の主な感染経路は男性パートナーとの性交渉である。一部の性感染症では、性
交渉によりピンポン感染(
(お互いにうつしたりうつされたりを繰り返すこと)が成立することがあるが、
HPV におけるピンポン感染の有無は学術的に証明されておらず、詳細はわかっていない。しかし、HPV
に感染している女性の男性パートナーにおける HPV 陽性率は約 50%と高く(19)、その遺伝子型一致率
は 60%を超えるという報告(20)もあり、女性から男性への異性間感染にも大きな注意を払う必要がある
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、後壁(咽頭後壁)に分類され、頭頸部における HPV 関連がんの発症部位の多くは
中咽頭部で、特に扁桃と舌根に多い。中咽頭部周辺における HPV 関連がんの分子動態は不明であり、口
腔の HPV 関連がんが中咽頭部に多く発症する理由は未解明であるが、以下のような説明が考えられてい
る。
1)子宮頸部と同様に、扁桃は移行粘膜(transitional mucosa)を持ち、HPV が基底細胞に到達しやすい。
2)基底膜が不連続である。
3)扁桃や舌根には陰窩(crypt)と呼ばれるくぼみがあり、このくぼみにより HPV への感受性が高くなる
可能性がある。
4)リンパ組織である扁桃では、HPV に対する T 細胞応答を抑制する PD-L1 が発現し、免疫システム
から逃れることができるため、HPV の持続感染が成立する(11)。
また、中咽頭部がんでは前がん病変が同定されていないが、これは中咽頭部の側壁のサンプリングが困
難であることに起因すると考えられている。
HPV 関連の頭頸部がんと、HPV 非関連の頭頸部がんでは、遺伝子発現や LOH の様相に違いがみられ
る。HPV 関連がんでは、
HPV 非関連の頭頸部がんで高発現する EGFR タンパク質が低発現 (12)であり、
LOH が生じる箇所も少ないとされている。HPV 非関連がんでは 3p(3 番染色体の短腕), 9p, 12p, 18q
(18 番染色体の長腕)に LOH が見られるが、HPV 関連中咽頭がんでは 16q の LOH が高頻度に確認さ
れている (13)。このような報告から、子宮頸がんとは異なる自然史の存在が示唆される。
がんの進行の程度を示すステージ(病期)は、National Comprehensive Cancer Network (NCCN). Head
and Neck Cancers ガイドライン(14)において TNM 分類で分類されるが、中咽頭がんでは、HPV 感染に
伴い高発現する p16 タンパク質の状態で TNM 分類が定められており、p16 発現の有無で治療方針が層
別されている。そのため、中咽頭がん患者においても HPV 感染の診断は必須である。
③生殖器がん
HPV 関連の生殖器がんで代表されるのは女性特有の子宮頸がんであるが、そのほかにも腟がん、外陰
がん、陰茎がんなどの生殖器がんが HPV を原因に発症することがわかっている。腟がんや外陰がんは子
宮頸がんと同様に女性特有のがんで、どちらのがんもほとんどが扁平上皮に発生する。腟がんの原因につ
いてははっきりわかっていないが、腟がんの大半が HPV16 型陽性である (15) ことがわかっている。ま
た、外陰がんでも HPV16 型が最も多く報告されている。
陰茎がんは男性特有のがんで、年齢、喫煙、包茎、HPV 感染など、さまざまなリスク因子が知られて
いる。陰茎がんでもほとんどが扁平上皮がんである。陰茎がんのうち約 31%は HPV16 型、18 型に関連
している(16) ことがわかっている。また、外陰がんでも HPV16 型が最も多く報告(17) (18)されている。
しかし、これらの生殖器がんの感染や発がんの自然史は解明されていない部分が多い。
④異性間感染と集団免疫効果
女性における HPV 感染の主な感染経路は男性パートナーとの性交渉である。一部の性感染症では、性
交渉によりピンポン感染(
(お互いにうつしたりうつされたりを繰り返すこと)が成立することがあるが、
HPV におけるピンポン感染の有無は学術的に証明されておらず、詳細はわかっていない。しかし、HPV
に感染している女性の男性パートナーにおける HPV 陽性率は約 50%と高く(19)、その遺伝子型一致率
は 60%を超えるという報告(20)もあり、女性から男性への異性間感染にも大きな注意を払う必要がある
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