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08参考資料1 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンファクトシート追補版 (6 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63875.html
出典情報 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第31回 9/25)《厚生労働省》
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第 1 章 対象疾患の基本的知見
1.1 疾患の特性
①肛門がん
肛門がんは高リスク型ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV) HPV16、18 型)の持続
感染と関連し(1)、HPV 感染により男女ともに発症リスクのある疾患である。肛門がんにおいても子宮頸
がんと類似し、腺がんや扁平上皮がんなどの組織型が存在する。肛門がんの代表的な組織型である肛門扁
平上皮がんは、約 90%が HPV 感染に関連している。また、HPV 陽性の肛門がんのうちの約 90%からは
HPV16 型が検出され、ワクチンで予防できる可能性が高い(2) (3) 。
肛門がんは、かつては男性同性愛者に特有のがんと考えられていた。しかし、1998 年 1 月から 2017 年
12 月の間に肛門がんの治療を受けた HIV 陰性の 372 名の患者を対象とした 20 年間のアメリカのコホー
ト研究では、女性の発症率は男性を上回っており(比率:2.51)
、特に女性で患者数の増加が認められて
いる(4)。
HPV ゲノムの宿主染色体への組込みは、子宮頸がんをはじめとした HPV 関連がんの大きな特徴であ
り、疾患の進行とも関連する。しかし、HPV ゲノムの組込みは HPV 関連がんに普遍的なものではない
と考えられている。子宮頸がんでは、病変部位の検体の約 80%に HPV ゲノムの染色体への組込みが確
認されている。一方で、肛門がんでは HPV ゲノムの組込みの割合はわかっていない(5)。The Cancer
Genome Atlas Research Network の報告によると、肛門がんの 80%で宿主染色体へ HPV ゲノムが組込ま
れる。しかし、これらの病変部位の検体は同時に染色体外の HPV ゲノムを含んでいることも明らかにな
っており、子宮頸がんとは異なる自然史が存在していることが示唆される。
喫煙や免疫抑制などあらゆるリスク因子により発症する肛門がんに共通した腫瘍発生のメカニズムは、
染色体のヘテロ接合性消失(loss of heterozygosity: LOH)によるがん抑制遺伝子の不活性化であることが
判明している (6)。HPV 関連の肛門扁平上皮がんでは、11q23(11 番染色体 長腕の領域 1 の 3 番目の
縞)での LOH が最もよく観察される染色体異常であり、肛門がんの発症における HPV の役割に関連す
ると考えられる (7)。そのほかの肛門がんの発がんの自然史の詳細は、子宮頸がんと比較して解明されて
いない部分が多い。
肛門がん患者の治療においても、HPV 感染の有無は重要である。肛門がん患者において、サイクリン
依存性キナーゼ阻害因子 p16 タンパク質陽性であれば、全生存期間(Overall Survival: OS) の改善の予後
因子になることが示唆されている。p16 タンパク質と HPV 感染との関連は、肛門がんだけでなく子宮頸
がんや後述の中咽頭部周辺のがんでも明らかになっている。通常の細胞では、p16 の発現が高い細胞は増
殖を停止するが、HPV 感染細胞では HPV の E7 タンパク質の働きにより p16 が高発現のまま細胞増殖
する。このため、p16 の高発現は HPV の E7 タンパク質の高発現を意味し、良い HPV 感染マーカーと
なる。HPV 関連肛門がんと HPV 非関連肛門がんでは治療方法が異なり、肛門がん患者に対する HPV 感
染の診断は必須である(4)。


頭頸部がん
鼻、口腔、咽頭などの頭頸部に発症する頭頸部がんは、喫煙や飲酒が主な原因であると考えられてきた

が、2007 年に D’Souza らが HPV と中咽頭部周辺のがんの関連を報告し(8)、これ以降も複数の報告があ
る。HPV 関連の中咽頭部周辺のがんは、その約 90%が HPV16 型を原因とし、ワクチンで予防できる可
能性がある(9) (10)。中咽頭部は、側壁(扁桃・口蓋弓・舌扁桃溝)
、前壁(舌根、咽頭蓋谷)
、上壁(軟
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