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05資料2-1森野委員提出資料(RSウイルス母子免疫ワクチンと抗体製剤ファクトシート) (4 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64997.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第32回 10/22)《厚生労働省》 |
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要 約
疾患の特性
Respiratory syncytial virus(RSV)感染症は、軽症の上気道炎から、細気管支炎や肺炎といった下気道炎
まで多様な症状を呈する。特に低月齢児では重症化しやすく、無呼吸発作を契機に診断されることもあ
る。飛沫接触感染によって伝播し、乳幼児への感染は家庭内感染が主な感染経路と報告されている。なか
でも幼児や学童から乳児への伝播が多く、無症候性キャリアからの感染例も報告されている。特異的な抗
ウイルス薬は存在せず、治療の基本は対症療法であり、ルーチンでの抗菌薬や β2 刺激薬の使用は推奨
されない。まれではあるものの脳症や心筋炎の報告もあり、長期的には反復性喘鳴のリスクもあるとされ
る。症状は非特異的で、他のウイルス感染症や喘息、心疾患などとの鑑別が重要であり、流行状況やウイ
ルス検査を踏まえた診断が必要である。
ウイルスの特徴
RSV は、非分節型一本鎖マイナス鎖 RNA ウイルスであり、小児や高齢者に重篤な呼吸器症状を引き起
こす。感染初期におけるウイルスの細胞侵入には、F タンパク質の構造的変化が不可欠であり、ウイルス
膜と宿主細胞膜の融合を誘導することで感染が成立する。F タンパク質は三量体を形成し、融合前型構造
において中和エピトープ(site Ø, site V など)が露出する。これらのエピトープは膜融合後に不可逆的に隠
蔽されるため、中和抗体の誘導には融合前型に特異的な抗原構造の安定化が極めて重要である。RSV は
G タンパク質を介して宿主受容体に結合するが、変異の頻度が高く免疫逃避に寄与する一方、F タンパク
質は構造的に保存されており、ワクチンおよび抗体製剤の標的として高い適性を持つ。これらのウイルス
学的特性の解明により、RSV に対する精密な免疫介入戦略の構築が可能となり、近年のワクチン・抗体
製剤の開発成功に繋がっている。
検査法
RSV の検査法には、抗原検査、遺伝子検査、ウイルス分離法、血清学的検査がある。臨床では迅速抗
原検出キットが広く使われており、特に F タンパク質を標的としたイムノクロマト法が主流である。小
児では感度が高いが、成人ではウイルス量や排泄期間の影響で感度が低く、PCR 法が推奨される。
FilmArray®などの遺伝子検査機器により、RSV を含む複数の病原体の同時検出が可能となったが、使用
には一定の条件がある。ウイルス分離法は HEp-2 細胞などを用いて行うが、手間と時間がかかり現在は
主に研究用途に限定される。血清学的検査には中和抗体反応や補体結合反応があるが、乳児の抗体価上昇
が不十分であること、診断に時間を要することから、臨床での有用性は低い。現場では迅速性と感度を兼
ね備えた抗原検査、遺伝子検査が用いられている。
疫学状況
国内の RSV 感染症は感染症発生動向調査において 5 類感染症定点把握疾患に分類され、医師が症状や
所見から RSV 感染症を疑い、かつ検査によって診断された症例数が報告の対象となる。新型コロナウイ
ルス感染症パンデミック後、RSV 感染症の流行動態は大きく変化した。2020 年の報告数は大きく減少、
2021 年以降のピークの時期や報告数は変動を認めた。2024 年は明確なピークが認められず、一定の流行
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疾患の特性
Respiratory syncytial virus(RSV)感染症は、軽症の上気道炎から、細気管支炎や肺炎といった下気道炎
まで多様な症状を呈する。特に低月齢児では重症化しやすく、無呼吸発作を契機に診断されることもあ
る。飛沫接触感染によって伝播し、乳幼児への感染は家庭内感染が主な感染経路と報告されている。なか
でも幼児や学童から乳児への伝播が多く、無症候性キャリアからの感染例も報告されている。特異的な抗
ウイルス薬は存在せず、治療の基本は対症療法であり、ルーチンでの抗菌薬や β2 刺激薬の使用は推奨
されない。まれではあるものの脳症や心筋炎の報告もあり、長期的には反復性喘鳴のリスクもあるとされ
る。症状は非特異的で、他のウイルス感染症や喘息、心疾患などとの鑑別が重要であり、流行状況やウイ
ルス検査を踏まえた診断が必要である。
ウイルスの特徴
RSV は、非分節型一本鎖マイナス鎖 RNA ウイルスであり、小児や高齢者に重篤な呼吸器症状を引き起
こす。感染初期におけるウイルスの細胞侵入には、F タンパク質の構造的変化が不可欠であり、ウイルス
膜と宿主細胞膜の融合を誘導することで感染が成立する。F タンパク質は三量体を形成し、融合前型構造
において中和エピトープ(site Ø, site V など)が露出する。これらのエピトープは膜融合後に不可逆的に隠
蔽されるため、中和抗体の誘導には融合前型に特異的な抗原構造の安定化が極めて重要である。RSV は
G タンパク質を介して宿主受容体に結合するが、変異の頻度が高く免疫逃避に寄与する一方、F タンパク
質は構造的に保存されており、ワクチンおよび抗体製剤の標的として高い適性を持つ。これらのウイルス
学的特性の解明により、RSV に対する精密な免疫介入戦略の構築が可能となり、近年のワクチン・抗体
製剤の開発成功に繋がっている。
検査法
RSV の検査法には、抗原検査、遺伝子検査、ウイルス分離法、血清学的検査がある。臨床では迅速抗
原検出キットが広く使われており、特に F タンパク質を標的としたイムノクロマト法が主流である。小
児では感度が高いが、成人ではウイルス量や排泄期間の影響で感度が低く、PCR 法が推奨される。
FilmArray®などの遺伝子検査機器により、RSV を含む複数の病原体の同時検出が可能となったが、使用
には一定の条件がある。ウイルス分離法は HEp-2 細胞などを用いて行うが、手間と時間がかかり現在は
主に研究用途に限定される。血清学的検査には中和抗体反応や補体結合反応があるが、乳児の抗体価上昇
が不十分であること、診断に時間を要することから、臨床での有用性は低い。現場では迅速性と感度を兼
ね備えた抗原検査、遺伝子検査が用いられている。
疫学状況
国内の RSV 感染症は感染症発生動向調査において 5 類感染症定点把握疾患に分類され、医師が症状や
所見から RSV 感染症を疑い、かつ検査によって診断された症例数が報告の対象となる。新型コロナウイ
ルス感染症パンデミック後、RSV 感染症の流行動態は大きく変化した。2020 年の報告数は大きく減少、
2021 年以降のピークの時期や報告数は変動を認めた。2024 年は明確なピークが認められず、一定の流行
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