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05資料2-1森野委員提出資料(RSウイルス母子免疫ワクチンと抗体製剤ファクトシート) (10 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64997.html
出典情報 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第32回 10/22)《厚生労働省》
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た、新生児では鼻水や咳嗽といった典型的な症状を呈さず、無呼吸発作やチアノーゼのみで発症すること
もあるため、遅発型敗血症との鑑別が必要になることもある 23。
また、急性細気管支炎では、喘鳴を来す非感染性疾患との鑑別も必要になる。特に、喘息発作でも細気
管支炎と同様の呼気性喘鳴を呈するため、両者の鑑別が必要となる 24。一般的に、喘息発作ではβ2 刺激
薬吸入への反応性を示すことが多く、鑑別の参考になる。その他、先天性心疾患、血管輪、気道異物、胃
食道逆流といった疾患も鑑別対象になる 24。
⑤ ウイルスの特徴
RSV は、Pneumoviridae 科 Orthopneumovirus 属に属する非分節型、一本鎖、マイナス鎖 RNA ウイル
スである。そのゲノムは約 15.2 kb の長さを持ち、11 種類のタンパク質がコードされている。これらの
タンパク質の中でも、G タンパク質および F タンパク質は感染初期に重要な働きを担う。G タンパク質
は宿主細胞の表面に存在する CX3CR1 やヘパラン硫酸といった受容体に結合し、ウイルスが細胞に付着
するために必要となる。一方、F タンパク質は融合タンパク質とも呼ばれ、ウイルス膜と宿主細胞の膜を
融合させ、ウイルスが細胞内に侵入するのを助ける役割を担う 25。
この F タンパク質は 3 つのサブユニットから成る三量体を形成し、膜融合の前後で構造が異なる(膜融
合前型と膜融合後型)
。ウイルスが宿主細胞表面の受容体に結合すると、F タンパク質は大きく構造を変
化させ、膜融合後型へと移行する。この構造変化により、ウイルス膜と宿主細胞膜が近接・融合し、ウイ
ルスゲノムが細胞内に放出される。膜融合前型の F タンパク質は、三量体立体構造の上部に露出した site
Ø や site V などの中和抗体の標的となる抗原部位を有しており、これら抗原部位に結合する中和抗体は
強力なウイルス中和活性を示す。しかし、膜融合が起こると F タンパク質は安定した棒状の融合後構造
に移行し、この過程で抗体の標的となる主要な中和抗原部位は F の分子内部に埋没し、中和抗体が認識
できない状態となる。一方、site II、III、IV といった他の抗原部位は、膜融合前後の両方の構造に存在し、
これらも中和抗体の標的となるが、中和には膜融合前型に結合することが重要である 26。
RSV は、G タンパク質の遺伝子配列の違いにより、A と B の 2 つのサブグループに分類される 25。G
タンパク質のドメイン構造は大きく 3 つの領域に分かれ、特に中央保存領域は A・B 両サブグループ間
で共通して保存されており、ワクチン設計や抗体ターゲットとしての注目度が高い。加えて、G タンパク
質は膜結合型だけでなく、分泌型としても産生され、これが免疫系からの回避や炎症反応の調節に寄与す
ると考えられている。さらに、G タンパク質には複数の N 型糖鎖付加部位が存在し、これらの糖鎖修飾
は抗原性や免疫認識に影響を及ぼす重要な要素である 26。
このようなウイルスの構造的特徴と感染機構の解明は、RSV ワクチン開発の基盤となる。歴史的に RSV
ワクチン開発は長い取り組みであったが、近年の大きな進展は、特に F タンパク質の膜融合前型構造の
解明とその安定化技術の確立にある。実際、膜融合前型 F タンパク質は膜融合後型に比べ、遥かに強力
な中和抗体を誘導することが実証されており、これを抗原とするワクチンおよび抗体製剤の開発が加速
している。F タンパク質には複数の中和エピトープが存在し、特に site Ø や site V は膜融合前型に特異
的であるため、これらを標的とする抗体はサブグループ A およびサブグループ B 両方に対して広範な中
和活性を示す。したがって、ワクチン設計においては、膜融合前型 F タンパク質の安定化が不可欠であ
る 27,28。
一方で、近年の研究では G タンパク質もまた中和抗体の標的として注目されている。G タンパク質の
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