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05資料2-1森野委員提出資料(RSウイルス母子免疫ワクチンと抗体製剤ファクトシート) (11 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64997.html
出典情報 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第32回 10/22)《厚生労働省》
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中央保存領域がサブグループを超えて保存されているため、ここを認識する中和抗体は広範囲のウイル
ス株に有効であることが示されている。さらに、G タンパク質に対する中和抗体の評価には、従来の Vero
細胞ではなく、CX3CR1 を高発現する気液界面(Air Liquid Interface; ALI)培養や気道オルガノイドを用
いたハイスループットな中和アッセイが有用であることが明らかとなった。これにより、G タンパク質
依存的な中和活性の正確な評価が可能となり、今後の G タンパク質標的療法の開発に大きく貢献するこ
とが期待される 29,30。
また、従来では RSV の分子疫学的分類は主に G 遺伝子に基づいて行われていたが、ワクチンや抗体製
剤の導入により、抗原性に影響を与える F 遺伝子の変異も重要視されるようになった。これは、G タン
パク質が変異頻度の高い構造可変性の大きい分子であるのに対し、F タンパク質は比較的構造が安定し
ており、
中和抗体の主要な標的として注目されるためである。2024 年には、
HRSV Genotyping Consensus
Consortium(RGCC)により、G 遺伝子と F 遺伝子の両方を用いた標準化系統分類法が提案され、これに
より、従来の遺伝距離に依存した手法の限界が克服され、部分的なゲノムデータにも対応可能な柔軟性が
得られた。現在では、Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data(GISAID)などのデータベースに
おいても、F および G 遺伝子型両方の登録が行われており、これら遺伝子変異の変遷を追跡することで
ワクチンや抗体製剤の効果のモニタリング、さらには耐性株の早期検出に不可欠な情報源となっている


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以上のように、RSV に対するワクチンおよび抗体製剤の開発は、F タンパク質の膜融合前型の構造生
物学的知見、ならびに G タンパク質の新たな中和エピトープの発見と分子疫学的サーベイランスの高度
化によって大きく進展している。今後は、F および G タンパク質の両方を標的とした多面的なアプロー
チと、強固なゲノム監視体制の確立が、RSV 感染症の制圧に向けた鍵となる 31。


検査法

1)抗原検査
日本国内の臨床診断では、主に鼻咽頭ぬぐい液や鼻腔吸引検体を用いた迅速抗原検出キットによる検
査が一般的である。抗原検査の保険適用は、
「入院中の患者」、
「1 歳未満の乳児」、
「パリビズマブ製剤の
適応となる患者」となっている。国内で市販されている抗原検出キット製品は、イムノクロマト法の原理
に基づくものであり、公表されている一次抗体としては全製品でウイルス粒子表面に存在しかつ変異の
頻度の少ない F タンパク質に対するものである。抗原検査ではサブグループ(A 型、B 型)の型別ができ
ないことから、型別を行う際には PCR 法を用いる必要がある 32。迅速抗原検出キットには、ヒトメタニ
ューモウイルスやアデノウイルスとの同時検出、さらには、インフルエンザ AB・SARS-CoV-2 と同時検
出できるキットも承認されている。また、抗原検出キット検出感度は、小児で 78%~85%であるのに対
して成人では 11%~48%と低い 33。過去の感染による免疫のためウイルス量が低い、ウイルス排泄期間
が短いことが、成人で感度が低くなる理由として考えられており、成人では PCR 法が RSV の検出法と
して推奨されている 33,34。
2)遺伝子検査
日本では呼吸器感染症診断用の遺伝子検査法として、2019 年に FilmArray®呼吸器パネルが保険適用に
なった。これは Multiplex-Nested PCR 法により、鼻咽頭拭い液中の RSV を含む複数のウイルス・細菌
の遺伝子を同時に検出するものである 35。2020 年には、FilmArray®呼吸器パネル 2.1 が保険適用になり、
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