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【参考資料2-2】抗微生物薬適正使用の手引き 第四版(案)医科・入院編 (9 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64503.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会(第99回 10/21)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

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1. はじめに

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(1) 策定の経緯

第四版

医科・入院編

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抗微生物薬注 1は現代の医療において重要な役割を果たしており、感染症の治癒、

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患者の予後の改善に大きく寄与してきた 1。その一方で、抗微生物薬には、その使用

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に伴う有害事象や副作用が存在することから、抗微生物薬を適切な場面で適切に使

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用することが求められている 1。近年、そのような不適正な抗微生物薬使用に伴う有

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害事象として、薬剤耐性菌とそれに伴う感染症の増加が国際社会でも大きな課題の

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一つに挙げられるようになってきている 1。不適正な抗微生物薬使用に対してこのま

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ま何も対策が講じられなければ、2050 年には全世界で年間 1,000 万人が薬剤耐性菌

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により直接原因、もしくは関連要因として死亡することが推定されており、2019 年

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時点で既に薬剤耐性菌が関連した死亡者が年間約 490 万人、薬剤耐性菌が原因によ

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る死亡者数が約 120 万人と推計されている 2-4。最近のデータでは、毎年、推定 770

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万人の死亡が細菌感染に関連しており、そのうち 127 万人は、利用可能な抗生物質

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に対して耐性を持つ細菌病原体によって引き起こされていると推定されている。過

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去 20 年間にわたり、抗菌薬耐性の増加が記録されており、薬剤耐性菌に関連した若

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年者の死亡は減少傾向であるものの、高齢者、特に 70 歳以上での死亡率の増加は顕

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著である 5。OECD の高所得国に関する予測では、最後の手段となる第三選択の抗微

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生物薬に対する耐性が、2005 年と比較して 2035 年には 2.1 倍に達する可能性がある

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とされている 6。

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また、1980 年代以降、新たな抗微生物薬の開発は減少する一方で、病院内を中心

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に新たな薬剤耐性菌の脅威が増加していること 1 から、抗微生物薬を適正に使用しな

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ければ、将来的に感染症を治療する際に有効な抗菌薬が存在しないという事態にな

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ることが憂慮されている 7。今の段階で限りある資源である抗菌薬を適正に使用する

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こ と で 上 記 の 事 態 を 回 避 す る こ と が 重 要 で あ り 、 薬 剤 耐 性 (Antimicrobial

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Resistance:AMR)対策として抗微生物薬の適正使用が必要である。

注1

抗微生物薬等については、以下の様な詳細な定義があるものの、実際の医療では、抗菌薬、抗生物質、抗生
剤の三つの用語は細菌に対して作用する薬剤の総称として互換性をもって使用されている。
(以下、日本化学
療法学会抗菌化学療法用語集、薬剤耐性[AMR]対策アクションプラン等を参照した。

抗微生物薬(antimicrobial agents, antimicrobials)
:微生物(一般に細菌、真菌、ウイルス、寄生虫に大別
される)に対する抗微生物活性を持ち、感染症の治療、予防に使用されている薬剤の総称。ヒトで用い
られる抗微生物薬は抗菌薬(細菌に対する抗微生物活性を持つもの)
、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗寄
生虫薬を含む。
抗菌薬(antibacterial agents)
:抗微生物薬の中で細菌に対して作用する薬剤の総称として用いられる。
抗生物質(antibiotics)
:微生物、その他の生活細胞の機能阻止又は抑制する作用(抗菌作用と言われる)を
持つ物質であり、厳密には微生物が産出する化学物質を指す。
抗生剤:抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤を指す通称。

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