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井口委員提出資料 (20 ページ)
出典
| 公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64916.html |
| 出典情報 | 社会保障審議会 福祉部会(第30回 10/21)《厚生労働省》 |
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第2章
介護福祉士のコンピテンシー
災害が起こっても暮らしは続いている
暮らしに伴走できる介護福祉チームは最強だ
紅谷浩之(医療法人オレンジグループ 代表)
2024年1月3 日、前日に引き返し、発災から48 時
それを考えていたとき、福祉楽団の飯田大輔さんか
間後の夕刻、輪島市に私たちはたどり着きました。
ら連絡が入り、たちまちFamSKO が結成され組織
最初の避難所を訪れたとき、そこで見たのはフレイ
だった介護福祉士チームの現地入りが始まりました。
ルが進行した高齢者でした。発災直後の大津波警報
次々とやってくるサポートの必要な避難者たちを受
を受けて、頑丈な建物の3,4 階に設置された避難所。
け入れ続け、避難所で感染症が流行することもあり
当然、階段を登って避難してきたはずの高齢者たち
ました。避難所の中で看取りを実践することも 2 回あ
が、2日間じっと狭いところに動かずにいた結果、壁
りました。医療の見たてや整えも重要でした。医療
づたいによろよろとしか歩けない状態でした。発災
の重要度が高まると、医療者はそれを整理する。医
急性期は、レスキューと救急救命のフェーズ。と思っ
療者の整理や分類、優先順位決めは、人の暮らしを
ていましたが、超高齢社会の災害では、フレイルの
病院のように断片化しがちです。人の暮らしを病院の
進行や持病の悪化、生活環境の変化が負荷となって
ように分断してしまいがちです。福祉避難所で、私た
起こる体調変化が早期から同時進行で進んでいるこ
ち医療チームがつい医療に必死になってしまったとき
とを感じました。
も、ハッと気がつくと、換気がされた気持ちいい空
「避難所には病気のない人が避難していて、病気
気が寒くなりすぎないよう配慮されながら避難所に流
になったときは救護所で治してもらって避難所に戻る」
れ、温かさにこだわった食事が配膳され、“リハビリ”
という避難所運営にはこの前提があるように感じまし
のような押しつけではない気持ちよく身体を動かす機
た。「地域には病気のない人が暮らしていて、病気に
会があり、トイレや玄関もきれいに整頓された暮らし
なったときは病院に行って治ったらまた地域に帰って
の場が常にありました。
くる」という時代から「地域には病気を持つ人が暮
そこには、医療者だったら対面してしまいそうな場
らしていて、生活に医療サポートやケアが伴走するこ
面で、必ずその人の横に立ち同じ方向をみる介護の
とが求められる」という時代に地域社会が変化して
プロフェッショナルがいました。
いったの(地域包括ケアシステム)と同じような変化
人は本当に大変な状況でも、暮らしの営みをつづ
を、災害時の避難の考え方にも取り入れないといけ
けるなかで、ほっとしたり笑顔になったりする。そん
ないと直感しました。
な人の強さを感じさせてくれる連携でした。これから
その後、地元社会福祉法人から福祉避難所の運
日本各地で予想される超高齢社会の災害に、アドレ
営を引き継ぎました。普段、私たちが在宅ケアの現
ナリンを出して腕まくりをして飛んでいく医療チームだ
場で関わる高齢者や障害者の皆さんを支える避難所
けでなく、いつもの暮らしの営みをいつものように支
です。病気や障害と伴に生きる人たちの体調や人生
える介護福祉の専門家チームが、したたかに災害支
を支えるためには「暮らしの営み」を中心に据える
援の経験や知見を積み重ねることが期待されます。
ことの重要であることは在宅ケアの中でもいつも感じ
ています。そこに必要なのは、医療の見立てを中心
にしたチームではなく、暮らしを支える介護や福祉の
視点を根っこに持ち、医療は介護福祉の動きをサポー
トするようなチームづくりです。この福祉避難所の運
営には介護福祉の見たてと動きが必ず必要、まさに
べにや・ひろゆき 医療法人オレンジグループ 代表
医 師として 在 宅 医 療 や 地 域 医 療 に 従事。2011年
福井県内初の複数医師による在宅医療専門クリ
ニックを設立。20年に軽井沢市に『 ぼっちのロッ
ヂ 』を開設。
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介護福祉士のコンピテンシー
災害が起こっても暮らしは続いている
暮らしに伴走できる介護福祉チームは最強だ
紅谷浩之(医療法人オレンジグループ 代表)
2024年1月3 日、前日に引き返し、発災から48 時
それを考えていたとき、福祉楽団の飯田大輔さんか
間後の夕刻、輪島市に私たちはたどり着きました。
ら連絡が入り、たちまちFamSKO が結成され組織
最初の避難所を訪れたとき、そこで見たのはフレイ
だった介護福祉士チームの現地入りが始まりました。
ルが進行した高齢者でした。発災直後の大津波警報
次々とやってくるサポートの必要な避難者たちを受
を受けて、頑丈な建物の3,4 階に設置された避難所。
け入れ続け、避難所で感染症が流行することもあり
当然、階段を登って避難してきたはずの高齢者たち
ました。避難所の中で看取りを実践することも 2 回あ
が、2日間じっと狭いところに動かずにいた結果、壁
りました。医療の見たてや整えも重要でした。医療
づたいによろよろとしか歩けない状態でした。発災
の重要度が高まると、医療者はそれを整理する。医
急性期は、レスキューと救急救命のフェーズ。と思っ
療者の整理や分類、優先順位決めは、人の暮らしを
ていましたが、超高齢社会の災害では、フレイルの
病院のように断片化しがちです。人の暮らしを病院の
進行や持病の悪化、生活環境の変化が負荷となって
ように分断してしまいがちです。福祉避難所で、私た
起こる体調変化が早期から同時進行で進んでいるこ
ち医療チームがつい医療に必死になってしまったとき
とを感じました。
も、ハッと気がつくと、換気がされた気持ちいい空
「避難所には病気のない人が避難していて、病気
気が寒くなりすぎないよう配慮されながら避難所に流
になったときは救護所で治してもらって避難所に戻る」
れ、温かさにこだわった食事が配膳され、“リハビリ”
という避難所運営にはこの前提があるように感じまし
のような押しつけではない気持ちよく身体を動かす機
た。「地域には病気のない人が暮らしていて、病気に
会があり、トイレや玄関もきれいに整頓された暮らし
なったときは病院に行って治ったらまた地域に帰って
の場が常にありました。
くる」という時代から「地域には病気を持つ人が暮
そこには、医療者だったら対面してしまいそうな場
らしていて、生活に医療サポートやケアが伴走するこ
面で、必ずその人の横に立ち同じ方向をみる介護の
とが求められる」という時代に地域社会が変化して
プロフェッショナルがいました。
いったの(地域包括ケアシステム)と同じような変化
人は本当に大変な状況でも、暮らしの営みをつづ
を、災害時の避難の考え方にも取り入れないといけ
けるなかで、ほっとしたり笑顔になったりする。そん
ないと直感しました。
な人の強さを感じさせてくれる連携でした。これから
その後、地元社会福祉法人から福祉避難所の運
日本各地で予想される超高齢社会の災害に、アドレ
営を引き継ぎました。普段、私たちが在宅ケアの現
ナリンを出して腕まくりをして飛んでいく医療チームだ
場で関わる高齢者や障害者の皆さんを支える避難所
けでなく、いつもの暮らしの営みをいつものように支
です。病気や障害と伴に生きる人たちの体調や人生
える介護福祉の専門家チームが、したたかに災害支
を支えるためには「暮らしの営み」を中心に据える
援の経験や知見を積み重ねることが期待されます。
ことの重要であることは在宅ケアの中でもいつも感じ
ています。そこに必要なのは、医療の見立てを中心
にしたチームではなく、暮らしを支える介護や福祉の
視点を根っこに持ち、医療は介護福祉の動きをサポー
トするようなチームづくりです。この福祉避難所の運
営には介護福祉の見たてと動きが必ず必要、まさに
べにや・ひろゆき 医療法人オレンジグループ 代表
医 師として 在 宅 医 療 や 地 域 医 療 に 従事。2011年
福井県内初の複数医師による在宅医療専門クリ
ニックを設立。20年に軽井沢市に『 ぼっちのロッ
ヂ 』を開設。
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