よむ、つかう、まなぶ。
外見からの判別が困難な脳卒中後遺症の制圧に向けた提言 (7 ページ)
出典
公開元URL | https://www.ncvc.go.jp/hospital/wp-content/uploads/sites/2/20250707_neurology_seisakuteigen.pdf |
出典情報 | 「外見からの判別が困難な脳卒中後遺症の制圧に向けた提言」発表(7/7)《国立循環器病研究センター》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
2.脳卒中後失語の現状、課題、政策提言
1)現状
脳卒中後失語症(Post-stroke aphasia:PSA)
ては皆無である。その理由としては、PSA は優位半
は、運動障害や嚥下障害と並んで、脳卒中後の重大な
球の皮質を巻き込んだ広範な脳卒中で起こることが多
後遺症のひとつである。一般に、失語症は会話、読み、
く、高齢、心房細動に伴う心原性脳塞栓症や他の心疾
書きなど 1 つ以上の言語モダリティの障害を特徴と
患、腎機能障害などを合併しており 15,16、多くの交
し、コミュニケーションに悪影響を及ぼすことが示さ
絡因子を用いた多変量解析を可能とする大規模データ
れている。効果的なコミュニケーションは、日常生活
が存在しなかったためと考えられる。従って、我々
において社会的役割や人間関係を維持し、社会活動に
は 2011 年~ 2023 年に国立循環器病研究センター
参加するための最も重要な要素であり、最終的には生
に入院した大規模な脳梗塞データベース(5608 例)
活の質全体と長期的な予後に影響を与える 9-11。これ
を 用 い て 多 変 量 解 析(13 因 子 に て 調 整 ) を行 い、
まで、脳卒中後の失語自体の経過に関する研究は多く
PSA 自体が 3 カ月後、1 年後の機能予後不良、死亡
存在するが
に独立して強く寄与することを見出した(表)。
、PSA の長期的な機能予後や死亡へ
12-14
の影響についての研究は少なく、我が国のデータとし
表1
脳卒中後失語の有無による機能予後不良と死亡との関係
脳卒中3カ月後
機能予後不良
死
亡
脳卒中1年後
機能予後不良
死
亡
PSA群
非PSA群
調整オッズ比
(95%信頼区間)
271例 (27.5%)
866例(18.7%)
2.61倍 (2.15-3.17)
117例 (11.9%)
68例(1.5%)
3.40倍 (2.31-4.99)
250例 (34.1%)
734例(20.0%)
1.86倍 (1.51-2.30)
220例 (27.8%)
198例(5.4%)
2.45倍 (1.87-3.21)
オッズ比は、年齢、性別、高血圧、脂質異常症、透析、
機能予後不良は、退院時 mRS と比較し、3 カ月、1
認知症、脳梗塞既往、脳梗塞病型、退院時 modified
年時点での mRS が 1 点以上悪化した場合に不良と
Rankin Scale(mRS)
、抗凝固薬治療の有無、抗血
定義。
小板薬治療の有無、リハビリ病院への転院にて調整。
(PSA:脳卒中後失語症)
脳卒中後失語の現状、課題、政策提言.2
7
1)現状
脳卒中後失語症(Post-stroke aphasia:PSA)
ては皆無である。その理由としては、PSA は優位半
は、運動障害や嚥下障害と並んで、脳卒中後の重大な
球の皮質を巻き込んだ広範な脳卒中で起こることが多
後遺症のひとつである。一般に、失語症は会話、読み、
く、高齢、心房細動に伴う心原性脳塞栓症や他の心疾
書きなど 1 つ以上の言語モダリティの障害を特徴と
患、腎機能障害などを合併しており 15,16、多くの交
し、コミュニケーションに悪影響を及ぼすことが示さ
絡因子を用いた多変量解析を可能とする大規模データ
れている。効果的なコミュニケーションは、日常生活
が存在しなかったためと考えられる。従って、我々
において社会的役割や人間関係を維持し、社会活動に
は 2011 年~ 2023 年に国立循環器病研究センター
参加するための最も重要な要素であり、最終的には生
に入院した大規模な脳梗塞データベース(5608 例)
活の質全体と長期的な予後に影響を与える 9-11。これ
を 用 い て 多 変 量 解 析(13 因 子 に て 調 整 ) を行 い、
まで、脳卒中後の失語自体の経過に関する研究は多く
PSA 自体が 3 カ月後、1 年後の機能予後不良、死亡
存在するが
に独立して強く寄与することを見出した(表)。
、PSA の長期的な機能予後や死亡へ
12-14
の影響についての研究は少なく、我が国のデータとし
表1
脳卒中後失語の有無による機能予後不良と死亡との関係
脳卒中3カ月後
機能予後不良
死
亡
脳卒中1年後
機能予後不良
死
亡
PSA群
非PSA群
調整オッズ比
(95%信頼区間)
271例 (27.5%)
866例(18.7%)
2.61倍 (2.15-3.17)
117例 (11.9%)
68例(1.5%)
3.40倍 (2.31-4.99)
250例 (34.1%)
734例(20.0%)
1.86倍 (1.51-2.30)
220例 (27.8%)
198例(5.4%)
2.45倍 (1.87-3.21)
オッズ比は、年齢、性別、高血圧、脂質異常症、透析、
機能予後不良は、退院時 mRS と比較し、3 カ月、1
認知症、脳梗塞既往、脳梗塞病型、退院時 modified
年時点での mRS が 1 点以上悪化した場合に不良と
Rankin Scale(mRS)
、抗凝固薬治療の有無、抗血
定義。
小板薬治療の有無、リハビリ病院への転院にて調整。
(PSA:脳卒中後失語症)
脳卒中後失語の現状、課題、政策提言.2
7