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03資料1-1森野委員提出資料(高齢者に対するインフルエンザワクチンファクトシート) (17 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64997.html
出典情報 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第32回 10/22)《厚生労働省》
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リオキシエチレンオクチルフェニルエーテルにて分解及びホルマリンにより不活化した HA 画分に、リ
ン酸塩緩衝塩化ナトリウム液を用いて 1 株当たり 60μg に混合調製した液剤である 38。60 歳以上の者に
1 回、0.7mL を筋肉内接種する。Sanchez らによる日本での第 1/2 相臨床試験(2019 年)において、投与
経路の違いによる免疫原性と安全性が評価された 39。対象は 65 歳以上の健康な日本人で、HD-IIV4 の筋
肉内接種では、皮下接種よりも HI 抗体価 GMT と抗体陽転率が高い傾向を示した。筋肉内接種群の皮下
接種群に対する GMT 比は A 型 4 株、B 型 3 株に対して 1.03〜1.40 の範囲であった。皮下接種では局所
反応(疼痛・腫れなど)がより多く見られた一方で、有害事象全般の報告割合は同等であった。各群に組み
入れられた症例数が 55 例〜60 例と少なく、記述的研究であるものの、筋肉内接種は皮下接種に比べて免
疫原性が高く、副反応が少ないことが示唆された。
(3) 有効性の観点
インフルエンザワクチンの免疫原性の評価には、ワクチン接種者の血清中 HI 抗体価、およびそれを元
に定義された抗体保有率並びに抗体陽転率が指標となる。抗体保有率はワクチン接種後の血清中 HI 抗体
価が 1:40 以上となった被験者の割合を示す。また、抗体陽転率は、ワクチン接種前の抗体価が 1:10 未満
だった人が 1:40 以上に上昇した場合、または接種前が 1:10 以上であった場合に 4 倍以上の上昇が見ら
れた割合を示す。これらの指標は、1970 年代に成人ボランティアを対象に実施されたインフルエンザウ
イルスの曝露試験の結果を元に設定されている。その結果によると、ウイルス感染前の血清中 HI 抗体価
とウイルス感染の可能性との間には一貫して逆相関の定量的関係が認められ、HI 抗体価が 1:18〜1:36 の
場合は感染率が 50%、1:40〜1:60 の場合は感染率が 29%であった 40 41。現在でも季節性不活化インフル
エンザワクチンの有効性は、これらの指標を基づいて評価されている。
高齢者では、加齢に伴う免疫機能の低下により、標準用量(Standard Dose: SD)の不活化インフルエン
ザワクチン(Inactivated Influenza Vaccine: IIV)(SD-IIV)の接種では十分な抗体応答が得られにくいこと
が報告されている。例えば、Goodwin らによる、1986 年から 2002 年にかけて実施された 31 件のワクチ
ン抗体応答に関する研究を対象とした後ろ向き解析では、高齢者(58 歳〜104 歳)では若年成人と比較し
て、臨床的ワクチン有効性の推定値が有意に低く(17%〜53% vs 70〜90%)、抗体保有率、抗体陽転率、
および GMT も同様に低いことが報告されている。さらに、75 歳を超える高齢者では、75 歳未満の高齢
者よりもワクチン接種後の血清学的応答がさらに低下することが明らかにとなった 42。この問題に対応
するために開発されたのが、高用量(High Dose: HD)の不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV)である。
HD-IIV は、ワクチンに含まれる抗原量を増やすことで、より強い免疫応答を誘導することを目的として
いる。以下に示すように、複数の文献において、高齢者において HD-IIV が SD-IIV と比較して免疫原性
および有効性の点で優れていることが示されている。


免疫原性

1)一般成人における免疫原性
アメリカ合衆国で 2010 年から 2011 年にかけて実施された多施設共同、観察者盲検、ランダム化、実
薬対照の第 2 相試験(NCT01258595)では、高用量 3 価不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV3)を接種
された 148 人と標準用量ワクチン(SD-IIV3)を接種された 152 人の 50 歳〜64 歳の成人を対象に、接種前
および接種 28 日後の HI 抗体価を測定した。ワクチンに含まれる3つすべてのウイルス株において、接
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