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身寄りのない患者を取り巻く社会的課題についての研究 報告書 (54 ページ)

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出典情報 身寄りのない患者を取り巻く社会的課題についての研究 報告書(9/24)《日本医療ソーシャルワーカー協会》
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⑶高齢者等終身サポート事業に対して、多くの病院が不安を感じながら利用を検討している。
本調査を通じて、身寄りのない患者を取り巻く社会的課題の大きさや複雑さを定量的に示すこ
とができた。課題は多岐にわたっており、いずれも一筋縄ではいかないものばかりであり、今回
明らかになったことを踏まえて、課題解決に向けてどのように動いていくのかが問われていると
いえる。
最後に、本調査の結果を踏まえて、医療ソーシャルワーカーとしてどのような取り組みをして
いくことが求められているのかを示していきたい。「ソーシャルワーカー責任者」が、本調査の回
答者の 53.7%を占めており、病院の代表者としてソーシャルワーカーが多く答えていたことを考え
ると、とりわけ医療ソーシャルワーカーが率先して取り組むべき課題だと思われるからである。
以下、「身寄りのない状態で意思決定が困難な人に生じる社会的課題に関する要望書」(日本医療
ソーシャルワーカー協会)が提起している内容に沿って示していくこととする。
①入院・入所時に身元保証人を書面で求めないための具体的な手続き形式の提示および通知
⇒病院が書面で保証人を求めないようにするためには、保証人を書面で求めないための具体的な
手続き形式の提示および通知が欠かせないことはいうまでもないが、同時に保証人がいないこ
とで困っていること(「入院費等の支払いが滞納になった時に備えて」、「患者が急変・死亡した
時に備えて」「医療同意が必要になった時に備えて」など)を解決できるような支援体制が欠か
せないと考える。そのため、保証人がいないことで困っていることについて、一病院内で抱え
込むことなく、地域全体で検討・対応できるような地域連携ネットワーク構築に向けて取り組
んでいくことが必要である。
②医療機関における臨床倫理委員会等の必置化
⇒多くの病院で設置されていないことから、臨床倫理委員会等の設置に向けて取り組んでいく。
一方、臨床倫理委員会等の活用度を向上させるために、院内マニュアル作成に向けて取り組ん
でいくことが必要である。
③金融機関との新たな連携システムの創設
⇒通帳・キャッシュカードを保管・管理することが、病院にとっては大きな負担になっているこ
とを踏まえて、まずは金融機関との話し合いの場を設けることができないか模索していく必要
がある。
④自治体の公的責任の明文化
⇒今回の調査で、自治体に求めることや期待する声が多く出ていたことから、国や自治体に対し
て、改めて「自治体の公的責任の明文化」を訴えていく必要がある。
⑤身元保証等高齢者サポート事業の監督機関の明確化
⇒今回の調査で、多くの病院が不安を抱えながら、身元保証等高齢者サポート事業を利用検討し
ていることが明らかになったことから、国や自治体に対して、改めて「監督機関の明確化」を
訴えていく必要がある。
とりわけ、上記の①~③についての取り組みを行った病院に対して、診療報酬で評価されるこ
とで、各病院での取り組みが促進され、身寄りのない患者に対する支援体制が整備されていくこ
とが期待されるため、一考の余地があると考える。

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