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【資料1】薬剤耐性ワンヘルス動向調査報告書年次報告書2021(たたき台) (70 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23261.html
出典情報 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第9回  1/17)《厚生労働省》
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(4)環境
一般的に、人的活動による汚物は下水処理場等の生活排水処理施設で排水基準まで処理されて環境
(河川・海洋)へと放流される。ワンヘルス・アプローチに基づく環境 AMR で注視すべき対象は、
人的活動による汚物が下水処理場等の生活排水処理施設で排水基準まで処理されて環境(河川・海
洋)へと放流される環境水の中にどのような薬剤耐性菌(遺伝子)が存在し、我々の日常生活へどの
ように循環しリスクへと発展しうるのかを評価することにある。
現状、どの程度の薬剤耐性菌(AMR bacteria: ARB)およびそれらに由来する薬剤耐性遺伝子(AMR
gene: ARG)が環境へと排泄され負荷を与え続けているのかについて、定量的な報告はわずかであり、
系統だった全国調査が必須であると考えられる。そこで、本邦行政として継続的な環境 AMR 調査のた
め、厚生労働省科学研究費課題「環境中における薬剤耐性菌及び抗微生物剤の調査法等の確立のため
の研究. 代表: 金森肇

H30-R02」の研究班が編成された。平成 30 年度~令和 2 年度において本研究

班で環境 AMR モニタリングに資する手順書を作成し、環境水の薬剤耐性菌及び残留抗菌薬の調査方
法の確立に向けた研究を実施した。放流処理水の環境 AMR モニタリング調査を全国展開するための
体制を構築し、地方自治体の環境負荷の実態が遺伝子レベルで解明した。また、国内外の文献レビュー
を行い、環境中の薬剤耐性に関する現状と課題を明らかにした。
3 年間(2018~2020 年度)の成果として、次世代シークエンサーによる環境水から ARG 等の網羅
的配列解読法(メタゲノム解析)を構築し(国立感染症研究所・病原体ゲノム解析研究センター)、39
自治体からご提供頂いた下水処理場・放流水サンプル(2018 夏・8月、2019 冬・2月、2019 夏・8
月、2020 冬・2 月、2020 夏・8 月、2021 冬・2月の計 332 サンプル)のメタゲノム解析を実施した。
臨床および家畜抗菌薬の ARG 配列データベースを元に、対象 ARG の解読リード数を検出した。さら
に、ARG 塩基長とメタゲノム総解読リード数で標準化する RPKM(Reads Per Kilobase of gene per
Million mapped reads)法を採用し、相対的な ARG 濃度を算出して検体間の比較解析を実施した。昨
年度報告では夏よりも冬期において ARG がやや多い傾向が見られたことを報告したが、3 年間(計 6
回)の継続調査により、ARG が継続的に増加傾向であるとともに、その主要因としてサルファ剤
(Sulphonamide)耐性遺伝子が有意に高く検出され(p <0.01)、腸内細菌科細菌で広範に伝播獲得
が知られている Class1 インテグロンの基本構成遺伝子(sul1, qacEdelta)が検出増の要因と考えられ
た。一方、下水処理場・放流水中のマクロライド耐性遺伝子は顕著な減少を示し、ヒトに対するマクロ
ライド系薬の使用が減少したことを反映する結果が得られたものと考えられた。また、キノロン耐性
遺伝子においても同様の減少傾向が見られ、ヒトに対するキノロン系薬の使用量が減少したこととの
関連が示唆されるが、キノロン耐性大腸菌の分離状況とは乖離が見られた。本研究班におけるメタゲ
ノム解析では外来性獲得である oqx および qnr 遺伝子を検出対象としているため、キノロン剤阻害
ターゲットである gyrA および parC 遺伝子上のキノロン耐性決定領域(quinolone resistance–
determining regions: QRDR)の変異は判定していない。少なくとも、外来性獲得の頻度が低下して好
ましい状況へ近づきつつあるのかもしれないが、更なる継続調査が必須である。本研究班のメタゲノ
ム解析法は世界的なメタゲノム解析法に準じたものであり、各国からの報告と比較する上においても
重要な情報提供ができたと考えている。引き続き、自治体のご協力を仰ぎながら年 2 回(夏および冬)
の全国調査を実施し、本邦の環境 AMR(Resistome)の基盤を整備していく予定である。

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