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【資料1】薬剤耐性ワンヘルス動向調査報告書年次報告書2021(たたき台) (107 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23261.html
出典情報 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第9回  1/17)《厚生労働省》
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今後の展望
本報告書は、昨年に引き続き、ワンヘルスの視点から、我が国におけるヒト、動物、農業、食品及び環境の
各分野の薬剤耐性菌の状況並びにヒト及び動物の抗菌薬の使用量(又は販売量)に関する情報を一つに集約し
て掲載した。本報告書を踏まえて、多分野間の連携・協力が進むことによって AMR 対策の更なる前進が期待
されるとともに、今後も先進的な調査への取組を続けることが、世界の AMR 対策をリードする上でも重要と
考えられる。本報告書の一部は「薬剤耐性(AMR 対策アクションプラン 2016–2020」発表後のデータを含ん
でおり、2017 年に引き続き、2018 年の全抗菌薬使用および、経口セファロスポリン薬、経口マクロライド薬、
経口フルオロキノロン薬を含む経口抗菌薬の使用においては、2013 年のデータと比較して減少傾向にあるが、
2020 年の目標値を達成するためには、さらなる AMR 対策の普及が必要である。具体的には、抗微生物薬の手
引き等を参考とし、急性気道感染症を中心に不必要な抗菌薬処方を減少させる必要がある。抗菌薬適正使用の
推進は、適切な抗菌薬を必要なときに使用できることが前提であり、基本的な抗菌薬の安定供給を確保するこ
とが重要である。また、J-SIPHE や薬剤耐性(AMR)ワンヘルスプラットフォームなどのシステムを用い、地
域毎の耐性菌情報や抗菌薬使用状況の情報を活用し、地域の状況に応じた抗菌薬の選択や適切な感染対策の推
進が望まれる。さらに、抗菌薬適正使用を進める上で、国民および医療従事者に対して様々な手法を用いた教
育啓発活動を継続していく必要がある。
動物分野において、2017 年から開始した疾病にり患した愛玩動物由来の大腸菌において、第3世代セファ
ロスポリン及びフルオロキノロン系に対する耐性率が畜産動物由来の大腸菌と比較して高いことが確認され
た。そのことから、これまで実施してきた畜産分野の薬剤耐性対策に加え、2020 年から開始された愛玩動物
における慎重使用の手引きの普及等により薬剤耐性対策を継続・強化していくことが必要である。また、アク
ションプランの成果指標である健康な畜産動物由来大腸菌の第3世代セファロスポリン及びフルオロキノロ
ン系の抗菌剤に対する耐性率は低い水準が保たれており、目標を達成する見込みである。一方、畜産動物にお
いてテトラサイクリン系の抗菌剤の販売量は 2018 年から 2019 年に減少しているものの、アクションプラン
の成果指標である健康な畜産動物由来大腸菌のテトラサイクリン耐性率は低下していない。そのため、引き続
き適正かつ慎重な使用の推進を図るとともに、その耐性率の動向を確認していく必要がある。
本報告書においては、2019 年度に引き続き、ヒト、動物、農業における抗菌薬の使用量(又は販売量)の比
較が可能となり、各分野で使用されている抗菌薬の系統毎の使用量の違いが示されたこと、疾病にり患した愛
玩動物に続き健康な愛玩動物の薬剤耐性率が報告されたこと、食品分野の薬剤耐性菌や環境における薬剤耐性
菌の動向データが充実したことなど大きな進展が見られ、来年以降も各分野の動向調査において進展が期待さ
れる。さらに、今後は、薬剤耐性対策アクションプランの取組に掲げられた、ヒト、動物、食品等における薬
剤耐性に関する動向調査・監視に関するデータ連携等の取組により、日本における薬剤耐性対策に貢献してい
くことが期待される。
現行のアクションプランは 2020 年までの 5 カ年計画で進められてきた。一部の指標は改善傾向にはあるが、
改善の乏しい指標や新たに生じた課題はまだ多くあり、国際的な動きと協調しつつ継続的に取り組んでいく必
要がある。産官学が連携し異なる分野の担当組織の協力体制を推進しつつ、ヒトと動物と環境のリスクを横断
的に評価できる研究の推進を検討する。

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