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資料1-2-5診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (26 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html
出典情報 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》
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62 発作性夜間ヘモグロビン尿症
○ 概要
1.概要
発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:paroxysmal nocturnal
hemoglobinuria, PNH)は、PIGA を含む GPI アンカー合成に関わる遺伝子に後天的変異を持った造血幹細
胞がクローン性クロ−ン性に拡大した結果、補体による介在性血管内溶血を主徴とする造血幹細胞疾患で
ある。再生不良性貧血を代表とする造血不全疾患としばしば合併・相互移行する。血栓症は本邦例ではま
れではあるが、PNH に特徴的な合併症である。PNH は、昭和 49(1974)年に溶血性貧血が特定疾患に指
定されたことに伴い、研究対象疾患として取り上げられ、「溶血性貧血調査研究班」(班長 三輪史朗)によ
って組織的な研究が開始された。それから今日に至る 40 年にわたって歴代班長により疫学、病因、病態、
診断、治療、予後など幅広い領域に関する調査研究が重ねられてきた。
診断時(初診時)年齢は、特発性造血障害に関する研究班の共同研究「PNH 患者における臨床病歴と
自然歴の日米比較調査」のデータによると、45.1 歳(range:10~86)であった。診断時年齢分布は、20~60
歳代に多くまんべんなく発症する。欧米例ではヘモグロビン尿、血栓症といった PNH の古典的症状が前面
に出やすいのに対し、アジア例ではむしろ造血不全症状が主体である。
2.原因
PNH 赤血球では、グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosyl phosphatidylinositol:GPI)を介して膜
上に結合する数種の蛋白が欠損している。補体制御蛋白もそのような蛋白の1つであり PNH 赤血球で欠
如しており、感染などにより補体が活性化されると、補体の攻撃を受けて溶血が起おきる起きる。この異常
は、GPI の生合成を支配する遺伝子である PIGA 遺伝子などの変異の結果もたらされることが明らかにさ
れた。すなわち、PNH は、造血幹細胞の遣伝子に後天性遺伝子に生じた変異に起因するクローン性疾患
である。
3.症状
補体介在性の血管内溶血とそれに伴うヘモグロビン尿、血栓症、骨髄不全を3大症状とし、その他にも、
腹痛、嚥下障害、男性機能不全などの多彩な症状を示す。診断には、フローサイトメトリーを用いた PNH
型タイプ血球の検出が必須である。年に1回程度のフォローアップ検査が推奨される。非常に稀な疾患で
あり、新規治療薬(エクリズマブ、ラブリズマブ)の適応、妊娠時の管理にあたっては、高度な専門性のもと
に医学管理を行う必要がある。
国際分類では、GPI アンカー型タンパク質の欠損赤血球が検出されれば PNH とされるが、溶血所見が
明らかでない微少 PNH タイプ血球陽性の骨髄不全症(subclinical PNH: PNHsc)は、臨床的 PNH とは区
別する。PNHsc は PNH ではないが、経過観察中に PNH に移行することがある。このため、骨髄不全患
者をみた場合には、高リスク MDS 例を除くすべての例に対して高感度フローサイトメトリーを行い、PNH
タイプ血球の有無を調べる必要がある。

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