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提案書01(0001頁~0202頁)医療技術評価・再評価提案書 (87 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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医療技術評価提案書(保険既収載技術用)
整理番号

206201

※事務処理用

提案される医療技術名
申請団体名

臓器移植待機中の抗HLA抗体検査(スクリーニング・同定)
日本移植学会
13外科

主たる診療科(1つ)
提案される医療
技術が関係する
診療科

24泌尿器科
関連する診療科(2つまで)
15心臓血管外科

提案される医療技術又は提案される医療技術に類似した
医療技術の提案実績の有無



過去に提案した年度
(複数回提案した場合は、直近の年
度)
「実績あり」の
場合、右欄も記
載する

提案当時の医療技術名

令和4年度

抗HLA抗体検査(スクリーニング・同定)



追加のエビデンスの有無



診療報酬区分
診療報酬番号

再評価区分(複数選択可)

014-46, 47
1-A

算定要件の見直し(適応)

1-B

算定要件の見直し(施設基準)

該当する場合、リストから○を選択

1-C

算定要件の見直し(回数制限)

該当する場合、リストから○を選択

2-A

点数の見直し(増点)

該当する場合、リストから○を選択

2-B

点数の見直し(減点)

該当する場合、リストから○を選択



項目設定の見直し

該当する場合、リストから○を選択



保険収載の廃止

該当する場合、リストから○を選択



新規特定保険医療材料等に係る点数

該当する場合、リストから○を選択



その他(1~5のいずれも該当しない)

該当する場合、リストから○を選択

「6

提案される医療技術の概要(200字以内)



その他」を選んだ場合、右欄に記載

臓器移植を控えている臓器不全患者は待機期間が長くなると輸血・感染などで感作され抗HLA抗体を獲得するリスクが上がっていく。現在は本検
査は臓器移植が成立した場合のみ算定可能となっているため臓器移植待機期間中の検査が実施できないのが問題となっている。臓器移植待機患者
の適切なリスク分類と脱感作療法を要するハイリスク患者の選定のために移植前抗HLA抗体検査が必要である。

文字数: 182

再評価が必要な理由

臓器移植待機患者は臓器不全のために輸血療法を受ける機会が多い。輸血製剤は供血者からのHLA抗原を含むため抗HLA抗体獲得のリスクとなりう
るが、臓器移植の待機期間が長くなると感作の機会が増え移植前に抗HLA抗体を獲得するリスクが高くなる。その他に全身性の重篤な感染症や先
行移植臓器廃絶後の免疫抑制減量・中止なども抗HLA抗体獲得のリスクとされている。特に献腎移植の平均待機年数は約16年と長期になってお
り、その期間にHLA抗原に感作される機会が多くなっていることも問題である。抗HLA抗体検査(スクリーニング)は、PRA(Panel reactive
antigen)検査とも言われ、HLA抗原を網羅的に発現させたビーズと患者血清を反応させることで、患者がHLA抗原に対して抗体を獲得しているか
を評価できるだけでなく網羅的HLA抗原に対して何%の反応があるかを把握することが可能である。一般的に25%を超えると臓器移植ドナーが出現
した際にドナー特異的HLA抗体を保有しているリスクが高くなるとされている。抗HLA抗体検査(スクリーニング・抗体特異性同定検査)は、2020
年診療報酬改定において臓器移植が成立すればという条件付きで移植前にも算定可能となったが、抗HLA抗体陽性が判明した場合、十分に時間を
かけて脱感作療法ができる生体臓器移植においてしか臓器移植が実現できないという大きな問題がある。つまり、死体臓器移植の待機患者におい
ては、臓器が斡旋される候補になった場合にのみはじめて抗HLA抗体検査が実施され、そこで陽性となると、十分な脱感作を行う時間がないた
め、臓器移植を受ける機会が失われてしまう。それ故に、そのような患者は、生命の危機に陥る可能性が高くなる。臓器移植待機期間中に本検査
を定期的に行う(年一度程度)ことで、臓器移植ドナー出現時にドナー特異的HLA抗体を有している可能性の高いハイリスク患者をあらかじめ待
機期間中に選定することができれば、実際にそのような患者に対して脱感作療法(大量ガンマグロブリン療法、リツキシマブ、血漿交換など)を
実施することで%PRAの数値を下げることが可能で、より多くの臓器移植待機患者のリスクを下げることが可能となる。臓器移植前の抗ドナーHLA
抗体の獲得は移植後の成績を下げる大きな要因であり(参考文献1p20)、待機期間中の抗HLA抗体スクリーニング検査および陽性者に対する同定
検査を実施してハイリスク患者を選定し脱感作療法を行いリスクを下げることができれば、臓器移植後の臓器移植生着率の向上、臓器移植患者生
命予後の改善につなげることが可能となり、その波及効果は計り知れないものがある。

【評価項目】

①再評価すべき具体的な内容
(根拠や有効性等について記載)

抗HLA抗体検査を臓器移植待機中に年一度程度定期的に算定できるように検査適応の拡大をする。臓器移植患者は待機期間中に輸血療法を受ける
機会が多く、そこに含まれる供血者のHLA抗原に感作されHLA抗体を獲得する機会が高くなる。その他に全身性の感染症や先行移植臓器廃絶による
免疫抑制の減量・中止も抗HLA抗体獲得のリスクとされ、それ故に臓器移植待機期間が長くなるとHLA抗体スクリーニング検査値(%PRA)が高くな
るリスクがある。%PRAが高くなると臓器移植ドナー出現の際にドナー特異的HLAを保有している確率が高くなり、陽性の場合は臓器移植を受ける
機会を逸することになる。心臓、肺、肝臓などの臓器移植待機患者にとっては、移植の機会が失われると生命の危機に直結するリスクが高くな
る。ドナー特異的HLA抗体は臓器移植直後の抗体関連拒絶反応発症の大きな原因となり移植の成績を下げることにつながることは、ガイドライン
においても明記されている(参考文献1p20)。肝移植においても術前ドナー特異的HLA抗体が患者予後のリスクとなる根拠が最近報告された(参
考文献2)。移植直後の抗体関連拒絶反応発症は、移植臓器機能不全へと繋がる可能性が高く、直ちに次の臓器移植の機会がなければ腎臓以外の
臓器移植患者では生命の危機に直結する大きな問題となる。腎臓移植においても患者は透析療法を受けなければならず、移植に比べて医療経済的
な損失も大きい。待機期間中に抗HLA抗体スクリーニング検査を定期的に(年一度程度)実施することにより、患者のHLA抗体獲得状況によりリス
ク分類を行うことが可能となる。スクリーニングで陽性となった患者に対しては同定検査を実施し、抗HLA抗体獲得が確定したハイリスク症例に
脱感作療法を実施し、リスクを下げて移植の機会を増やすことが可能である(参考文献3)。これにより多くの臓器移植待機患者の移植後拒絶反
応発症のリスクを下げることが可能となり、臓器移植生着率、患者生存率の向上につなげることが可能となる。

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