よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


【参考資料2】【日版R4.1.17一部改正】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2020 (66 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23261.html
出典情報 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第9回  1/17)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

放流水の ARG に加え、環境で生存し増殖する可能性を有す ARB の存在の特定は重要である。本厚
労研究班からの成果として、東京湾沿岸の水再生センターから、臨床分離すら希少な KPC-2 産生肺
炎桿菌 Klebsiella pneumoniae が分離されたこと 3、創傷感染症で稀に分離されるアエロモナス属が
KPC-2 を保有していたこと 4、NDM-1 よりも広域活性を獲得した NDM-5 カルバペネマーゼを保有す
る大腸菌が分離されたこと等を報告しており 5、国内事情が少しずつ明らかになりつつある。 また、
大阪・淀川流域における病院排水、下水処理場の流入・放流水、および河川水の包括的な AMR 調査
が実施され報告されている。オゾン処理しなければ下水処理・放流水から多様な ARB が分離されるこ
とや病院排水による環境 AMR 負荷が試算されている 6。海外の汚染実態と同様、本邦環境水において
も少なからず ARB が分離されている実状、より広範な実態調査が好ましく、ARB のみを集中的に滅
菌・減量させる手法開発も重要となってくるだろう。
このように、環境 AMR、さらには残留抗菌薬の調査法を確立し、実態調査を行っていくことが重
要であり、それらの知見と環境 AMR に関する文献レビューをもとにリスク評価を行っていく必要が
ある。海外の環境 AMR のエビデンスを整理するために、本研究班では環境中の薬剤耐性に対するイ
ニ シ ア チ ブ : 現 状 と 課 題 ( 原 文 : Initiatives for Addressing Antimicrobial Resistance in the
Environment: Current Situation and Challenges. 2018)を翻訳した 7。環境 AMR 対策の重要事項と
して、1) 廃棄物が適切に処理されていない場合、環境は抗菌薬および耐性菌で汚染されうる。2) 環
境中の廃棄物、抗菌薬、耐性菌との関係および人間の健康への影響はよく理解されていない。3) 科学
的根拠として抗菌薬や薬剤耐性因子は環境に拡散し、環境水中の耐性菌の曝露によって感染リスクが
高まる。4) 耐性菌の人の健康へのリスクを理解するため、環境水のどこに、どれだけの耐性菌が存在
しているか評価する。5) 環境水の耐性菌を測定するためにサンプリングと試験方法を評価し、プラク
ティスを標準化することが挙げられている。
これまで、院内感染事例では、実地疫学と分離菌の分子疫学解析の結果に基づいて、感染伝播や健
康影響のリスク評価を行う取組が行われてきているが、上述のとおり概して環境由来の薬剤耐性菌が
ヒト等の健康に影響を与えていることを示す研究結果は乏しい。海外では、河川灌漑水が原因と推定
される野菜への汚染 8 や水系レクリエーションにおける曝露リスク等への評価 9 も少しずつであるが報
告されつつあるため、ある一定のリスク循環が想定されている。現時点において環境リスクを論じる
ための確たる基準設定が難しい状況ではあるが、環境 AMR を定量的に調査・評価すること、そして
健康リスクを評価しうる研究の実施や国内外の主要文献のレビューとリスクアセスメントを通して、
環境 AMR 負荷の主要因を解明し、人および動物への健康リスクへと発展しているのかを探究してい
くことが急務である。

65