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【参考資料2-4】抗微生物薬適正使用の手引き 第四版(案)歯科編 (18 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64503.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会(第99回 10/21)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

第四版

歯科編

(iv) 感染性心内膜炎予防のための抗菌薬投与


感染性心内膜炎(IE)とは
ゆうしゅ

IE は、弁膜や心内膜、大血管膜に細菌集蔟を含む疣腫を形成し、菌血症、血管塞
栓、心障害等の多彩な臨床症状を呈する重篤な全身性敗血症性疾患である 58。何ら
かの基礎心疾患を有する例にみられることが多く、的確な診断のもと、適切な治療
が行われなければ心不全や塞栓症、腎障害等多くの合併症を引き起こし、死に至る
ことも少なくない。2019 年における IE の推定発症率は 13.8/10 万人で、世界中で
66,000 人が IE が原因で死亡している 59。
IE の発症には、弁膜疾患や先天性心疾患に伴う異常血流、人工弁置換術後等の異
物の影響で生じる非細菌性血栓性心内膜炎(nonbacterial thrombotic endocarditis:
NBTE)が重要とされている。
歯科処置の際に一過性に菌血症が生じる可能性は高く、基礎疾患の種類や程度に
よっては IE のリスクはさらに高まる。観血的な歯科処置等によって一過性に菌血症
が生じると、口腔レンサ球菌等が NBTE の部位に付着、増殖して疣腫が形成される
と考えられている。なお、IE の発症者の 12%が発症 3 か月以内に歯肉、根尖部ある
いは口腔粘膜の穿孔を伴う歯科的処置(非感染組織への麻酔注射を除く)を受けて
いたと報告されている 60。したがって、抗菌薬を予防的に投与することで抜歯時の
一過性の菌血症を抑制でき、抜歯 6~9 時間後の弁膜への細菌の付着・増殖を抑制す
る こ と が 期 待 で き る 60-64。 な お 、IE か ら 検 出 さ れ る 口 腔 内 細 菌 と し て は 、
Streptococcus sanguinis や Streptococcus mutans 等が多い 58,59。


抗菌薬の予防的投与が必要な病態
歯科処置において IE 予防のために抗菌薬の投与が必要な主な患者を表 6 に示す。

特に重篤な IE を引き起こす可能性が高い人工弁置換患者や IE の既往がある患者、複
雑性チアノーゼ性先天性心疾患がある患者、体循環系と肺循環系の短絡造設術を実
施した患者等に該当すれば、抜歯等の菌血症を誘発するような歯科処置前には抗菌
薬の予防的投与が強く推奨されている 58,59。また、心房中隔欠損、心室中隔欠損症、
後天性弁膜症、閉塞性肥大型心筋症、弁逆流を伴う僧帽弁逸脱等では、循環器主治
医に抗菌薬の予防的投与の必要性を確認する必要がある 58。

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