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【参考資料2-4】抗微生物薬適正使用の手引き 第四版(案)歯科編 (12 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_64503.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会(第99回 10/21)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

第四版

歯科編

(3) 歯科における抗菌薬の処方の現状
(i) 歯科全体の抗菌薬処方の現状
歯科における抗菌薬の処方は、経口抗菌薬が 99%を占める 14。歯科外来で用いら
れる経口抗菌薬は、①下顎埋伏智歯抜歯や歯科用インプラント埋入手術等での SSI
予防や、②根尖性歯周炎や智歯周囲炎等の歯性感染症治療を目的として使用される
ことがほとんどであるが、③手術・処置に伴う IE 予防等を目的としても使用されて
いる。本邦の 2015~2017 年のレセプト情報・特定健康調査データベース(National
Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan:NDB)
を検討した報告では、歯科で最も多く処方された経口抗菌薬はセファロスポリン系
抗菌薬で、すべての内服抗菌薬の 60%以上を占めていた 14。さらに、ドイツ等の他
国では、歯科においてペニシリン系抗菌薬のアモキシシリンが最も多く使用されて
いるのに対して 15-17、日本では 2015 年のアクションプランの策定当時、ほとんどの
歯科医師が第 3 世代セファロスポリン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬等の広域ス
ペクトル系抗菌薬を使用していることが問題となっていた 14,18。このため、「術後感
染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」19 等の抗菌薬適正使用に関する
ガイドラインが策定され、歯科においても薬剤耐性化の懸念が少ない Access 薬であ
るペニシリン系抗菌薬が推奨されている。
また、ガイドラインによる推奨等に加えて、学会や関係団体による教育講演や商
業誌等を通じた AMR 対策の普及啓発等によって、全国での抗菌薬使用割合はアクシ
ョンプラン策定以降から 2021 年までにペニシリン系抗菌薬の使用割合が徐々に増加
している(図 1)。一方、ペニシリン系抗菌薬以外の β-ラクタム系抗菌薬の使用割合
も少しずつ減少はしているが、医科と比較するとその使用率は未だに高く、その大
部分を第 3 世代セファロスポリン系抗菌薬が占めている(図 1)20。

(ii) 歯科診療所における抗菌薬処方の現状
日本では医療施設に従事する歯科医師のうち、約 9 割が歯科診療所に勤務してい
る 21。このため、歯科診療所における経口抗菌薬の処方が歯科で使用される抗菌薬
の種類や使用量に大きな影響を与えると考えられる。2015~2020 年度までの NDB
を用いた歯科医師による抗菌薬の処方動向を調べた横断研究によると、歯科診療所
での第 3 世代セファロスポリン系抗菌薬の処方割合は 60.5%から 53.1%へとわずか
な減少に留まり、依然として処方割合の半数以上が Watch 薬であることが示された
22。これらの報告から、日本の歯科診療所において、第 3 世代セファロスポリン系抗

菌薬等の Watch 薬が現在でも頻用されていることが示唆される。その一因として、
既に AMR 対策の重要性については認識しているものの、臨床実習・歯科医師臨床研

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