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独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド (9 ページ)

公開元URL https://www.tmghig.jp/research/publication/houmon-kango/
出典情報 独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド(4/8)《東京都健康長寿医療センター》
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STEP 1 ■ コミュニケーションと関係づくり

3

相互の信頼関係

実践のためのヒント

本人の思いの表出を受け止め、
互いを信頼して話し合うことのできる関係を築く

1 思いの表出にアンテナを張る
利用者の思いの表出は、例えば、明るい表情で

孫の話をしたり、好きな食べ物の話をしたり、
日常

の会話の中にあります。また、思いは言葉だけで

Scene
真夏のある日、ひとり暮らしをするBさん
(84歳・男性・軽度認知症)
宅を訪れると、

Bさんがぐったりしていて救急搬送となりました。暑い日にクーラーをつけていな

かったため熱中症になったのです。普段から食事や水分の摂取量が少ないことも影

表現されるものではありません。表情や態度の変

84歳男性
(軽度認知症)

並んでいます。
「なぜ食べないのですか」
と聞くと、Bさんは
「こんなものはいらない」

と怒っています。

思いが理解できることがあります。

にして共有し、
前向きな関係を構築します。

5 利用者の期待に応える
利用者は孤独感を感じて、人との交流を待ち望

2 社会人としての基本姿勢
一貫性のある態度・行動や、約束を必ず守るこ

と、相手の求めに誠実に対応することで、社会人と

して信頼に足る人物であることを示します。

んでいることが少なくありません。ですが、その

ニーズはケア提供者本位のサービスでは満たさ
れません。思いの表出を受け止め、
じっくりとコ

ミュニケーションをとることによって満たされます。
利用者の期待に応えることで、信頼関係の構築を
進めます。

普段から食事や水分が
少なそうなので、宅配弁当が
届くようにしたのに・



3 敬意を示す
利用者との関係性や場面に合った適切な言葉

こんなもの

なぜ、
お弁当食べないの
ですか?

ケアの場面などでうまくできたこと、利用者の

協力が得られたことなど、小さな成功体験を言葉

化を察知して、その原因を考えることで、利用者の

響していると考えられました。遠方に住む家族と連絡を取って、宅配弁当を開始しま

した。その後、訪問すると、テーブルの上には手をつけていない宅配弁当がいくつも

4 言葉にして共有する

いらない!

遣いや、利用者の価値観と選択を尊重することで、
敬意を示します。

期待される効果
利用者にとって信頼できる訪問看護師がいることは、不安を軽減し、心理的安定につながります。
また、
孤独感を軽減して社会的つながりを実感できる効果もあります。

項目の説明

訪問看護師にとって、より正確なニーズアセスメントと個別化したケアのために、利用者との信頼関係
は必須です。ひいては、緊急時や困難な状況でも、信頼関係に基づいて円滑な対応が可能になります。

提供したケアが受け入れられないときこそ、認知症の有無に関わらず、一人の人間として対等な関係
を築くことが大切です。利用者の思いや言葉を受け止め、尊重することを心がけ、それを積み重ねること
で関係が深まります。すると、利用者はケア提供者を身近な相談者として認め、今のふとした気持ちを表

課題と注意事項

出したり、ちょっと聞いてもらいたいことを話してくれたりするものです。
認知機能低下による意思疎通の困難さは信頼関係の構築を難しいものにします。認
知症ケアやコミュニケーションについて継続的な学習の機会を持つことが大切です。

この項目がなぜ大切か
信頼関係は本人中心のケアの基礎です。信頼関係のもとで率直なコミュニケーションを取ることによって、ニーズの早
期発見と適切な対応を可能にします。独居認知症高齢者の場合、訪問看護師と一対一で接することが多いため、特に慎重
な対応が必要です。家族等の同居者が、利用者の状態やニーズを身近に把握して代弁したり、訪問看護師との関係構築を
仲介したりすることがないためです。また、社会で孤立しやすく、孤独感を感じやすい傾向のある独居認知症高齢者にとっ
て、訪問看護師は数少ない支援者の一人であり、要となる存在です。利用者が安心感を得ることができる信頼関係を訪問
看護師と持てることが大切です。

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短時間の忙しい訪問の中でもポイントを押さえて信頼関係を構築していくことが
大切です。例えば、サービスを開始して間もない時期には、訪問看護師の都合で無理
に業務を完遂させることよりも、関係構築を優先するなど、
メリハリをつけて対応し
ます。
利用者と一対一の関係性を築き、
維持することは、
感情労働の負担を伴うため、
燃え尽
き症候群のリスクになります。そのため、
専門職としての境界線を維持することが大切な
場合もあります。職場の内外で、
定期的なスーパービジョンやピアサポートなどの機会を
設けて対策します。

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