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独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド (11 ページ)

公開元URL https://www.tmghig.jp/research/publication/houmon-kango/
出典情報 独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド(4/8)《東京都健康長寿医療センター》
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STEP 2 ■ 本人理解と生活アセスメント

5

価値観・好み・考え方
「支援をする中で生活歴を聞き、
本人の価値観や好み、考え方を理解する」
Scene
ひとり暮らしをするCさん
(90歳・女性・中等度認知症)
は、いつも自宅の玄関のス

ペースに布団を敷いて寝ています。足腰が弱っているので、布団から起きて立ち上

実践のためのヒント

1 傾聴の姿勢

3 積極的な傾聴

支援を提供する時には、そのタスクに意識が集

て、詳しく知りたいことを質問しながら積極的に

関わる話題に及んだ際には、少し時間を取って利

支援に役立てるため、訪問看護師として知ってお

心がけることも大切です。生活歴や価値観などに
用者の話に耳を傾けます。

90歳女性
(中等度認知症)

きたいことを質問します。
「なぜそうしたのですか」

クエスチョンが効果的です。

に冷え込んだ玄関で就寝することの健康面の影響も気になります。そのため、散ら

2 生活歴シートの利用

電動ベッドを使うことなく、玄関スペースに敷いた布団で寝る生活を続けています。

生活歴の聴取項目を決めたシートを作成し、


階的に情報を集めることは、
利用者を理解すること

を助けます。
シートには、
事実関係の記載欄だけで

せっかく電動ベッドを
入れたのに…。
転倒も心配

聴き取ります。価値観や好み、考え方を理解して

「どうしてそう思ったのですか」
のようなオープン

がるのに苦労しています。夜中にトイレに立つときの転倒リスクも心配です。また、冬

かっていた寝室を片付けて、電動ベッドをレンタルして搬入しました。
しかし、Cさんは

利用者が話すままに受け身で聞くのではなく

中しがちですが、会話して心地よい雰囲気作りを

なく、価値観や好み、考え方について訪問看護師

が理解している範囲で記載する欄があるとよいで

4 他の支援者からの情報収集
利用者の家族や友人、他のケア提供者などから

話を聞いて情報を補完します。

しょう。

なにか理由があって、
ここにお布団
敷いているのですか?

期待される効果
項目の説明

生活歴、価値観、好み、考え方を理解することによって、ケアや意思決定支援などをより個別化・最適
化することができます。その結果、利用者の満足度や生活の質の向上、訪問看護師と利用者の間のコ
ミュニケーションの円滑化、不適切なケアや誤解によるトラブルの減少、利用者の自己決定の促進、など

不可解な行動には、必ず考えやわけがあります。利用者の価値観や好み、考え方を知ることで理解で

が期待できます。

きることがあります。支援する中で利用者とのたわいない会話から、生活の様子や人生観・価値観など
が見えてくることは少なくありません。話を聞く間、ケアの手を止めたり、注意が逸れたりすることもある
ので、本来の支援から外れていると感じるかもしれませんが、より深く利用者を知ることは、今後のより
よい支援につながります。

課題と注意事項
限られた時間での訪問看護では、確認すべき事項や提供すべきケアなどのタスクに

この項目がなぜ大切か
利用者の価値観や好み、考え方を理解することで、利用者が納得できる支援方法を選択し、ニーズに適切に対応するこ
とができます。Cさんの場合、玄関で寝る生活を続けるのは、何か考えや意味があるのでしょう。その人なりの行動の意味
は、生活歴や価値観、好み、考え方を知って、その人の視点に立つと腑に落ちることがあります。また、生活歴や価値観、好
み、考え方など利用者のことを深く理解することは信頼関係の構築になり、意思決定支援などケアのさまざまな場面で活
きてきます。

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追われがちです。
しかし、利用者が発する情報にはよりよい支援提供に通じるヒントが
あります。時間の使い方にメリハリをつけ、
ときにじっくり向き合って利用者の話をじっ
くりと聴きます。
プライバシーに関わる内容の場合、詳しく話すことを不安に感じたり、嫌がったりする
こともあります。情報収集の目的を説明し、反応を確認しつつ、慎重に聴き取ります。ま
た、情報を他の支援者と共有する場合には、本人に承諾を得ること、守秘義務を守るこ
とを約束します。

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