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独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド (15 ページ)
出典
公開元URL | https://www.tmghig.jp/research/publication/houmon-kango/ |
出典情報 | 独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド(4/8)《東京都健康長寿医療センター》 |
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STEP 2 ■ 本人理解と生活アセスメント
9
心身の機能
「認知機能やADL、IADLなど、本人が日常の活動を
ひとりで実行するための心身の機能を把握する」
Scene
Cさん
(75歳・女性・軽度認知症)
はひとり暮らしをしています。訪問看護が始まって
半年ほど経ち、お互いに慣れてきたこともあり、信頼関係を築くことができました。あ
る日、Cさんの普段の生活を聞いていたところ、趣味でパン作りを長年続けているこ
とが分かり、教えてもらう約束をしました。訪問時間を調整して、一緒にパン作りの作
業をする中で、Cさんの認知機能をアセスメントしようと思います。分量を量って材料
実践のためのヒント
1 認知機能の評価
基本的な認知機能
(時間・場所・人の見当識、近
4 観察による評価
会話の中で日付を確認したり、その日の行動を
時・遠隔記憶、注意と集中、実行機能)
や、行動・心
尋ねたりすることで、見当識や記憶の認知機能を
覚、不眠、昼夜逆転など)
を評価します。さらに、行
動を見守り・支援しながら観察します。訪問看護師
理症状
(不安・焦燥、興奮・不穏、徘徊傾向、幻想・幻
動・心理症状がある場合、なぜ起きているかを評
価し、対策を検討します。例えば、便秘や不眠、痛
み、精神的ストレスなどが、行動・心理症状を引き
起こすことは多く認めます。
評価します。基本的ADLやIADLの評価は、その行
のペースで介助するのではなく、利用者が自分の
ペースで行うことを観察します。その際、行動を細
分化して、
どの要素は自分でできるのか、
どの要素
はできないのか、
分析的に観察します。
を準備できるか
(計算)
、順序よく進められるか
(遂行機能)
、生地を作りながらオーブ
75歳女性
(軽度認知症)
ンを予熱するか
(注意の分散)
、焼いている間に焼いていることを忘れないか
(記憶)
2 基本的ADLの評価
があるかどうかも気になります。
食事、
排泄、
入浴、
整容、
移動、
歩行、
更衣、
移乗な
を観察します。また、作業の中で忘れたり、間違えたりしないように工夫していること
どの動作について、
安全に実施できるか、
確実に実
施できるか、所要時間や疲労度はどうかを評価し
認知機能やADL
(日常生活動作)
、
IADL
(手段的日常生活動作)
を
総合評価
ます。
5 アセスメントツールの利用
認知機能障害と生活障害を総合的に評価する
地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメン
トシート
(DASC-21)
が標準的かつ有用です。定
期的に評価することで変化を確認することもでき
ます。
3 IADLの評価
金銭管理や服薬管理、買い物、食事準備、掃除・
美味しそうな
パンが
でき上がりますね!
洗濯、交通機関の利用、通信機器の利用など、生
活管理能力を評価します。特に、安全に実施でき
るか、確実に実施できるかを評価します。
期待される効果
項目の説明
アセスメントの結果から、その利用者が自分ひとりでできることと支援が必要なことを明確にすること
ができます。また、支援が必要な場合でも、どこまでひとりでできて、何を補えばよいか、支援内容を具体
化することができます。これにより、利用者が主体的に生活することを支えることができます。
ただ観察するだけではなく、一緒に行動してみると多くのことがわかります。認知機能やADL
(日常生
活動作)
、IADL
(手段的日常生活動作)
を総合的に評価して、自立支援に活用します。利用者はひとり暮
らしのため、日常の活動をひとりでできるかどうか、どこまでならひとりでできるか、どのような見守りや
支援が必要か、という視点が大切です。
課題と注意事項
検査や治療を日常的に行う病院とは異なり、自宅では検査やテストに対する受け取
られ方が大きく違います。根掘り葉掘り質問したり、話題に関係のない質問を唐突にし
この項目がなぜ大切か
たり、利用者に
「試されている」
と感じさせてプライドを傷つけることがないように注意
します。
一般に独居認知症高齢者は、同居者がいる場合と比較して、ADLやIADLは同等またはやや高い傾向があります。ですが、
同居者による見守りや支援がない分、生活支援のニーズは多く、
かつ満たされにくく、
自分で実行しなければならないこと
が多くなります。そのため、
利用者が持つ心身機能や強みを把握して支援に生かすことや、
低下した心身機能や弱みを把握
して補うことが大切です。心身の機能を一つずつ丁寧にアセスメントします。
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心身の機能
「認知機能やADL、IADLなど、本人が日常の活動を
ひとりで実行するための心身の機能を把握する」
Scene
Cさん
(75歳・女性・軽度認知症)
はひとり暮らしをしています。訪問看護が始まって
半年ほど経ち、お互いに慣れてきたこともあり、信頼関係を築くことができました。あ
る日、Cさんの普段の生活を聞いていたところ、趣味でパン作りを長年続けているこ
とが分かり、教えてもらう約束をしました。訪問時間を調整して、一緒にパン作りの作
業をする中で、Cさんの認知機能をアセスメントしようと思います。分量を量って材料
実践のためのヒント
1 認知機能の評価
基本的な認知機能
(時間・場所・人の見当識、近
4 観察による評価
会話の中で日付を確認したり、その日の行動を
時・遠隔記憶、注意と集中、実行機能)
や、行動・心
尋ねたりすることで、見当識や記憶の認知機能を
覚、不眠、昼夜逆転など)
を評価します。さらに、行
動を見守り・支援しながら観察します。訪問看護師
理症状
(不安・焦燥、興奮・不穏、徘徊傾向、幻想・幻
動・心理症状がある場合、なぜ起きているかを評
価し、対策を検討します。例えば、便秘や不眠、痛
み、精神的ストレスなどが、行動・心理症状を引き
起こすことは多く認めます。
評価します。基本的ADLやIADLの評価は、その行
のペースで介助するのではなく、利用者が自分の
ペースで行うことを観察します。その際、行動を細
分化して、
どの要素は自分でできるのか、
どの要素
はできないのか、
分析的に観察します。
を準備できるか
(計算)
、順序よく進められるか
(遂行機能)
、生地を作りながらオーブ
75歳女性
(軽度認知症)
ンを予熱するか
(注意の分散)
、焼いている間に焼いていることを忘れないか
(記憶)
2 基本的ADLの評価
があるかどうかも気になります。
食事、
排泄、
入浴、
整容、
移動、
歩行、
更衣、
移乗な
を観察します。また、作業の中で忘れたり、間違えたりしないように工夫していること
どの動作について、
安全に実施できるか、
確実に実
施できるか、所要時間や疲労度はどうかを評価し
認知機能やADL
(日常生活動作)
、
IADL
(手段的日常生活動作)
を
総合評価
ます。
5 アセスメントツールの利用
認知機能障害と生活障害を総合的に評価する
地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメン
トシート
(DASC-21)
が標準的かつ有用です。定
期的に評価することで変化を確認することもでき
ます。
3 IADLの評価
金銭管理や服薬管理、買い物、食事準備、掃除・
美味しそうな
パンが
でき上がりますね!
洗濯、交通機関の利用、通信機器の利用など、生
活管理能力を評価します。特に、安全に実施でき
るか、確実に実施できるかを評価します。
期待される効果
項目の説明
アセスメントの結果から、その利用者が自分ひとりでできることと支援が必要なことを明確にすること
ができます。また、支援が必要な場合でも、どこまでひとりでできて、何を補えばよいか、支援内容を具体
化することができます。これにより、利用者が主体的に生活することを支えることができます。
ただ観察するだけではなく、一緒に行動してみると多くのことがわかります。認知機能やADL
(日常生
活動作)
、IADL
(手段的日常生活動作)
を総合的に評価して、自立支援に活用します。利用者はひとり暮
らしのため、日常の活動をひとりでできるかどうか、どこまでならひとりでできるか、どのような見守りや
支援が必要か、という視点が大切です。
課題と注意事項
検査や治療を日常的に行う病院とは異なり、自宅では検査やテストに対する受け取
られ方が大きく違います。根掘り葉掘り質問したり、話題に関係のない質問を唐突にし
この項目がなぜ大切か
たり、利用者に
「試されている」
と感じさせてプライドを傷つけることがないように注意
します。
一般に独居認知症高齢者は、同居者がいる場合と比較して、ADLやIADLは同等またはやや高い傾向があります。ですが、
同居者による見守りや支援がない分、生活支援のニーズは多く、
かつ満たされにくく、
自分で実行しなければならないこと
が多くなります。そのため、
利用者が持つ心身機能や強みを把握して支援に生かすことや、
低下した心身機能や弱みを把握
して補うことが大切です。心身の機能を一つずつ丁寧にアセスメントします。
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