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独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド (23 ページ)

公開元URL https://www.tmghig.jp/research/publication/houmon-kango/
出典情報 独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド(4/8)《東京都健康長寿医療センター》
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STEP 4 ■ 予測的判断と意思決定支援

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安全と健康維持の評価

実践のためのヒント

「本人の対応力や周囲の支援によって健康で安全な生活が
維持できるかどうか、多職種で協議する」

1 多職種で協議する仕組み作り
訪問看護師、ケアマネジャー、介護職、医師な

どが参加するケースカンファレンスやサービス担
当者会議を開催します
(項目12参照)


Scene
ひとり暮らしをするBさん
(85歳・男性・軽度認知症)
は、昼食に行きつけのラーメン

2 評価項目の明確化

した。どこまで安全な行動ができているのか、安全な行動が今後続けられるか、他の

利用者の健康や安全を維持するために鍵になっ

訪問看護師や介護職も交えて検討することにしました。

85歳男性
(軽度認知症)

る人で、利尿薬の調整などの医療介入が必要な基

準は何でしょうか。労作時呼吸困難、浮腫、酸素飽

まで変化したら介入が必要でしょうか。評価基準を
明確にすることが、
適切な判断につながります。

ていることが、重要な評価項目です。心不全の管

理のための水分摂取量と体重変化のチェックや、

4 予測的判断

類や携帯電話などを携帯すること、
などです。その

認知症は進行するため、予防的な視点からの評

道に迷いやすい人が外出時に住所氏名の確認書

項目に対して、利用者が自分で管理できているこ

安全と健康のリスクを把握して
多職種で協議

評価基準が曖昧だと、心配が先立ち、判断が場

当たり的になってしまいます。例えば心不全のあ

和度、体重などの指標が、その利用者の場合、
どこ

店に通います。そのことを担当のケアマネジャーと話したところ、行き帰りに信号のな

い交差点で周囲の確認をしないまま横断し、あわや交通事故、
という出来事がありま

3 評価基準の明確化

と・できていないこと、支援の手が届いているこ
と・届いていないことをアセスメントします。

価も大切です。今はギリギリのところで生活でき

ていても、今後は安全の確保が難しくなることを

専門職の知識や経験に基づいて予測、判断します。

期待される効果
利用者に対するアセスメントを多職種で共有し、協議することで、安全と健康の維持のために最適なケ
アを選ぶことが可能になります。また、医学介入や利用者の行動制限につながる判断を慎重に行うこと

項目の説明
利用者自身の対応力や周囲の支援により、健康で安全な生活を維持できるかを検討するため、多
職種で情報を持ち寄って協議します。訪問看護師は、医療、介護、福祉の多職種チームの一員として

によって、不必要な介入や行動制限を予防し、利用者の生活の質を維持します。

課題と注意事項

参加し、利用者の意思を擁護するとともに、利用者の能力や生活状況および、サービス等の支援を俯
瞰して、議論を促します。

専門職はそれぞれの専門の視点からアセスメントや判断をするため、多職種間で意
見の不一致が起きることがあります。利用者にとって何が最善か、慎重かつ根気強く
話し合います。利用者本人や家族の意向と、専門職の判断が一致しないこともありま

この項目がなぜ大切か

す。普段から利用者や家族と話し合いの時間を持つことで、情報共有と意思疎通を図
り、合意形成の基盤を作っていきます
(項目18参照)


ケア提供者は、安全と健康を重視するあまり、利用者の意向を十分に確認しないまま、介入を決めてしまうことがありま
す。一方、利用者の意向が絶対で現実を直視しないと、利用者を危険にさらすこともあります。多職種チームで利用者の対
応力や支援の状況を多角的に検討することで、利用者の意思を尊重しながら、
安全と健康を確保します。

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