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独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド (14 ページ)

公開元URL https://www.tmghig.jp/research/publication/houmon-kango/
出典情報 独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド(4/8)《東京都健康長寿医療センター》
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STEP 2 ■ 本人理解と生活アセスメント

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リスクアセスメント

実践のためのヒント

「生活の中に潜む安全・健康のリスク(交通事故や転倒、火災、服薬管理など)や
外的脅威(経済被害や虐待、差別など)を他の支援者からの情報と
重ね合わせて把握する」

1 室内環境のリスク評価
転倒する恐れがある危険箇所、火気使用、室温

管理、
衛生状態を確認します。

5 権利侵害のリスク評価
虐待
(身体的・心理的)
の兆候、近隣トラブル、プ

ライバシー侵害の可能性を確認します。

Scene
ひとり暮らしをするBさん
(82歳・男性・軽度認知症)
は、昼食によく近所の定食屋に

通います。お店までは徒歩5分ほどで、車通りを避けて安全な道を歩くそうです。ある

日、いつもより帰宅の遅いBさんをお店まで迎えに行って、店主と二人で立ち話をす

る機会がありました。店主は、いつも昼時の混雑が終わる頃に来るBさんをよいお客

2 生活行動に関するリスク評価

6 他の支援者との情報共有

調理の安全、入浴時の事故リスク、夜間の外出

安全・健康のリスクや外的脅威は多岐にわたるた

行動、
交通事故のリスクを確認します。

さんだと話しますが、汚れた服装で来ることがあるので、飲食店として困ることがあ

るそうです。食後にお金を払わないで帰りそうになり、慌てて引き留めたこともあっ
82歳男性
(軽度認知症)

たようです。事情を簡単に話し、注意して見ていただくようお願いしました。さらに、B

さんと一緒の帰り道では、信号のない交差点で周囲の確認をしないまま横断し始め
て驚かされました。

め、
ケアマネジャーや介護職、
主治医、
民生委員、


族などと情報共有して把握します。
また、
近所の住

民からの情報が得られると有用なこともあります。

3 健康管理に関するリスク評価
基礎疾患の管理、服薬管理、食事・水分摂取の

状況、通院の状況を確認します。

Bさんの生活の
中の安全・健康リスク
はどこに?

4 経済被害のリスク評価
金銭管理の状況、詐欺・悪質商法の被害歴、不

適切な契約のリスク、経済的虐待の可能性を確認

します。

危ない!

期待される効果
このアセスメントによって、重大な健康問題や事故の予防、被害の早期発見・早期対応につながります。
他の支援者と情報共有をすることで、支援者間の連携を強化し、協力して予防的対策を講じることがで
きます。

項目の説明
認知症高齢者の独居生活における安全・健康上のリスクおよび、外的脅威についてアセスメントして
みると、このようなことがわかります。同居者による情報がないため、利用者の生活状況を観察したり、
他の支援者からの情報を集めながら、予防的な対策や支援体制の構築に役立てます。

課題と注意事項
リスクアセスメントには訪問看護師の尺度が入りやすく、
「危険だから禁止」
という短絡的
な考えに陥りがちです。支援者中心のケア
(の押し付け)
になってしまい、利用者に拒絶され
たり、利用者との関係性の破綻につながりかねないばかりか、利用者が望む暮らしを続ける
という支援目標からも逸脱してしまいます。

この項目がなぜ大切か
同居者のいない認知症高齢者の生活は、
自己管理や安全・健康の支援が行き届きにくく、経済被害や虐待、差別などの
外的脅威に対しても弱い立場に置かれやすいです。日常生活の中に潜む安全・健康のリスクや外的脅威を早期に見つけて、
未然に対策することで、重大な事故や健康問題に直面することを予防します。利用者が望む暮らしを安全に続けるために
大切な支援です。

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アセスメントは、
チェックリストの項目5・6にある価値観・好み・考え方やニーズと合わせて、
そのリスクを本人がどう感じているのか、困っているのか、
という点でも検討する必要があり
ます。また、
できないことだけに注目するのではなく、
どうすればできるか、
という視点も大切
です。小さな手助けや環境を整えることによってうまくできることはたくさんあります。他の
支援者からの情報を合わせて多角的にアセスメントすることで、
よい解決策が見つかること
でしょう。

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